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01

 すっかり日が落ちて暗くなった町中をアインさんに付いて歩く。石と木で出来た低い建物の並ぶ町並みが少し新鮮に感じた。


 道行く人達は雑多だ。人種以外にもエルフやドワーフ、獣人等も居て一安心した。


「それで、何を持っているんだ?売る物によっては行く場所が変わってくるぞ」


「う~ん、猪か鹿か・・・・・食用になるならお肉屋さんですかね?」


「うん?丸ごとか?その鞄一つに入るとは・・・・・もしや、収納鞄か?だとしたら余り大っぴらに使わない方が良い。面倒事に巻き込まれたくなければな」


「ご忠告感謝します。珍しい物なんですね?」


「ああ、私が以前見た物は樽三つ分の容量だったが、それでも大金貨五枚した。取り合えず、肉屋に行くか」


 貨幣価値が解らないけど大金貨って事は結構な価値なんだろうな。容量無限なのはばれないようにしないと。


 暫くしてアインさんが一軒の店の前で止まった。


「ここだ、少し待ってろ」


「え?あの、もう閉まってるんじゃ・・・・・」


「おい、ベック!居るか!アインだ!開けてくれ!」


 僕の問いが聞こえていないかのように戸を叩くアインさん。僕のために開けさせるの悪いなぁ。でも、買い取って貰えないと町から出て行かなきゃいけないし。


「何だい隊長さん。もう終いなんだが」


「ああ、悪いなベック。この子から買い取って貰いたい物が有るんだが」


「ん?・・・ああ、何時ものアレか?に、しちゃあ随分と身形が良いが」


「マルスと言います。お休みの所申し訳ありませんが宜しくお願いします」


「こりゃまたご丁寧に。まぁ、良くある事だから気にすんな。何より隊長さんの頼み事だしな。さ、入ってくれ」


 ベックさんに促されて店の中に入り、そのまま奥へと通されて肉の保管庫、冷蔵庫へと入った。冷蔵魔道具も有るのか。文明はそれなりに発展してるみたいで良かった。


「で、獲物は何だ?兎か?」


「え~っと、兎もありますけど、猪に鹿、後は熊と蜥蜴も有りますけど、どれが食用になるのか解らないんです」


「この辺で狩れる奴なら大抵は食えるが・・・何処にそんな・・・ってその背中の鞄、収納鞄か?詮索はしないが良いとこのお坊ちゃんって事か?身形も言葉遣いも良いしそんな気はしてたが・・・・・」


 良いとこって程でも無いと思うけど・・・まぁ取り合えず数日分の生活費になればいいかな?


「それじゃ、鹿と猪を」


「「・・・・・・・・・・」」


 鞄から鹿と猪を出すとアインさんとベックさんが目を見開いて固まってしまった。


「あ、あの・・・もしかして買い取れませんか?」


 ひょっとして食用にならない種類だったのかな?と、恐る恐る聞いてみたら


「フゥ・・・・・あのな、坊主・・・猪、タイラントボアはまだいい。が、何だこっちの鹿は!こいつはサンダーボルトじゃねぇか!!こんなもん数年に一度しかお目にかかれねぇ代物だぞ!!」

「マルス・・・こいつは本当にお前が狩って来た物なのか?見た所どちらも傷一つ無く首が折れているだけのようだが・・・・・」


 二人同時に捲し立てられて何方から返答した物かとおろおろとして居たらベックさんに肩を掴まれて前後に揺すられた。


「まだ持ってんだろ?!熊と蜥蜴も有るとか言ってたよな?!こんなチャンス滅多にねぇ!出せ!兎に角持って来た奴全部出せ!!」


「ちょ、ちょっと落ち着いて下さい!出します!出しますから落ち着いてええぇぇぇ!!」


 肩を掴んでいたベックさんの手を振り解き、ハァハァと息を荒げるベックさんと能面のような表情をしたアインさんに見詰められながら鞄の中に手を入れた。


「じゃ、じゃぁ先ずは兎からだしますね?」


「「ブッ!!」」


 鞄の中から出した兎を見た二人が噴出した。あれ?これも珍しい種類なのかな?見た目ロップイヤーの兎なんだけど。


「まさかそう来るとは思わなかったぜ・・・・・」

「ああ、私もホーンラビット辺りが出てくると思っていたんだがな・・・マルス、それは兎じゃない。ファングモールと言う土竜だ」


「も、土竜っ?!これが?た、確かに土の中から出てきましたけど、てっきり巣穴から出て来たんだとばかり・・・・・」


「ま、まぁそいつはそれ程珍しいって訳じゃねぇしな。次は熊を出してみろ」


「は、はい。それじゃ行きますよ」


 ゴクリと唾を飲む二人の前に鞄から熊を出した。


「熊だな」

「ああ、熊だ。間違いねぇ」


 良かった。二人の反応からして如何やら普通の熊みたいだ。


「良かったぜ、変なもんが出て来なくて」

「全くだ。ひょっとしたら俺達とは違う常識の中で生きて来たのかと思っていたぞ」


 あ、アインさん、それ当たらずとも遠からずって奴です。


「じゃあ、最後に蜥蜴を出しますね」


「おう」


 安堵の表情をした二人をみて僕の顔も緩んだ。そして鞄から蜥蜴を出した。


「ハァ・・・・・坊主・・・確かに蜥蜴だ・・・蜥蜴なんだけどよ・・・・・」

「ああ、蜥蜴だ間違い無くな・・・だがこれで別の問題が出来た事も確かだ・・・・・」


「え?あの・・・別の問題って?」


「・・・マルス、一体君は何者だ?見た目十二、三歳の少年がロックリザードを倒した等と誰が信じられるものか!!」

「待て待て。それもだが坊主、これが一匹ずつなんてこたぁねぇよなぁ?他にも食用にならなさそうなもんも有るんじゃねぇのか?隊長さんの話は後だ。先ずはここへ来るまでに狩ったもん全部出しやがれ!!」


 お父さんお母さん・・・修行の旅最初の宿は牢屋になるかもしれません・・・・・

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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