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テーブルを挟んで隊長さんと向かい合って座った。
「さて、先ずは礼からだな。良い案を出してくれて有難う。年に一度のお祭りだからと放置していたのは我々の怠慢だった。衛士と言う立場である以上、街で起こる混乱をそのままにして良い筈が無かったのだ」
「いえ、忙しい時期に余計な仕事を増やしてしまったのではと思っていたので、力になれたのでしたら良かったです」
「そう言って貰えると助かるよ。それで、怖がられない方策とか言っていたが説明して貰えるかな?」
「はい。えっとですね・・・・・」
さっき出入り口で衛士さんに説明した事を隊長さんにも説明した。
「はぁ・・・成程なぁ・・・気軽に話せる身近な存在だと思わせる、か・・・・・巡回時の編成も含めて上申してみるとしよう。大変為になったよ、有難う」
「いえ。本当にお役に立てて良かったです」
「それでだ、お礼に武道大会の間、この部屋を自由に使ってくれ。奥の扉を出れば直ぐに観客席にも行けるのだがどうだろう」
「え・・・・・その、流石にそれは悪いですよ」
最悪敵になるかもしれないし。
「遠慮はいらんぞ?この期間この部屋は私以外にだれも使わんし、私も殆ど使わんしな」
ん~・・・如何しよう、あまり固辞するのも悪いし・・・いざとなったら逃げちゃえばいいか。
「・・・解りました、お言葉に甘えさせて貰います」
「街へ出たい時は先程の衛士に声をかければ自由に出入り出来るようにしておこう。何なら私の・・・・・そういえば名乗ってなかったな。衛士隊三番隊隊長のロールズと言う。君は?」
「僕はマルスって言います。ロールズさんですね、親切にして下さって有難う御座います」
「そうか。マルス君、私は指揮を執らねばならんので行くから寛ぐといい」
そう言うとロールズさんは立ち上がって部屋を出て行ってしまった。野宿しなくて助かったけど本当にいいのかなぁ。
部屋の中を見渡し、席を立って奥の扉を開いた。え~っと、ここって貴賓席とかじゃないの?闘技場が見渡せる個室になってるんだけど・・・・・三番隊の隊長ってそんなに偉いのかな?まぁ年に一度の武道大会の会場の警備を任されているんだからそれなりの地位って事か。
部屋に戻って夕食を摂り、床に毛布を敷いて横になった。十年無敗の剣士か・・・楽しみだなぁ、どんな技を使うんだろう。
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「調子はどうだ?ゴルドランよ」
「何時も通りに御座います、陛下」
「そうか、ならば問題無いな」
「それは解りません。私がそれまでの覇者を倒した時のように、何時私を倒せる者が現れても不思議ではありませんから」
「其方は何時もそう言うが、私にはそれ程の者が無名のまま現れるとは思えんのだ。まあ良い、解っておると思うが、強過ぎるようなら消せ。後に其方を超え、この私の生命を脅かすような者ならば躊躇する必要は無い」
「解かっております陛下。私はそのためにここに居るのですから」
「うむ。我が〝神〟とへと至るには今暫く其方の存在が必要なのだ。その時が来るまで頼んだぞ」
「ハッ!」
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「隊長!ロープの設置終わりました!」
「うむ、ご苦労。明日からは観客をここへ誘導する。全員自分の配置と役割を確認しておくように!では、持ち場へ戻れ!」
「「「「「ハッ!」」」」」
「・・・・・さて、上手く行くと良いが・・・クックックッ・・・今年は少々面白い事になりそうだな・・・クックックックックッ・・・・・」
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「ふぁ・・・走り詰めで疲れたし、そろそろ寝よう」
部屋を貸してくれたロールズさんに感謝をして眠りに就いた。この世界で何が起こっているのか知りもせずに。
何故僕はパンドラさんがこの世界を選んだのかを気にも留めていなかったのだろう。そして今回の件の全てが終わってから、僕と師匠を引き合わせた本当の理由を知らされる事になるのだった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




