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 領主様の元孤児院視察当日。町長と支部長に護衛の衛士達と一緒に三名の女性がやって来た。


「当面の間彼女達が交代で子供達の面倒を見る事に決まった。マルス君、君がここを買い取って商会を設立して養って行くと言う話だったが、やはりここは町が、我々施政者がやらなければいけない事だと思うのだ」


「それはそうですけど・・・成人した後の事を考えると・・・・・」


「それも昨夜に町長と話し合った。ここで世話役の彼女達と衛士達で子供達の教育を行う。勿論孤児だけではなく、町中の子供達の教育の場として開放し、成人後は本人の資質と意思を検討して職業の斡旋までを視野に入れている」


 領主様の言葉にとても驚いた。この世界には学校なんて無かった筈だ。領主様は未来を見据えて『公営の教育機関』と言う答えを導き出したんだ。


「・・・・・凄い・・・僕なんかがこんな事を言うのはおかしいと思いますけど・・・領主様は教皇聖下に匹敵する素晴らしき施政者だと断言します!」


「お?・・・ははははは!そうか!私をそこまで評価してくれるか!これ程までに良い気分になったのは何時以来か!ははははは!町長、ここは任せるが、私の評価が下がるような真似だけはしてくれるなよ?クックックックックッ・・・・・」


「は、はいっ!」


「困った事が有ればすぐに私の所に連絡を入れるのだぞ。この町で良い結果が出れば領都や他の町にも取り入れるつもりだ。当面は財政的に厳しくなるであろうが、この子達が一人前の大人になり、子を成す頃にはこの町が発展しておると信じて進もうではないか!」


 パチパチパチパチ!!


 気が付くと僕は拍手をしていた。後ろに居た子供達も僕の真似をして拍手をし、町長も、支部長も、衛士さん達も、その場に居た全ての人が領主様を拍手で称えた。


 凄い現場に立ち会った。この町の・・・いや、この世界の転換期に少しでも関われた事に誇らしい気持ちになった。


「本当に良いのか?」


「ええ、町長との約束でも有りますし、何よりこの町のために少しでも力になりたいんです」


 領主様の視察が終わった後、僕は商業組合に魔物を預けに来た。このオーガ十体で作られた防具を纏った衛士達がこの町を魔物や犯罪者の脅威から守ってくれるだろう。


「そうか・・・・・なぁ、本当に何も言わずに出て行く気なのか?」


「・・・ええ。引き止められたら決心が鈍りそうですし」


 明日領主様と共に領都へ向かう。皆には魔物を引き渡しに行くとだけ言った。ノルドの時は慌てていたから感傷に浸る暇も無かったけど、子供達に泣かれたら出て行く事なんて出来そうになかった。


「・・・そうか・・・俺も知らなかった事にしておく」


 組合で小麦粉や調味料を買い込み収納へ仕舞い、服屋に寄って着替えを数着買って孤児院へと帰り、皆との最後の一夜を過ごした。


「それじゃ、行ってくる」


「「「「「いってらっしゃ~い!!」」」」」


 翌日朝食後に皆に見送られて孤児院を後にした。寂しさと罪悪感で胸が痛い。僕が戻って来ないと知った時、彼等は僕をどう思うのだろうか。


「領主様、マルス様がいらっしゃいました」


「うむ、マルス殿は此方へ。では帰るとしようか」


「ハッ!出発だ!総員配置に付け!」


「「「「「ハッ!」」」」」


 五両の馬車と二十人の騎兵がモンタナの町を出て北へと向かう。僕は馬車の窓から顔を出し、離れて行く町の防壁を見てまた何時かこの町を訪れようと心に誓った。


「しかし良いのか?領兵の為にオーガやトロールを寄付すると言うのは少々気が引けるのだが」


「はい。領主様にはお世話になりましたし、何より僕もお力になりたいと思いまして。モンタナにもオーガを置いてきましたから、気にせずお受け取り下さい」


「そうか、それは助かる。戦の懸念が無くなったとはいえ備えだけは怠れんのだ。先日モンタナの西で新種の人型の魔物が出たとの話も聞いた。特に戦いもせずに逃げたらしいが・・・・・」


「・・・・・そ、それって青い髪に獣の耳をしたとか言う奴ですか?」


「おお、知っておったか」


「え、ええ・・・僕が思うに、多分見間違えなんじゃないかと・・・・・」


「だと良いがな・・・・・」


 額から汗が流れ落ちた。僕は話をそらそうと何か別の話題をと、平静を装いつつ考えを巡らせていた。


 もしばれたらどうなるんだろ・・・やっぱり化け物とか言われて追い掛けられるのかなぁ・・・・・

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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