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馬車に揺られ、さして時間も掛からない内に町の北側にあるお屋敷に着いた。町長さんの家かな?
「マルス様ですね?どうぞこちらへ、皆様がお待ちです」
お屋敷の入り口で待機して居た執事さんの後に付いて屋敷に入った。皆様?確か町の有力者との晩餐会とか言ってたからそれに呼ばれたって事かな?
「マルス様が到着致しました」
「うむ、ご苦労」
一回奥の裏庭の見える広間に通されると着飾った男女がグラスを手に歓談をしていた。何人か見た事あるな・・・主に商業ギルドで。
「本日はお招き頂き有難う御座います、町長」
「よく来てくれた。領主様が昼にお出ししたタイラントボアをいたく気に居られてね、君とお会いしたいと」
晩餐会って言うか立食形式のパーティだなこりゃ。
「そうですか。で、その領主様は?」
多分あの窓際で大勢に囲まれてる人だと思うけど。
「今紹介するので付いて来てくれ」
「はい」
町長に付いて歓談している領主様の所へ向かう。あ、支部長もいたのか。
「領主様、マルス殿を連れてまいりました」
「うむ、皆には申し訳ないが、少し外して貰えるか?」
「はい。失礼します」
領主様を囲んでいた人達が引いて行く。そこの商人モドキ、人の事睨んでんじゃねぇよ。
「お初にお目にかかります領主様。只今ご紹介に預かりましたマルス・ガーランドと申します。以後お見知りおきを」
「ん?・・・エルドラ・バレリーだ。ボーロよ、間違いないか?」
「ハッ!少々背丈が伸びておりますが間違い御座いません」
「ボーロ・・・あっ!お久し振りですボーロさん!」
領主様の後ろに控えていた衛士さんの一人が師匠の所に各国から研修に来ていた人達の中の一人だった。
「お久し振りですマルス様。私の事はボーロと呼び捨てにして下さい。使徒様の直弟子であるマルス様に比べたら、私など取るに足らない存在ですから」
「いえ、年上の方を呼び捨てになんて出来ませんよ。あれから六年も経つんですね早いものです」
「ほう、本物であったか。呼び付けてしまって済まなかった。私に取り入ろうとする者の中に其方の事を偽物だと断じる者が居ったのでな」
「いえ、彼等とは商業組合で一悶着ありましたから、その意趣返しのつもりでしょう。領主様が謝られるような事では御座いません」
「そう言ってくれると助かる。戦争を止め、ボーロを含め我が領兵を鍛えてくれた使徒殿には感謝しておるのだ」
改めて師匠の凄さと影響力を感じた。この世界のいたる所に師匠に感謝している人が居るんだろうな。
「この国は小国故にロードルデルフに攻め込まれておれば成す術も無く蹂躙されておっただろう」
「戦争の話は師匠から少しですが聞いております。師匠は唯家族を守りたかっただけだと言っておりました・・・・・」
「だが、結果として世界を救い神に認められた。そして奢る事無く精進しているとも聞いている。だからこそ私は感謝と尊敬の念を捨てる事は出来んのだよ」
「師匠が聞いたら多分困った顔をするでしょうね・・・師匠はそう言うの苦手ですから」
「ははは!そうか、益々好感が持てるな!一度お会いしてみたい物だが、立場上この国を離れられんのが残念だ」
良い人みたいで良かったと、胸を撫で下ろした。
「それで、教会の敷地を買い取りたいと聞いたが?」
「はい。孤児達が自活出来るように整えたいと考えております。町長も賛同して下さり、衛士を送って頂くなど良くして頂きました」
「うむ、子は国の宝だ、働き手が増えるには時間が掛かるものだし蔑ろには出来ぬ。町長、可能な限り支援するように」
「畏まりました」
「有難う御座います、領主様。それで代金の方なのですが、私の所持している魔物でお支払いしたいのですが宜しいでしょうか?」
「ウォルト支部長の方からその話も聞いている。領都の方に届けて貰えるならばそれで構わぬよ。もしよければ私が帰る時に共に領都へ来ぬか?」
「宜しいので?」
「勿論だとも」
良かった、全て上手く行った。けど、僕の力だけじゃない。『ジン・マキシマの弟子』と言う立場に頼らない位にならないとな・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。




