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飛び出した僕を見て騒然となる観客達。舞台の上の覇者はゆっくりと振り返った。
「何だ小僧、勝手に入ってきてはいかん。直ぐに出て行くがいい」
「真羅流師範マルス・ガーランドと言う!貴方との対戦が望みだ!」
「・・・・・ふむ・・・陛下、このように申しておりますが如何致しましょう」
「其方の好きにするがよい」
「ハッ!マルスと言ったな、陛下のお許しも出た事だ胸を貸してやろう。だが、命を落としても知らんぞ」
「自ら戦いを望んだ以上、その覚悟は出来ていますよ」
僕が舞台の端に上がると槍使いの人が舞台から降り、覇者は中央で軽く腰を落とし腰の剣に手を掛けた。反りの有る鞘に納まった刀身は見えないが、パンドラさんが持つ日本刀のような片刃の剣だと思う。
取り合えず様子見だと、警戒しつつ彼に向って歩いて近付いてみた。多分抜刀術だと思うけど、本当に戴した事無いように見えるんだよなぁ。
「ほう・・・無手で私を倒せると・・・あの世で後悔するのだな・・・・・」
殺気を感じるし、呼吸も読める。何でこの程度の人をパンドラさんは選んだんだろう?
「キエエェェェ!!」
彼の間合いに入った瞬間に気迫の籠った叫びと共に鞘から放たれた剣先が迫って・・・って、おそっ!何これ?まさかこれで全力?こんな技で十年無敗とか冗談だよね?あ、僕が子供だから手加減してくれてるのか。
「あのですね、僕が子供だからって手加減はいりません。師範だって言ったでしょう?真羅流と言う武術の皆伝を取ってるんで遠慮はいりませんから、全力でお願いします」
僕の首筋を狙う剣を左手で受け止めて、彼に全力でとお願いすると彼はぽかんと口を開けたまま固まった。
「あの、聞こえてます?」
僕が再度声を掛けると客席が騒然となり、貴賓席に座っていた国王が突然立ち上がって叫びだした。
「こ、殺せえええぇぇぇ!!其奴を生かして返すな!!」
は?え?なんで?
「いえ、僕はこの人と全力で戦いたいだけなんですけど・・・・・」
客席から、東西の出入り口からわらわらと衛士達が向かってくる。僕は半狂乱で騒ぎ立てる国王を見て違和感を感じた。
「あ・・・お前!精神生命体か!!国王の身体を乗っ取りやがって!!それが如何言う事か解ってんのか!!」
「陛下!!お逃げ下さい!!」
「殺せ!!誰でもいい!其奴を殺せ!!殺した者には好きなだけ褒美を取らすぞ!!」
「逃がすかあぁぁぁ!!」
脳内麻薬を分泌させて、舞台から一気に国王の居る貴賓席へと飛び込んだ。
「く、来るなああぁぁぁ!!」
「やば!『深淵門』!!」
とち狂った国王が僕に向けた右掌に魔力が収束していく。僕は咄嗟に闇属性魔法の『深淵門』を目の前に展開した。
「ヒイイィィィ!!」
国王の掌から放たれた炎弾が深淵門に吸い込まれていくと、国王は悲鳴を上げてその場に蹲った。戴した魔力じゃなかったな、まだ比較的若い個体なのかな?
「陛下を放せ!!」
「小僧!貴様自分が何をやっているのか解っているのか!!」
蹲る国王の腕を掴み立ち上がらせようとした時に周囲に居た近衛に囲まれて剣を向けられていた。
「貴方達こそ今の状況は解っていますか?この人の命は今僕の手の中にあるんですよ?それに、貴方達では何人居ても僕には敵いませんから道を開けて下さい」
「グ・・・は、放せ・・・・・」
軽く殺気を放ちながら国王の首を脇に挟み引き摺るように前に出ると近衛達が下がって行く。僕は国王の首を脇に挟んだまま貴賓席を飛び出し、闘技場の舞台の中央へと上がった。
「全員舞台から離れろ!さもないとこいつの命は無いと思え!!」
「グァ・・・た、助けてくれ・・・何でもくれてやる、命だけは・・・・・」
「国王の命を奪っておいて良くそんな事が言えるな?」
僕は国王の首を捻り折り、舞台の上に投げ捨てた。
「「「「「陛下あああぁぁぁ!!」」」」」
「貴様!許さんぞ!!総員突撃だああぁぁぁ!!」
「待った!!こいつをよく見てみろ!・・・おい、何時までも死んだ振りしてんじゃねぇよ!!」
舞台の上に横たわっていた国王がゆらりと立ち上がる。垂れ下がった折れた首がゴキゴキと音を立てて徐々に元の位置に戻っていくと周囲から悲鳴や叫び声が聞こえた。
「クックックッ・・・我は不死身だ、この程度では死なんぞ」
「知ってるよ。でも、不死身ってのは言い過ぎだろ。でなけりゃ命乞いなんかする筈が無い」
「チッ・・・こうなっては仕方ない・・・人の振りはもう止めだ!我はこれより〝神〟としてこの世界に君臨する!!」
国王がその身に隠していた魔力を開放する。その膨大な魔力に人々が平伏す中、僕だけが舞台の中央に立ち、国王を睨みつけていた。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




