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開けて翌日。昨夜は山裾の洞窟にお邪魔して一晩過ごした。
「おはようさん、昨夜は助かったぜ。お礼に飯をやるから待ってな」
「クゥ~ン」
まぁ狼達の巣穴だったんだけど。そこはまぁあれだ、群れのボスとお話をして快く宿を借りたと。
収納から熊と猪を取り出して狼達の前に置き、自分用に焼いておいたトカゲの肉に齧り付いた。
「ほれ、お前達も食っていいぞ。俺は食い終わったら出て行くから気にすんな」
「ワフ!」
狼達の食事を眺めつつ木を繰り抜いて作った水筒から水を飲み、一息ついてさて移動するかと立ち上がった時だった。強大な〝力〟を感じて巣穴の入り口に身を隠して外の様子を覗った。
「・・・・・ぁ・・・あれは、師匠とカルヴァドスさんか・・・・・」
上空に飛来したドラゴンとその隣を飛ぶ人間の放つ強大な気配。それは間違える事等無い人達の物だった。
「お前達下がってろ・・・間違っても出て・・・・・来る訳ねぇか」
振り向きながら下がるようにと狼達に声を掛けると、既に巣穴の奥で固まって震えていた。
「何で・・・いや、何しに来たんだ?師匠だけでなくカルヴァドスさんまで一緒に・・・・・」
可能な限り気配を殺して彼等の気配が感じられなくなるまで洞窟に身を潜め続けた。
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「まったく・・・お前の大食いのせいでこんな所まで来る羽目になっちまったじゃねぇか」
「すまんな。しかし困ったな、トロールの数が少な過ぎる。これはもしかすると増えるまで少し食う量を減らさねばならんのか?」
「そりゃそうだろ。まぁリザードマンとかサラマンダーなら余ってるし、猪や熊なら簡単に手に入るから暫くはそれで我慢するんだな」
「むぅ・・・・・お、そうだ、以前青いトロールを狩って来た事が有ったではないか。あれを狩りに行くと言うのはどうだ?」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ、あれは大陸の反対側なんだぞ。空飛んだって行って帰ってくるだけでも最低三ヶ月は掛かるんだ、その間ライエルの飯抜きでもいいのか?」
「クッ!・・・・・し、仕方ない・・・この際熊や猪の合い挽きでも我慢するとしよう・・・・・」
「ぜひそうしてくれ。ま、ライエルなら上手い事調理してくれるだろ」
「まさか山脈北側でこれとはな・・・前回狩り過ぎたツケが回って来たと言う事か・・・・・」
「仕方ねぇ、取り敢えず西側も回ってみようぜ」
「うむ・・・・・余り期待は出来んが・・・・・」
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「フゥ・・・行ったかな?何しに来たのか解らねぇけど、今日は大人しくしてた方が良いな。お前達も外に出るなよ、飯は俺が出してやるから」
「ワフ!」
まさか俺を探しに来たなんて事は無いよな?いや、流石に自意識過剰だな。
「にしてもだ・・・あれが師匠本来の姿かよ・・・・・空を飛べるなんて知らなかったぜ」
力の象徴たる竜を従える程の魔力総量と、対人戦最強の技を持つ人のまま人を超えた人類最強の男か・・・・・あれと戦おうなんて正気の沙汰じゃねぇな。
「クックックックックッ・・・・・やべぇ、やべぇよ・・・今直ぐにでも戦いてぇ・・・・・抑えろ・・・抑えるんだ・・・今はまだその時じゃねぇ・・・・・」
歓喜に震える自らの身体を両腕で抱くようにして滾る血を抑えようとした。
そうだ、心の奥底から湧き上がるこの気持ちは歓喜だ。自ら望んだ険しきこの道の終着点は余りにも強大で果てしなく、それでもなお辿り着き超えたいと獣人の血が騒ぎ、闘争心と言う本能に抗う事など出来やしなかった。
「流石に自分でもイカレてると思うが・・・クックックッ・・・俄然やる気が出て来たぜ!ハハハハハ!!」
この時からガーランドの名を継ぐなんて如何でもよくなっていた。
「アオオォォォン!!」
堪らず洞窟を飛び出し、近くの木々を殴りつけ、蹴り倒し、天に向かって咆哮を上げた。必ずこの本能と言う〝力〟を完全に制御してあの人の前に立って見せると誓いを込めて。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




