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「つー訳だから、もしここに来たら連絡宜しく」
「・・・・・それはお約束出来兼ねます」
「は?なんでだよ?お前、マルスの事心配じゃねぇのかよ」
「ええ、心配などしておりませんよ。あの子は・・・いえ、彼は一人で歩き出したのですから。貴方の手を離れて、です。ですから私は彼の意思を尊重します。彼が『知らせるな』と言えば、私が貴方に知らせる事は無いでしょう」
「あいつはまだ十四だ」
「だから何だと言うのです?歳なんて関係ありませんよ、彼はもう一人前の男ですから」
「・・・・・そうかよ。だが、俺の方で監視の強化はさせて貰うからな」
「どうぞご随意に。でも、彼が自分から姿を現さない限り見つかる事は無いでしょうね。今現在も何処にいるのか解っていないのですから」
「チッ・・・おめぇは昔から敵か味方か解らねぇ奴だよな、モーリー」
「私は貴方の味方だと何度も申しておりますが?何でも言う事を聞くだけが貴方の為になるとは思えないとも申してますけど」
「あ~はいはい解ったよ。それじゃな」
「はい、ではまた・・・・・ハァ・・・変わらない事と成長しない事は別なのですけどね・・・あれで遺言を守ってるつもりなのかしら・・・・・」
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「・・・・・ぁ・・・成功・・・したのか?・・・・・いや・・・失敗だな・・・何処だよここ・・・・・」
気が付くと森の中に居た。身体を起こし、立ち上がろうとしたが酷い眩暈に襲われて膝から崩れ落ちた。
「・・・・・ッ!・・・グエエェェェ・・・・・あぁ気持ち悪ぃ・・・身体が怠りぃ・・・・・」
これが魔力欠乏症って奴か。話には聞いてたけど、ここまで酷いとは思いもしなかった。
目を閉じて呼吸を整える。大丈夫、何時も通りに身体を制御するんだ。魔力なんか無くても身体は動かせる筈だ。
「・・・・・よし、何とか動けそうだ。魔力の方はその内戻んだろ」
先ずは水と食料の確保でそれから拠点の設営だなと、周囲の気配を探りながら散策を始めた。
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「は?マルスが居なくなった?」
「ああ、あの野郎自力で転移魔法使いやがってな、魔力の残滓から俺達の星から出たのは解ってるから行ける所はこの星ともう一か所しかねぇんだ」
「へぇ・・・そこまで断定出来るもんなんだ」
「ああ、転移魔法ってのは行った事が有って、その場所を頭の中で正確に思い描く事が出来ないと飛べねぇんだよ。まぁ、俺は例外だけど」
「ほ~そう言うもんなんだ・・・転移魔法か・・・俺も練習したら使えるようになるのか?」
「ん~・・・出来なくもないけど、教えるつもりはないぞ。理由は制御しきれないと位置ずれを起こして何処に出るか解らないからだ。マルスみたいにな」
「成程、それであいつは今迷子になってるって訳か」
「まぁそう言うこった。そんな訳であいつが来たら保護しといてくれよ」
「保護?必要ねぇだろそんなの。あいつは真羅流の師範なんだぜ。あいつにゃ俺の全てを教えてあんだ、転移直後に即死する状況でなきゃ必ず生き延びて俺かお前の前に現れるだろ」
「なんだそりゃ?お前あいつに何教えたんだよ」
「あん?お前の事だから上から見てたと思ってたんだけどな・・・・・俺が教えたのは極限状態でのサバイバル術だ。それこそあいつなら極地でも生き抜けるんじゃねぇの?」
「マジかよ・・・・・」
「クックックッ・・・・・極寒の地で火を使わないで暖を取る方法とか聞きたいか?」
「あ~・・・いや、遠慮しとくわ・・・嫌な予感しかしねぇ」
「ははははは!ま、お前は知らなくても良い事だしな」
「父様ぁ・・・マルス君本当に大丈夫なの?凄く強い魔物とか居たら・・・・・」
「それこそ心配いらねぇよ。あいつは単純な力だけで言ったら俺の事はとっくに超えてんだぞ。あいつに勝つとか普通は無理だから」
「そ、そうなんだ・・・良かった・・・・・」
「おい、ジン。お前、今自分で自分の事普通じゃないって言ったの解ってるか?」
「勿論さ。俺は武術で人を超えてんだ、普通な訳ねぇじゃん」
「・・・・・ま、まぁ自分で納得してんならいいか・・・じゃ、俺は帰るわ」
「おう、またな~・・・さて、どれ位で俺の前に現れっかね?クックックッ・・・楽しみだぜ・・・・・」
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「取り敢えず飯と水は何とかなったし拠点でも作るか」
どうやら山間の谷に転移したみたいだ。もうすぐ夕方になるし、今日の所は拠点を作って大人しくしておこう。
明日からは如何するかな。川沿いに下って行けば人里はあると思うけど、その前に収納魔法を覚えたいんだよね。飛べると思ってなかったから着の身着のままで何も持ってないから魔物の素材とか持っていけないし。
火を起こし、途中で狩ったイノシシを川で冷やしながら抜き手で雑に捌いて木の枝にさして焼いて食べた。まっずいなぁ、ハーブでも採ってくりゃ良かった。
ああ・・・何も言わずに出てきちゃったから母さん心配してるだろうなぁ・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。




