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初めての修行の旅から帰って来て三ヶ月が経ち、僕は十四歳になっていた。あの日以来毎日ジムに通い身体を鍛え続けている。これじゃ駄目だと理解していながら。
「よ、マルス、相変わらず頑張ってんなぁ」
「シライ君、こんにちは。シライ君だってよく来てるじゃない」
「まぁ俺は頭悪ぃし、身体動かしてる方が好きだしな。ははははは!」
シライ君は半年程年上で僕と同じ長男で建国当初から続く家系の出だ。
「シライ君は年が明けたら成人だよね?進路は決まってるの?」
「ん?俺か?俺は旧大陸で冒険者になるって決めてんだ。その為に身体を鍛えてるって訳」
「え?旧大陸で冒険者って、家は如何するの?長男なんでしょ?」
「キーボードの配列さえ覚えられない俺が役所なんかで働けると思うか?家は弟がいるし、両親も好きにしたらいいって言ってくれた。それに、もうパンドラさんにも旧大陸に送ってくれって頼んであるんだ」
「そ、そうなんだ・・・・・」
「俺の事よりお前は如何なんだよ。お前だって来年の夏には成人だろ?俺と違って頭もいいんだし、家を継ぐなら躍起になって身体鍛える意味なんてねぇだろ」
「そう・・・なんだけどね・・・・・」
家を継ぐ。今の僕にはその言葉がとても重かった。『カーランド』の名を継ぐ資格が今の僕にはあるのだろうか。
「あ、あれか?何とかって武術の師範取ってたんだよな?それで家を継ぐか道場を開くか悩んでるとかか?」
「道場かぁ・・・・・考えた事も無かった・・・・・」
「は?じゃぁ何で師範取るまで頑張ってたんだよ・・・意味わかんねぇよ」
「何でって・・・・・」
最初はスズちゃんに勝ちたかったからで、その後は・・・・・
「そう言えば何でだったかな・・・ただ身体を動かすのが楽しかっただけな気もするし・・・日々強くなっていくのが実感出来て・・・・・」
そして師匠の『朧』に恐怖を感じてそれでも先へと進んで来たのは・・・・・憧れ?ああ成りたい。師匠に近付きたい。師匠に認められたくて『朧』を習得して師範には成れたけど・・・・・
「はっきりしねぇなぁ・・・何なら俺と一緒に旧大陸に行くか?俺の目標は大陸中を回って力を付けてよ、最終的には『魔の森』に挑戦して出来れば制覇してぇんだよな」
「凄いなぁシライ君は・・・・・僕なんて迷ってばかりで・・・・・」
「・・・・・親父にさ、言われたんだよ・・・『俺はやりたいことが無かったから家を継いだだけだ。やりたい事が有るなら成し遂げて見せろ。そして胸を張って一人前になった姿を俺に見せてくれ』ってさ」
「そうかぁ・・・うちの父さんも好きにしたらいいとは言ってくれたけど・・・・・」
「だったら悩む必要なんてねぇだろ。己の信じた道を突き進む。それっきゃねぇだろうに」
結局師匠に負けた事が悔しくて旅に出たけど、別の悩みが出来てこんな所で戴して意味の無い時間を過ごしてる。そう言えば初めて師匠と山籠もりをした時なんて言ってたっけ―――
『マルス、お前が‶力〟を欲する理由は何だ?唯俺に勝ちたいだけならこれ以上踏み込む理由にはならない筈だ』
それでも何とか『朧』を習得した。けど、それだけじゃ師匠の足元にも及ばなかった。
『悩め悩め、悩んで迷って答えを出せ。お前なりの、お前だけの答えを見つけるんだ。進むも戻るも、立ち止まるのもお前の自由だ』
「僕だけの答えか・・・・・」
一応はパンドラさんに認められたけど『ガーランド』の名を継げる程じゃない。パンドラさんを支えられる〝力〟を手にするために先ずは師匠を超える。
でも、そのために何をしたら―――
「贅沢な悩みだよなぁ。勉強も運動も人並み以上に出来た上に魔法も上級だか最上級まで使えるんだろ?俺みたいに運動が好きなだけの奴からしたら羨ましい限りだぜ」
それでも届かないんだけどね・・・・・
「そういや何時からだっけ、隠蔽魔法使ってるの。ガキの頃は確か青髪だったじゃん。耳とか尻尾も生えてたよな?」
「え~っと・・・確か師匠に会いに行った時からだから五歳・・・・・あっ!」
「な、なんだ?聞いちゃ拙かったか?」
「有難うシライ君。お陰で突破口が見つかりそうだ」
「そ、そうか、そりゃ良かったな?」
「悪いけど僕は先に帰るね。本当に有難う!」
「お、おう、またな~・・・って、足早えぇなぁ・・・・・」
そうと決まればこうしちゃいられないと急いで自宅へと帰り、自室に閉じ籠って訓練を始めた。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




