03
宿屋で夕食を摂り割り当てられた部屋に入った。子供一人での宿泊と、余り良い顔はされなかったが、アインさんの紹介だったので断られるような事が無くて良かった。
「あぁ・・・疲れたけど寝る前に、と」
椅子に腰かけて鞄から青い宝石を出して話し掛けた。
「ちょっと良いですかパンドラさん。どうせ上から覗いてたんでしょ?」
『おいおい、覗いていたとは心外だな。見守っていたと言ってくれ』
「はぁ・・・どっちでも良いですけど、知ってたんでしょ?入町税とか身分証の事とか、僕が如何なるかとか」
『そりゃまぁな。ある程度は調べてはあるさ。でもな、如何なるかなんて知りゃしない。予想は出来ても未来予知なんて俺には出来ないしな』
「ハァ・・・そうなんでしょうけど、せめて教えといてくれてもいいじゃないですか」
『何言ってんだ、あいつが十三で山を下りた時なんか殆ど着の身着のままだったって聞いたぞ。あいつを超えようってんだ、それ位は軽く熟してみせろ。それに比べりゃ多少でも事前情報があるだけマシってもんだろ』
「はいはい。どうせ僕が慌てる所を見て楽しんでたんじゃないんですか?」
『クックックッ・・・ハハハハハ!!そりゃもう楽しませて貰ったぜ、皆でな!ハハハハハ!!』
「み、皆って・・・・・」
『お前の両親とかアレスにディアナとミネルバだな。いや~門に着いて入町税の事を聞いた時の落胆振りは最高だったぜ。クックックッ・・・ま、お前の母親だけは心配してたけどな』
「ハァ・・・もう良いです。明日も一騒動有りそうなんで今日はもう寝ます。それじゃ」
『おう、おやすみ』
「おやすみなさい」
パンドラさんとの交信を終えてベッドに潜り込んだ。目を瞑り、魔力操作の訓練をしてから眠りに就いた。
今回の旅の出来事が録画してあって、編集した物を師匠の家で上映会をしたと後日聞いて泣きたくなった・・・・・
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翌日。日の出と共に目が覚めて、軽く体を解してから朝食を取りに行くとテーブル席で朝からお酒を吞んでいる人達が居た。
「おかみさ~ん!ソーセージとエールおかわり!」
「こっちもエールおかわりだ!」
「はいはい、いいけど朝から呑み過ぎるんじゃないわよ」
「解ってるって!昨日閉門に間に合わなかったからギルド行く前の腹ごしらえ序なだけだからよ」
ギルド?ああ、冒険者ギルドが有るんだ。魔物がうようよしている世界だし、それを狩る仕事が有るのが普通か、師匠の所にもあったし。
「お早う御座います。朝食をお願いしたいんですけど」
「あら、おはよう。直ぐ用意するから座ってて」
「はい。お願いします」
カウンター席に座り、暫くして運ばれてきたパンとスープを食べていると冒険者の一人から声を掛けられた。
「なんだぁ?坊主一人か?お前いくつだ?随分小せえけど、ちゃんと飯食ってんのか?」
「えっと、僕ですか?僕でしたら十三に成りましたけど、そんなに小さいかなぁ」
身長150cmなんだけど、こっちの平均とか解らないしなぁ。
「十三でそのガタイかよ!もっと肉食え肉!俺が奢ってやっからよ!」
「あ、あの、待ち合わせが有るので余りのんびり食べている暇は無いんです。お気持ちだけで・・・・・」
「そうかぁ~・・・用が有るんじゃ仕方ねぇなぁ・・・・・俺はここに常宿してるブルートってんだ。もう一泊するなら夕飯位奢るぜ」
「僕はマルスって言います。ブルートさん、親切にして頂き有難う御座います」
見た目厳つい人だから絡まれるかと思ったけどそんな事無くて良かったなと、朝食を食べ終えてブルートさん達に軽く頭を下げて宿を出たら丁度アインさんがこちらに向かって来るのが見えたのでアインさんの元に向かった。
「お早う御座います、アインさん」
「うむ、おはよう。では、付いて来てくれるか?」
「はい。でも、何処に行くんですか?」
「心配はいらない。冒険者ギルドのマスターに会いに行くだけだ」
「そうですか・・・・・」
冒険者ギルドか。昨日倒した魔物を買い取ってくれるかな?あ、帰りにブルートさんに会ったら食事でも誘おう。
なんて暢気な事を考えながらアインさんに付いてギルドへ向かう僕だった。けど、それは面倒事の始まりでしかなかった事は言うまでも無く、知っていたであろうパンドラさんを恨む僕だった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。