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町に戻ると神様に祝福されたと勘違いした住民達が大騒ぎをしててですね、アインさんとは途中で別れたんだけど、ブルートさんのパーティメンバーと昨夜泊まった宿に向かう最中に僕が敵のボスを倒したって触れ回ったもんだから、そりゃもう大変な目に遭うかと思われたんだけど、ブルートさんのパーティメンバーに囲まれていたので宿までの道は事なきを得た。
で、今現在宿屋の一階にある食堂で宴会中です。僕は未成年なのでお酒は飲んでませんよ?
「いや、もう本っ当に凄げぇんだよ、こいつは」
「そうそう、まさに目にも止まらぬ速さって奴でよ、離れた所に居た俺達でさえ何やってるか解らなかったんだからな」
「あっと言う間に魔物が切り裂かれて吹き飛んで行くんだぜ、正直自分の目を疑ったぜ」
僕の正面はブルートさん。その両脇はパーティメンバーのケインさんとメンディさん。
「へ~・・・坊やそんなに凄い人だったんだねぇ。うちみたいな安宿に泊まってくれて光栄だよ」
戦闘の様子を知らない人達が僕達のテーブルを遠巻きに囲んでブルートさん達の話を聞いて頷いていて
「はい、マルス君」
「こっちもど~ぞ」
「あ、あの・・・自分で食べられますから・・・その、腕を離して貰えませんか?」
僕はブルートさんのパーティメンバーのメイリーさんとマリエラさんに挟まれて身動き出来なくなっていた。
「いやぁ~ん、照れちゃって可愛い~」
「いや、ほんと勘弁して下さい・・・・・」
抱き着いて来たり頭を撫でたりするのは勘弁して欲しいんです。覗き見している人が録画して師匠の家で上映会なんかされたら・・・スズちゃん達に軽蔑されちゃうかもしれないんです。
僕にとって師匠の家は第二の故郷なんです。皆に冷たい態度を取られたら僕は一生落ち込んだまま立ち直れそうにないんです。
「ぶ、ブルートさん助けてぇ~!」
「がはははは!!魔物相手にゃ滅法強くても女は苦手ってか?お前等その辺にしといてやれよ、しつこい奴は男でも女でも嫌われるぜ」
「「はぁ~い」」
助かった・・・けど、顔を覗き込むのも止めて欲しいなぁ・・・・・
「それにしても最後のアレは特に凄かったな・・・・・分身出来る奴なんて初めて見たぜ」
「あ~あれな。全方位からの攻撃を一人で出来たら無敵だろ」
「だよなぁ」
「・・・・・そんな事無いです・・・あれじゃダメなんですよ・・・あの程度じゃ師匠には掠りもしないんです・・・・・」
「「「「「は?」」」」」
「おいおい、冗談は止めてくれ。俺には全方向からの同時攻撃に見えたぞ?あんなの如何やって交わすってんだよ」
「あれを交わすって、お前の師匠ってのは本当に人間か?」
「いやいや、流石に掠りもしないってのは言い過ぎなんじゃねぇの?」
「ええっとですね、この上着は免許皆伝の証なんですけど、免許皆伝の条件って言うのがあの技の元になってる『朧』って言う技が使えるようになる事なんです。十日程前の事なんですけど、魔力を使わないって言う条件で師匠と対戦しました。お互いが同時に『朧』を使ったんですけど・・・完敗でした。師匠は態と僕の間合いに入るまで攻撃して来なくてですね、僕が攻撃しようとした瞬間に・・・・・消えました」
「は?消えた?」
「はい、消えたんです。視界からだけじゃないですよ?気配も何もかも、存在そのものが感じられなくなって・・・・・横から頭をポンって叩かれて終わりですよ。正直そこそこ戦えると思ってたんですけど、間違いでした。師匠が本気だったら僕は今ここに居ないでしょうね」
身長差が30cmも有るから、勝てない事は解っていた。だけど・・・あれは無いだろ、冗談抜きでトラウマだよ。
「・・・・・はぁ・・・世界は広いな・・・そんな奴がいるなんて思いもしなかったぜ」
「それで五日程落ち込んでたんですけどね、日が経つにつれて悔しくなってきて・・・師匠が衰える前にもう一度再戦したいなって・・・・・次は魔力有りで、お互い全てを出し切って戦えるようになりたいなって・・・そう思って旅に出たって訳です」
「凄げぇ・・・凄げぇよお前・・・・・そんな雲の上の人と戦いたいなんて普通思わねぇって!!」
「だよなぁ。俺だったら二度と戦おうなんて思わないし、冒険者も辞めてるかも」
「俺、今日お前と知り合えて・・・一緒に戦えた事誇りに思うよ!」
「あたしも・・・戦う事を生業にしてる人なら皆尊敬するって!」
大勢の人が共感してくれて凄く嬉しかった。来て早々色々有ったけど、旅に出て良かったと心の底からそう思えた。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




