48
この部屋に入って二十分位経ってからずっと監視されている。隣の部屋との間に隠し通路が有って、壁に掛けられた絵画に開けられた小さな穴から覗いている人が居る。
領主様の指示とは思えない。では誰か?と言う事になるんだけど、領主様以外に知っている人なんていないし、何者だろうと不意打ちなんて通用しないので様子を見る事にした。
お茶を飲みながら窓から外の景色を眺めたり部屋の本棚に置いてあった本を読んで過ごしていると一時間程で監視者の気配が消え、それから二時間程して夕食に呼ばれた。
「マルス・ガーランドと申します。暫くの間ですが宜しくお願いします」
食事の席で紹介されたのは奥さんのマリエル様、長男のベルモント様、次男のデカルドさま、そして長女のマーガレット様の四人だった。この中の誰かが僕の監視に人を送ったと見ていいだろう。
僕が席に着くと料理が運ばれて来て、食事が始まる前にベルモント様が話しかけてきた。
「マルス君、この領地の為に魔物を寄付してくれると聞いたのだが、それは本当かい?」
「はい。保管出来る場所を用意して頂ければ直ぐにでもお渡ししたいと思っております」
「それはどれ位の量になるんだい?」
「トロール五匹とオーガ五匹を予定しています。あ、領主様、町長のデイビスさんからタイラントボアの肉を気に入って頂けたと聞きましたが、そちらもお付けしましょうか?」
「それは有り難い申し出だが、これ以上頂くのは流石に気が引ける」
「僕は食した事が無いのですが美味なのですよね?でしたら奥様方にも食べて頂きたいのです」
「う~む・・・では、そちらは買い取らせて貰うとしよう」
「いえいえ、暫くとは言えこちらに住まわせて頂くのですから滞在費と言う事でお納め頂けたらと」
「ハァ・・・其方は少し物の価値や周囲に与える影響を学んだ方が良い。あれが幾らになるのか知っておるのか?状態にもよるがタイラントボア一匹で三百万はするのだぞ」
「えっ?!あの蛇そんなにするんですか?!てっきり五十万位だと思ってました・・・・・」
「因みにオーガでも百万以上はする。タイラントボアは骨と牙に皮と毒腺と捨てる所は殆どない上に肉は旨いと来ている。オーガよりも遥かに価値が有るのだよ」
「ちょっ!ちょっと待って下さい父上!トロールやオーガだなんて聞いてませんよ!!私は精々ホワイトネックベア辺りだと・・・・・」
「ん?・・・ああ、皆を驚かせようと思って黙っておったのだ。収穫祭でお披露目すれば盛り上がるであろう?」
「そ、それは誰だって驚くでしょうし、収穫祭も盛り上がりますよ!ですがトロールとオーガ五体だなんて幾らになるのか見当もつきません!それを寄付だなんて・・・・・」
「マルス君、一体何が狙いだ?父上に取り行ってこの領地や国に対して何を要求するつもりだ!」
「え?あの、別に僕は・・・・・」
ベルモンド様だけでなく弟のデカルド様まで立ち上がって捲し立ててきたけど、本当に他意は無いんだよなぁ。
「クックックッ・・・ははははは!!解ったかね、マルス殿。これが普通の反応だ。君に他意が無い事は解っておる。だが、君の為人を知らぬ者からすれば疑って当然と言う物なのだよ」
「父上、笑い事では有りません!」
「そうです!使徒殿の弟子だとだからと言って彼が善人だと言う保証は何処にも無いでは有りませんか!」
「二人とも静かになさい!マルス様、愚息共が失礼致しました。貴方達座りなさい、食事にしますよ」
「しょ、食事?!母上、今はそれ所では・・・・・」
「そうです!それ所では・・・・・」
「プッ・・・・・クスクスクス・・・やだ、可笑しい・・・・・私にはお兄様達が何故慌てているのか理解出来ませんわ」
「マーガレット!お前まで何を言う!彼の企み如何では領地のみならずこの国に何が起こるのか解らんのだぞ!」
「あら、マルス様はあの『使徒』様のお弟子様なのでしょう?聞いた話では、たった一人でロードルデルフ王国軍を相手に勝利を収め、神に認められて領地を頂いたと言うでは有りませんか。そのような方の弟子が小賢しい策を弄する必要など何処に有ると言うのです?ねぇ、お父様」
「「あ・・・・・」」
「うむ。マーガレットの言う通りだ。其方達、良いからもう座れ。マルス殿、済まなかった。全ては国を思っての事故、如何か許して貰えぬだろうか」
僕にとっては戴して価値が無かったから気軽に寄付するなんて言っちゃったけど、トロールは支部長の査定で四千五百万だったし、それを五体も寄付するなんて言われたら疑うのも仕方のない事だった。
「いえ、お気になさらず。寧ろ僕の無知故の事からですので僕の方に非が有ります。皆様申し訳ありませんでした」
「あ・・・いや、こちらこそ済まなかった」
「疑って済まなかった」
ん~・・・この二人の内何方かが監視を送って来たのかと思ったけど違うかな?だとすると奥様かお嬢様のどちらかかな?
ここまで読んで頂き有難う御座います。




