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モーリーさんとの会談から三日、僕は未だにノルドの町に居た。その間、宿から出ずに何度も渡された本を読み返していた。その本の内容が自分の教えられた歴史とは違っていて、騙されているのではと疑いながらも全てを記憶するまで読み耽った。
整然と並ぶ印刷された活字の、後書きの更に後ろに書かれた手書きの文字が僕の心に訴え掛けて来たんだ。
書かれている事柄の全てが真実だと―――
偽りの神によって創られた世界。そこに生きるモノ全てが実験動物で、たった一人の男を作り出すために創り出されたモノだった。
そして、その男が僕のご先祖様で、彼が『娘』を託した男だなんて知りたくなかった。
僕は・・・いや、あの星に住む全ての人、特にパンドラ国に住む者達は何故忘れてしまったのだろう。今ある生の全ては彼の働きによる物だと。
彼がそれを望んで歴史から消したのかもしれない。だからこそ忘れてはいけなかった。特に『ガーランド』の名を継ぐ者だけは伝えて行かなければならなかった筈だ。彼に直接救われた『娘』と、彼に直接守られた『男』の血を引いているのだから。
「・・・ハァ・・・『この書を偽史だと断じる者はケイオス・ドラグーンを訪ねよ』か・・・・・」
こんなの確かめに行くまでも無い。パンドラさんとケイオス陛下の仲が悪い事はパンドラ国の国民なら誰でも知っているからだ。ケイオス陛下がパンドラさんを良く言う訳が無いのに筆者が敢えてこう書いたと言う事は、パンドラさんを嫌っているケイオス陛下ですら認めざるを得ない事実の証明に他ならないのだから。
「・・・・・兎に角前に進もう」
今の僕にはパンドラさんの隣に並ぶ資格は無いし、先ずは師匠を超える事を目標に進む事を選んだ。
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「ほんと、過保護です事」
「いや、もう三日も閉じ籠ってんだぜ。お前が何か余計な事言ったんじゃねぇのか?モーリー」
「何度も言いましたけど、余計な事等申しておりません。それに、些細な事で一月とか落ち込んで閉じ籠る貴方にだけは言われたくはないと思いますよ」
「グッ!さ、些細な事で落ち込んだ事なんて・・・・・」
「それ程心配でしたら迎えに行けば宜しいじゃありませんか。どうせお役目を黙っていた事を面と向かって指摘されて嫌われるかもしれない事が怖いだけなのでしょう?騙し討ちみたいな事なんてせずに初めからきちんと説明しておけば良かったのです」
「そいつは出来ねぇよ。初めから全て知ってたらあいつの成長に繋がらねぇし」
「でしたら悪役になる覚悟位しておきなさいな」
「うっ・・・くそっ、その口の悪い所はリゲルにそっくりだぜ」
「私は、自覚しておりますから」
「お、俺だって・・・・・」
「いいからさっさと迎えに行きなさいな。私も何時までも貴方の相手をしていられる程暇じゃありませんし」
「あ~・・・解かった。解ったよ・・・有難うな、モーリー」
「・・・・・はぁ・・・仕方のない人ね・・・・・」
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ベッドから起き上がり部屋から出て階段を降りると一階の食堂が何やら騒がしかった。
「いやいや、悪いって、こんな良い酒ばっか奢って貰う訳にゃいかねぇよ」
「あたい等にこんな高い酒似合わないって」
「いいからいいから。あんた等にゃ俺の家族が世話になったんだ、遠慮なんていらねぇよ。女将さ~ん!ジャンジャン料理持ってきて~!!」
「・・・・・何やってんですか貴方は・・・・・」
何故か食堂でパンドラさんがブルートさん達に絡んでいた。ほんと何しに来たんだよこの人。
「おお!マルス!助けてくれ!!この人お前の親戚かなんかなんだろ?」
「入って来るなり奢るって言いだして、こっちの話聞きゃしねぇんだよ」
「お~いマルス~、迎えに来たぞ~」
「・・・・・ハァ・・・皆さん遠慮しなくていいですよ、その人もの凄いお金持ちですから」
「いや、そう言われてもなぁ・・・・・」
「いいから呑め!そして食え!今夜は俺の奢りだ!ハハハハハ!!」
不器用な人、か・・・僕を利用した事とかでばつが悪くて騒いで誤魔化そうとしているのかな?
「それじゃ、僕も頂きますね」
「おう、食え食え。ほれ、そっちの兄ちゃん等も遠慮すんなよ!」
強引に始まった宴会は深夜まで続き、最後まで起きていたのはパンドラさんと女将さんだけだった・・・・・不器用を通り越してめんどくさいだけだろこの人。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




