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支部長さんの計算も終わって契約書にサインをした。
「でも、本当にいいのか?四千五百万で買うって言ってるのに三千万で良いって・・・・・」
「ええ、その分職人に売る時は少し安めにお願いしますね。それと、他にも頼みたい事が幾つか有るんですけど構いませんか?」
「あ~・・・立場上他の商人と公平でなくてはならんから、余り優遇は出来んぞ?」
「いえいえ、そんな無茶は言いませんよ。町長、になるのかな?この町の責任者と話がしたいんです」
「町長と?何だそんな事か。と言いたい所だが、理由次第だな」
「今現在ナック達の住んでいる元教会と孤児院の敷地と建物の所有権が如何なっているのか聞きたいんです。そして可能ならば買い取りたいと」
「元教会か・・・ん?そう言えば通達が来ていたような・・・おい!誰か解る奴は居るか!」
「・・・・・もしかして先週来た領主様からの通達の中に書かれてたんじゃないですか?支部長宛でしたので僕等は見てませんけど」
「あっ!あれか!ちょっと待ってろ!今持ってくる!」
領主様からの通達の内容を覚えて無いって大丈夫かよ?駆け出す支部長の背中を見送り、他の職員さん達と苦笑いをした。
「おう、書いてあったぞ。あ~・・・ロードルデルフから正式に返還されたからうちに買い取って欲しいとよ。え~っと、現状の確認とその交渉に~・・・・・領主様が直接視察に来るだとおおぉぉぉ?!しかも二日後だってええぇぇぇ!!」
「「「「「なんだってえええぇぇぇぇ!!」」」」」
「ま、拙いですよ支部長!御持て成しの準備が何も出来てないじゃないですか!!」
「あんた、なんて事してくれてんだ!最悪全員クビになっちまうじゃねぇか!!」
「馬鹿野郎!今はそれ所じゃねぇ!直ぐに準備だ!一番良い宿屋と食堂の手配を急げ!俺は元教会の方を見に行ってくる!!」
慌てる支部長にナックと共に馬車に押し込められて孤児院へと向かった。全然大丈夫じゃなかったよ・・・・・
「な、なぁ・・・もう俺には訳が解んねぇんだけどよ・・・もしかして相当ヤバい事になってるのか?」
「ん~・・・拙いと言えば拙いんだけど、僕からしたら嬉しい誤算かな?」
「馬鹿言うな。下手を打ったら最悪俺の首が物理的に飛んじまうだろうが」
「いや、それは自業自得ですよね?領主様からの通達をちゃんと読んでなかったのは支部長ですし」
「うっ・・・・・いや、まぁそうなんだが」
「なんなら僕が何とかしてもいいですよ?但し、色々と便宜を図って貰う事にはなりますけど」
「・・・・・普通なら断るんだろうが・・・お前達は住む所を確保したい、俺は自分と部下達の生活を守りたい。利害関係の一致って事で手を組むのも有りか・・・・・」
「そうなります。尤も、僕の思惑通りに行けば、全てが上手く行くと思うんですよ」
「本当か?!」
「ええ、そのためには町長にもご協力を願いたいんですけど、お会い出来ますか?」
「この後町長の所にも行って来る。明日にでも連れて来よう」
「宜しくお願いします」
馬車が孤児院に到着するや否や馬車から降りた支部長が膝から崩れ落ちた。うん、まぁ気持ちは解らなくもないけどね。
「支部長、そんな暇はないんじゃないですか?教会の建物の方は僕が解体しておきますから、町長の方に現状の報告をお願いします」
「あ、ああ・・・だが、如何取り繕うつもりだ?」
「教会が戦争の元凶だった訳でしょ?だったら領主様には厄払いの為に壊したとでも言っておけばいいじゃないですか」
「そ、それしかないか・・・・・」
「孤児達を放置していた責任を追及されれば町長も罰せられるぞと脅しておけば口裏も合わせてくれるでしょうしね」
「お前・・・結構腹黒いな・・・・・」
「そうですか?まぁいざとなったら町長にはタイラントボアの一匹でも渡しておけば言う事聞くでしょ」
「ハァ・・・何かしらの利益が有れば素直に言う事を聞いてくれるか・・・・・」
「あ、後僕にそれなりの服を用意して貰えますか?流石にこの格好で領主様とお会いする訳にはいきませんし」
「お、おまっ!まさかお前が直接領主様と交渉するつもりじゃねぇだろうな?!」
「そのつもりですけど、いけませんか?なに、心配いりませんよ。これでもメルクリウス聖皇国で皇族の方々と食事をした事も有りますから」
「は?・・・・・そ、そう言えばジン・マキシマの弟子って言ってたな・・・だとすれば皇族の方と御会いしていても不思議じゃない・・・か・・・・・」
「幼少期の皇太子殿下と遊んだ事も有りますよ。覚えているかは解りませんけど」
「今は信じるしかないか・・・それじゃ、俺は町長の所に行ってくる」
「はい。宜しくお願いします」
支部長を見送りナックと孤児院へと入った。もう直ぐ日も落ちるし、教会の解体は明日にしよう。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




