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散策しながら山を登り、山頂付近から周辺を見下ろしたんだけど、この辺は山脈らしく山しか見えなかった。人里に出るには川を下る方が早そうだと山を下り拠点へと帰った。
取り敢えず水と食料は問題無いし、暫くはここで魔力操作の訓練をして転移と収納魔法を習得しよう。
転移は制御さえ出来れば何とかなりそうだしと、収納魔法の訓練から始めた。
「なんとなく深淵門や転移に近い気がすんだよな。空間を捻って穴をあけて固定するんだと思うんだけど・・・・・」
色々試している内に目の前に黒い渦が出来たけど。
「ん~・・・・・失敗だな。これじゃ深淵門と変わらねぇじゃん。入れたもんが消えちまうし」
容量は無限でも入れた物を取り出せなきゃ意味が無い。って事は、この何も無い空間内に座標の固定が出来ないといけないって訳か。
「こいつは難しいな・・・収納鞄が高値で取引される訳だ・・・・・パンドラさんから貰った鞄の解析しときゃ良かったな」
どうせ魔力操作の訓練の一環だしと試行錯誤を繰り返した。
「それにしても、外に出たのが良かったのか、狩りをしたのが良かったのか、破壊衝動が余り沸いてこないな。どっちにしても母さんには感謝だな」
時々襲って来る魔物を蹴散らしつつ修行を続ける事十日。なんとか収納魔法を習得した。
「あれだな、武術と同じで基本が重要って事だな」
『魔法はイメージが大事だ』ってパンドラさんに最初に教わったのを思い出した。最上位魔法でも使えるようになると、それが当たり前になって基本を忘れがちになるって訳だ。
「それにしてもここはいいな。水や食料に困らないし、そこそこ魔物が襲ってくるから警戒を切らさないで済む」
適度な緊張とストレス発散が出来て、味を気にしなければ食事も出来る。欲を言えばもう少し強い魔物が出ればってとこか。
何にしても暫くはここで訓練しよう。その後は川を下って人里を探そうかな。倒した魔物を売って着替えとか調味料、特に塩は欲しいし。
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「つー訳で大体の居場所は特定出来たぞ」
「申し訳ありません、パンドラ様」
「すみません、うちの子がご迷惑をお掛けして」
「別にいいって。それでどうする?連れ戻すか?」
「私はマルスの意思を尊重したいと思っています。マルスに帰る気が無いようでしたら好きにさせてやって下さい」
「そうね・・・心配だけどマー君にとって必要な事なんでしょうし・・・・・」
「そうか・・・解った。あいつの好きなようにさせとく。まぁあいつの師匠のお墨付きだ、大怪我するような事も無いだろ」
「ご心配かけて本当にすみませんでした」
「お手数かけてすみません」
「それじゃ・・・ゲイル、ミーナ・・・いや、何でも無い。それじゃな」
「態々知らせに来て頂き有難う御座いました・・・・・ミーナ、少し話をしないか?あの子の事で」
「そうね・・・もう、あの子ったらあちこちに心配かけて・・・・・」
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地面に印を付けてそこへ向かって転移をする訓練を始めた。
最初は3m。誤差無く飛べれば距離を伸ばして行き、更に転移先も変えていくつもりだ。
「クッ!・・・・・ダメか・・・まだまだイメージが曖昧って事かよ・・・・・」
何度試しても飛ぶ事は出来なかった。それでも続けて行けば必ずコツを掴んでモノに出来ると只管訓練を続けた。
「クソッ!・・・思い出せ、思い出すんだ・・・最初に飛んだ時の感覚を・・・そこから更にイメージを固め、精度を上げて行けば必ず・・・・・」
そうだ・・・あの時は―――
「・・・ぅ・・・おああぁぁぁ!!飛おべええぇぇぇ!!」
内在魔力がごっそりと持っていかれると同時に視界が暗転し、身体を引かれるような感覚と共に僕は二度目の転移をした。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




