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昼過ぎからずっと宴会で飲んだり食べたり楽しい時間を過ごしている内に夜になっていた。大勢での楽しい食事が師匠の所で修行していた頃を思い起させ懐かしい気持ちになった。
あの日、師匠相手に完膚なきまでに敗北し、落ち込んですごすごと帰った僕を皆は如何思っただろうか。
「それじゃ僕は先に休ませて貰いますけど、皆さん呑み過ぎには注意して下さいね」
「がはははは!そりゃもう遅いって。既に潰れてる奴が転がってるしな!」
「・・・マルス君・・・いかないでぇ~・・・うっぷ・・・・・」
「おいおい、主役が居なくなったら盛り上がんねぇだろ」
「あ~済みません。明日の朝一で出ないといけないんで余り遅くなる訳には・・・・・」
「出る?何言ってんだ、討伐報酬とか賞金は如何すんだよ!まだ貰ってねぇだろ!」
「そうだよ、お前大物やってんだから相当な金額貰えんだぞ?」
「ん~・・・まぁそれはまた来た時にカインズさんかアインさんに言えば何とかなるでしょうし、何より間に合わなかったなんて事になったらここへ来た意味が無くなっちゃうんで」
既に滞在費は稼いだし、別に貰わなくても構わないんだよなぁ・・・こっちに永住する訳じゃないし。
「間に合わない?ここに来た意味?なんだ?何か目的が有んのか?」
「ええ、王都で開催される武道大会の覇者に用が有るんです」
「武道大会って今から行ったってもう間に合わな・・・お、おまっ!まさかカチコミ掛けるつもりか!!」
「カチコミって・・・そんな大袈裟な物じゃありませんよ。ちょっと相手して貰うだけですって」
「馬鹿言うな!相手はこの国最強の剣士なんだぞ!!国王の護衛に雇われてんだ!!役職こそ就いちゃいねぇが、それは本人が辞退したからで、本当なら爵位と近衛の地位を下賜されてんだよ!奴と対戦するって事は国王を襲うのと変わらねぇんだぞ!!」
パンドラさんに聞いているから良く知ってます。十七歳で初参戦して優勝。以来十年間その地位を護り続けている人だって。
「でも、武道大会の舞台には上がるんですよね?彼が決勝を終えた後に乗り込んで仕掛けるつもりです」
まぁ取り合えず観戦して強さを見極めてからだけど。
「・・・・・お前なぁ・・・いや、お前なら勝てるだろうけど、その後は如何すんだよ。下手すりゃ衛兵だけでなくその場に居る観客含めた王都民全員敵に回す事になんだぞ?」
「その時はその時ですよ。まぁ何とかなりますって」
「はぁ・・・・・俺みたいなうだつの上がらない冒険者が心配してもしょうがねぇか・・・マルス、無事に帰って来い、俺はここで待ってるから。その時はまた一緒に飯を食おうぜ」
「有難う御座います、ブルートさん。約束しますよ、必ず無事に帰って来るって。その時は僕が奢りますね、賞金とか沢山貰えそうですし」
「カッカッカッ!そん時ゃ奢るなんて言うんじゃなかったって後悔させてやるよ」
「ははは・・・どれだけ飲み食いするつもりですか、お腹壊しちゃいますよ?それじゃ、お休みなさい」
「おう、お休み」
ブルートさんと笑顔を交わし部屋へと入った。一息ついてベッドに腰掛け明日からの予定を立てた。
武道大会は三日間行われ、決勝となる最終日まで残り二十二日。この町から南へ街道沿いに真っ直ぐ行けば付く筈だが、歩いて行けば四十日以上かかると聞いたし間に合う訳が無い。可能な限り走り続け町や村には極力滞在しないで距離を稼ぐ。僕の足と体力なら最終日ではなく初日にも間に合うだろう。
問題は・・・今回みたいにトラブルが起こらないとも限らない・・・いや、パンドラさんが何か仕掛けているかもしれないな。大回りする事も考慮しておこう。その方が無難だしね。
予定、なんて言える程しっかりした物じゃないけど、あの人が係わっている以上臨機応変に行くしかないとベッドに潜り込んだ。自分では気が付かなかったが疲れていたようで、横になって目を閉じると直ぐに眠りに就いたのだった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




