106
兵士達と廊下を進んだ先で大きな両開きの扉の中に通され、五十人からの兵士が並んだ赤い絨毯の上を進んだ。
「こちらでお待ち下さい」
伝令の隊長に言われて立ち止まり、正面の三段高い所にある空の椅子を見上げた。
「フェリング・ブランデル国王陛下が参られました」
見上げた椅子の向こう側から数人が来るのを感じる。
「国王陛下の御前だ!控えよ!」
と国王らしき男とやって来た騎士っぽい奴に言われたが無視してやった。近衛?五名に宰相か大臣か知らん奴に国王か。まぁ普通だな。
「・・・・・バレリー領にて武術指南役を任されている真羅流師範のマルス・ガーランドだ。俺も暇じゃないんでな、用件を聞かせて貰おうか」
「なっ!貴様不敬であろうが!!」
「国王陛下に何たる無礼だ!」
「これだから平民は・・・・・」
「何と野蛮な・・・・・」
「喧しい!!俺に用が有るのはどいつだ!無関係の奴が口を挟むんじゃねぇ!!」
取り敢えず名乗っておくかとぶっきらぼうに挨拶をしたが予想道理の反応で有難いと、更に煽ると最初に控えよとか抜かした近衛の男が釣られやがった。
「何だと!貴様!何様のつもりだ!!」
「てめぇか、俺に用が有るってのは?聞いてやるから言ってみな」
用が有るのは隣の椅子に座ってる奴だってのは解っちゃいるが、未だに何も口に出しちゃいないし、見せしめと言うか生贄はこいつで良いな。
「ふざけるな!若造が調子に乗りおって!この私が成敗してくれる!!」
「あ?要するにてめぇ等はこの俺に喧嘩を売るために呼び出したんだな?舐めた真似しやがって!一人残らず叩き潰してやっから掛かって来いや!!」
「「「「「ヒッ!!」」」」」
俺の両脇に居た伝令の連中が短い悲鳴を上げ、頭を抱えて蹲る。壇上に居た男が腰の剣に手を掛けて降りて来た。
「キエエエェェェェ!!」
男が腰の剣を抜いて切り付けて来た。遅過ぎてあくびが出るぜ。
「で、これで終いか?」
「ぬおっ!は、離せ!なあっ?!」
俺は刃を素手で受け止めるとそのまま刃を握り潰してやった。安物だな、数人切ったら使い物にならなくなるだろこんなの。
「団長御下がり下さい!!」
「グハッ!」
団長と呼ばれた男の腹を殴りつけて吹き飛ばす。取り敢えず自分の仕出かした事の責任は取って貰わねぇとな。
「逃がす訳ねぇだろ、馬鹿かお前等は?さて・・・こいつが団長って事はだ、この国はこの俺に宣戦布告をしたって事で良いよな?よく聞け!貴様等に時間をやる!!俺は昼過ぎにこの街の南門から攻め込み王宮を落としてみせる!!止められるもんなら止めてみやがれ!!」
「き、貴様何を考えている・・・・・」
今度は壇上で団長の反対側に立っていた宰相だか大臣だかが腑抜けた事を聞いてきた。
「あん?そっちから喧嘩売っといて何言ってんだ?戦争に決まってんだろ戦争に。真羅流師範対ブランデル王国軍の一戦だ、しっかり準備しとけよ。じゃあな」
言うだけ言って昨夜泊った山に転移で飛んだ。さて、昼まで何して過ごそうかな。
*
*
*
「ぶははははは!いやぁ、やるねぇマルス君」
「笑い事じゃねぇ!何なんだよこれ!何で戦争なんて話になってんだ!」
「まぁそいつは今から説明するよ。あのな・・・・・」
パンドラからブランデル王国の現状を説明して貰った訳だが、また転生者が絡んでやがった。
「まぁお前等が出て行きゃ大抵の奴は問答無用で言う事聞くから大丈夫だろうけどよ」
「ご安心下さいジン様。私達で無事に収めて見せますから。それよりこちらの試食をお願いします、次にお爺様がいらした時にお出ししたいのです」
こいつ等が祖父と慕う程の人格者か。マルスは良い主を見つけたな。つーか前世でも主だったとか間違い無く何がしかの〝力〟が働いてるだろ。
「はいはい・・・・・ふぅ~ん、旨いじゃん。杏のジャムが手に入るならライエルの店で出したい位だ」
「良かった・・・・・」
「さて、昼まで時間も有る事だし・・・ジン、お前の話って奴を聞こうか」
「おう。率直に聞くぞ・・・お前が五百年前に元錬金術師を封印して手にした〝この世の理〟ってなんなんだ?」
「ぉ・・・・・お前そいつを何処で・・・・・」
おそらくは〝大いなる存在〟と呼ばれる神の如き存在の核心に触れる質問だろう事は解っていた。だが、こいつを聞かない事には俺の中で膨れ上がる不安は解消されないだろうと、消される事も覚悟した上でパンドラを問い質した。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




