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宿が空いてないんじゃ仕方ないしと、会場となる闘技場へと向かった。遠目にも解る円形の如何にもな建物だな。
出入口と思しき両開きの扉の前に立つ衛兵に声を掛けた。
「お仕事中済みません、明日から開催される武道大会についてお話を聞きたいのですけれど宜しいでしょうか?」
「ああ、構わんぞ」
「有難う御座います。先ず、入場料は幾らなのかと入場は何時からなのかを教えて貰えますか?」
「入場料は大銀貨五枚、入場開始は日の出と同時だ」
「随分早いんですね。それだけ観戦客が多いって事ですか?」
「まぁそう言う事だ。大勢が押し掛けて来るからな、それを捌くにも時間が掛かると言う訳だ」
「ん?押し掛けて来る?・・・もしかして並んだりしないんですか?」
「並ぶ?整列させると言う事か?」
「ですです。来た順番に何列かに並ばせて順番に受け付けさせれば混乱も無く捌けると思いますけど。ああ、列ごとにロープで区切れば横入りも防げるかと」
う~ん、なんか文化の違いを感じるなぁ。
「ふむ・・・年に一度の事だからと気にも留めなかったが・・・そいつは良い案だな。おい!ここを頼む!隊長に進言しみるよ、有難う」
「いえいえ、こちらこそ忙しいのに教えて頂いて有難う御座います」
別の衛兵がやって来て僕が話し掛けた衛兵が中へと入って行った。
「ちょっとここ借りますね」
「なんだ?何をしている?」
闘技場の壁際にタオルを折って敷き、その上に座ると衛兵が眉をひそめて僕に声を掛けて来た。
「いえ、宿が取れなかったので、ここで夜を明かそうかなって」
「ここでか?この時期は酒場や食堂が夜通し開いているぞ?普通はそちらに行くものだが・・・・・」
「ここなら遅くなって入れなかったなんて事も無いでしょうし、何より衛兵の皆さんが居て安全じゃないですか」
「む・・・確かに。ははは・・・君は面白い考え方をするな。普通は我々を怖がるものだぞ」
「怖がる?皆さんは国民の安全を守っているんですよね?だったら尊敬したり感謝する事は有っても怖がる理由は無い筈ですよ?」
「体格の良い男性が武器を持って集団で目を光らせている。我々が巡回しているだけで身に覚えが無くても問い詰められやしないかと怯えるものなのさ」
「ん~・・・大人数でって言うのがいけないんじゃないですか?後は気さくに声を掛けるのも良いかもしれませんよ?」
「人数が少なければ対処出来ない事も有るだろう?」
「いえいえ、例えば今まで十人だったのを二人組の五つに分けます。そして大通りと隣の路地、更に少し時間をおいてとかにするんです。同時に見えるのは二人ですけど、何かあって笛を鳴らせば直ぐに集まれる範囲に居れば良いんですよ」
「ほう・・・それは面白いな。それで、声掛けとは?」
「店の店主とかに挨拶するだけでも違いますけど、何か気になる事は無いか?とか、何かあったら直ぐに知らせるように、なんて声を掛けていれば『自分達を見守ってくれている』と実感出来る筈です」
「はぁ~成程なあ。君は何処かの商家の出か?随分と頭が良いようだが」
「いえ、うちの父は役場の事務員です。たまたま僕の住んでいる所はこうだって言うだけですから」
「ああ、そう言う所も有るって話か。それで上手く行っていると言うなら試してみるのも有りだな」
「何を試すと言うのだ?」
闘技場の入り口からさっき話していた衛兵さんと一緒に来た人が話し掛けて来た。
「た、隊長!済みません職務中に!」
「構わん。で、彼が面白い提案をしてくれたと言う子か?」
「ハッ!間違いありません!」
「今も我々が怖がられない方策を聞かせて貰っていた所です!」
「そうか・・・君、その件も含めて話が聞きたい。良かったら私と来てくれないか?」
「はぁ、構いませんけど」
隊長さんに連れられて闘技場へと入って行った。長い廊下を歩き、これまた長い階段を登り、更に長い廊下を歩く。何処まで連れて行く気だろう。
「まぁ入ってくれ」
「はい」
闘技場の多分東側にあたる一室に入るよう言われて中に入った。八畳程の広さの部屋の中には椅子とテーブルに机と特に変わった物の無い簡素な部屋だった。
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