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「お兄様・・・マルス様の反応が消失しました。直前の魔力反応からまた転移したと思われます」
「そうか・・・あのバカ・・・無茶しやがって・・・・・」
「見た目はケント様と似てますけど、性格は随分と違っているようですね」
「そうでも無いさ・・・ケントが怒った時とそっくりだぜ、あいつは。まぁ二人とも引き続きモニタリングを頼む」
「「はい」」
「やれやれ、今度は何処に飛んだのやら・・・・・」
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気が付けば草原に倒れていた。前回同様魔力欠乏症の眩暈と気怠さに襲われ暫く転がっていた。
「あ~・・・また失敗かよ・・・・・しかも一面の草原とか・・・目印になる物も・・・いや、遠くに山が見えるな・・・・・何だここ・・・・・」
転がったまま周囲を見てみれば、広大な草原とそれを囲む山々が見えた。
「・・・魔物や動物の気配もねぇし・・・随分と妙な場所もあったもんだ・・・・・」
大気中の魔力濃度が高いな。そのせいで魔物が寄り付かないのかな?隠れられる障害物が無いせいもあるのか。
「さて・・・・・取り敢えず北にでも行くか」
水と食料は収納に入れてあるけど、確保出来る場所に移動した方が良いにきまってるしと、立ち上がって北へと歩き出した。
前回の転移場所よりも気温が高い。ここが予想通りの場所なら北へ向かった方が良いだろう。
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「ははははは!良かったじゃねぇか元気そうでよ」
「いや、あんま無茶して魔力欠乏で倒れてる所襲われたらよ・・・・・」
「お前は心配し過ぎだ。あいつはそんな柔じゃねぇよ」
「でもよう・・・・・」
「ハァ・・・ん?どうしたジニー」
「お話し中にすみません。ライエル兄さんがカルヴァドスさん用のお肉の残りが少なくなってきたって」
「あ~・・・・・無くなる前に取ってこねぇと・・・偶にはあいつも連れて行くか、普段ごろごろしてるだけだし」
「ははは・・・運動不足で太りそうだもんね。じゃあライエル兄さんにそう言っとくよ。パンドラさん、お邪魔しました」
「おう、気にすんな。しっかしあの竜も変わってんよな、飯につられて人里に住むなんてよ」
「ここに居ると退屈しないで済むらしいぞ。フォルマともよく話してるみたいだし」
「へぇ~・・・・・まぁ俺は帰るわ、そんじゃな」
「おう、またな。さて、明日は肉を取りに行くとしますかね」
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「ん~・・・参ったな、さっきの草原以外山しか見えねぇ」
一番近い山に登って山頂から見渡したが、転移した草原以外は全て山だった。
水場だけでも見つからないかと山を降り始めて、最初に出会った生物は人型の魔物だった。
「でっけえなぁおい。何喰ったらそんなになんだよ」
「ガアアァァァ!!」
身長8m近い巨体の人型の魔物、トロールが殺気を放ち咆哮を上げて向かってくる。
「初めて見たけど思ったよりは早いな。まぁ、でかいから歩幅が広いってだけだけど」
トロールが振り回してきた右腕の下を潜り抜け足首を蹴る。先ずはセオリー通りに機動力を奪うか。
「ゴアアァァァ!!」
死角から足首を狙う攻撃を嫌ってトロールがその場でジャンプし、大の字になって降ってきた。
「ははははは・・・面白れぇ攻撃するじゃねぇか!でもそれじゃ顔面がガラ空きだぜ!!」
地響きを上げて全身で着地したトロールの顔面に飛び蹴りを放ち眼球を抉り、直ぐさま飛び退いて俺を捕まえようと伸ばした手を回避し死角に回り込む。立ち上がろうと地面に付いた手首を蹴り、起き上がらせないように移動と攻撃を繰り返した。
「ふぅ・・・・・手間ぁ掛けさせやがって・・・しかしこれじゃいかんな。戦闘に入ると如何にも本能を抑えきれねぇ」
倒したトロールを収納に仕舞いながら独り言ちた。まだまだ感情を抑えきれないが必ず乗りこなしてもう一度師匠の前に立つと、改めて決意を胸に刻み込んで北へと進んだ。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




