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 決戦当日。朝食後に全員水浴びをして身体を洗い、服も洗濯した比較的綺麗な物に着替えた。


「マルス兄ちゃんかっこいい!」


「ありがとね。僕的にはこう言う服ってあんまり好きじゃないんだけどね」


 支部長から渡された服を着てみたんだけど、いらない飾りがついてるんだよなぁ。


「それで領主様って何時頃来るんだ?」


「解らないけど、早くて午後、もしかしたら視察は明日以降になるかもしれない」


「今日は来ないかもしれないって事か?」


「うん。町長や支部長の接待とかあるだろうし、町に着いて直ぐに視察って言うのは考えにくいかな?」


「なんだよ、だったら着替えたりしなくてよかったじゃねぇか」


「いや、来てから慌てる位なら事前に準備しておいた方が良いでしょ。それに、これからは毎日身体を洗って貰うよ?」


「は?なんでだよ」


「孤児だからって言う偏見を正して貰うための第一歩かな。組合で商人達相手に『エデン商会』の話したの覚えてる?」


「あ~・・・お前の師匠が作った孤児が経営してる商会だっけ?」


「そうそう。読み書きや計算だけでなく貴族相手でも問題無い最低限の作法を全員が学んで売り上げを伸ばしただけでなく、貴族の正妻になった人が二人も居るんだ」


「は?・・・・・ほんとかよ・・・孤児が貴族の・・・しかも正妻って・・・・・」


「まぁそこまでとは言わないけど、皆には最低でも読み書きと計算。出来れば丁寧な言葉使いも覚えて貰いたいかな」


「俺達に商売をやらせるつもりかよ」


「うん。子供達でも手伝える簡単なお菓子でも作って売れば僕が居なくなってもやって行けると思うんだ」


 そのためには町長の協力は必須だし、領主様が認めてくれれば何の憂いも無く旅を再開出来る。


「あ・・・・・そうだったな・・・お前がずっと居てくれるって勘違いしちまってた」


「ごめん・・・ずっとここで暮らすって言うのも悪くない選択だけど、如何してもやりたい事があってさ」


 ナックと今後の話をしていたら五人の衛士がやって来た。


「失礼する。町長の命で今日からここの警備を交代でする事になった・・・のだが・・・・・お前・・・いや、君がマルス君かな?」


「先日は如何も。僕はマルスで、こちらがここの責任者になる予定のナックです」


「宜しくお願いします」


 この町に来た時の門番さんだ。先頭に立って話しかけて来たって事は小隊長とかなのかな?


「この辺りの治安は余り良くないので私から上申していたのだが、漸く町長が動いてくれてね。なんでも近い内に装備も新調するとか言い出して・・・君が町長を説得してくれたのか?」


「説得と言う程じゃありませんけど・・・領主様が視察に来た時にここの惨状を見たら責任問題になりますよと教えてあげただけです」


「ほぅ・・・その割には上機嫌だったのが気になるが・・・・・」


「うぉっ!な、なんで衛士が・・・いや、ナック!何故仕事に来ない!」


「あ、メンデルさん・・・・・」


 千客万来だな、おい。しかし何しに来たんだこいつ。


「お前達が困っているからと手を差し伸べてやった私の顔に泥を塗るような真似をしおって!」


「あの~、先日彼はクビを言い渡されましたけど?」


「誰だね君は?これは私とナックの問題だ、口を挟まないで貰おう」


「いえ、そうもいかないんですよ。彼等はこれから作る僕の商会で働いて貰う事になっているんですから。就業契約書も無く、一人銅貨三枚なんて端金で半日子供達を働かせていた商会に彼等を送るつもりは有りませんから」


「ほぅ・・・それは聞き捨てならないな。端金とは言え孤児達の力になっていた事に免じて違法就労の件は目を瞑って置いてやる。尤も、今直ぐに立ち去れば、だがな」


「くっ!・・・・・」


「メンデルさん待ってくれ!」


「ナック?!」


 衛士に詰め寄られて帰ろうとしたメンデルをナックが呼び止めて驚いた。


「・・・なんだ」


「その・・・今までありがとうございました!!」


「・・・フンッ・・・・・」


 ナックはメンデルの姿が見えなくなるまで頭を下げ続けていた。利用されていた事を知っても今まで助けてくれた人への彼なりのケジメなんだとそう感じた。


 でも一体何で来たんだろ?労働力確保のためとは思えないし、何か裏が有るとしか思えないな。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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