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「おい、デイビス、俺は何処に乗りゃいいんだよ」
「煩い!お前は歩いて帰えればいいだろうが!私はそれ所ではないのだ!」
「町長!衛士の派遣忘れないで下さいね!!」
「任せて下されええぇぇぇ・・・・・」
町長とタイラントボアを乗せた馬車がドップラー効果を残して帰って行く。僕は支部長と顔を見合わせニヤリと笑った。
「クックックッ・・・上手く行きましたね」
「ああ・・・これであいつは暫く俺達の言いなりだ。ほれ、頼まれてた服」
「有難う御座います。そう言えば聞き忘れてたんですけど、ここの国名と領地名に領主様の名前や爵位なんかを教えて貰えますか?」
「知らなかったのかよ!・・・ハァ・・・ブランデル王国バレリー伯爵領モンタナだ。現当主の名はエルドラになる」
「エルドラ・バレリー伯爵ですね・・・何か逸話とか聞いた事ありません?」
「ん~?・・・特には・・・・・ああ、先の戦争の噂を聞いた時に真っ先に領兵を国境に送ったとか聞いたな。まぁ、この国には攻めてこなかったから他の貴族から色々言われたらしいが」
馬鹿にされたりしたのかな?大陸制覇を目指してあちこちに戦争を仕掛けていたのは事実なんだし、備えておく事は悪くないだろうに。
「ん~・・・やっぱり直接会って話をしないとダメか」
「悪いな余り力になれなくて。それじゃ、俺も帰る。一応この辺りの地価一覧位は作っておかないとな」
「宜しくお願いします」
背を向け歩き出した支部長に頭を下げた。さて、昼食の準備をしないとね。
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「・・・あ、あのね、父様・・・・・」
「ん?どうした鈴華?」
「わ、私も修行の旅に出たいの!」
「は?なに言ってんだ、駄目に決まってんだろ」
「なんで!どうしてダメなの!」
「そりゃあ意味が無いからだ。鈴華、お前はもう武術家として出来上がっちまってるんだよ。今以上の成長は殆ど見込めないんだ」
「でも・・・そうかもしれないけど経験は積めるでしょ!私、手合わせならしてるけど実践経験は殆ど無いし!」
「俺との手合わせ以上の戦闘経験なんてある訳ないだろ・・・ハァ・・・・・お前、マルスに会いたいだけなんだろ?」
「へっ?!あ、いや、ちがっ・・・・・」
「お前あのビデオ見てから変だもんなぁ・・・・・自分でも気付いてないんだろ?あいつに惚れたって」
「ほ、ほれっ?!ちがっ!や、あ・・・父様の馬鹿ぁ!!」
「・・・ハァ・・・・・あ~あ・・・とうとう来ちまったか・・・・・取り敢えずマルスはボコるとしよう」
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「ぉ・・・・・な、なんか寒気が」
「マルスおにいちゃんだいじょうぶ?びょうき?」
「大丈夫大丈夫。はい、これ運んで」
「は~い」
なんだろう、明日の事でナーバスになってるのかな?
「おいし~ね!」
「あたしはおなかいっぱい食べられてうれしい!」
「全部マルスのお陰なんだからな、ちゃんと感謝するんだぞ」
「「「「「マルス兄ちゃんありがとう!」」」」」
「それはもういいって。どうせ僕一人じゃ食べきれないんだから」
こうして大勢で食卓を囲むとノルドでの宴会や修行時代を思い出す・・・皆元気かなぁ・・・・・
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「三階と四階の掃除終わったよ~」
「五階と六階も終わったぜ」
「おう、ご苦労さん。後は~・・・隣町の町長さんが夕方には来るからその準備と確認だな」
「それはもう大丈夫。一応後でもう一回確認はするけど」
「頼んだぜ。それにしても、宿屋の仕事って思ってたより大変だな」
「いやいや、以前のままだったらここまで忙しくなかっただろ」
「だよなぁ・・・まさかこんな辺境に観光客が来るとか思わなかったし?」
「まぁ何にしてもパンドラ様様だな。手の空いた奴から賄い食っちゃってくれ」
「「「「「へ~い」」」」」
「って全員かよ!」
「「「「「ははははは!」」」」」
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右手の人差し指の先には極小の深淵門。左手の人差し指の先には極小の光弾を浮かべる。
魔力操作の訓練で二つの魔法を同時に制御出来るようになっては来たが、この状態を維持し続けるのは中々難しい。行く行くは全ての指に別の魔法をとか考えている。
「わ~・・・きれ~・・・・・」
「・・・危ないから・・・触っちゃだめだからね・・・・・」
「は~い」
これは・・・いいな・・・・・近くを子供達が歩き回っていて・・・集中しにくく気が散り易い・・・・・
「お前らマルスの邪魔すんなよ」
「は~い」
「・・・いや・・・触らなければ・・・寧ろ、いい訓練になる・・・・・」
「へ~、そう言うもんか?」
「・・・うん・・・・・」
最上位の魔法を維持出来る最低限の魔力を探る作業は今の僕にとって最高の訓練となった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




