103
「それでは行って参ります領主様」
「うむ。吉報を待っておるぞ」
「はい。必ずや成し遂げて参ります」
「覚えておれ!エルドラ―――」
手足を縛られた連中が悪態を付き始めたのでさっさと転移で飛んだ。
取り敢えず以前スズちゃんと行った事の有る北の街を見下ろせる丘の上に到着。ここからは短距離転移で北上だ。
「「「「「おえええぇぇぇ・・・・・」」」」」
「うわああぁぁぁ!!」
さて次の目標はと、北を向いた直後に直ぐ横に居た連中が一斉に吐きやがった。危ねぇなぁ掛かったら如何すんだよ。
「ハァ・・・悪いがあんた等に掛ける情けも余計な時間も無いんだわ」
「ま、待って―――」
青い顔をして蹲る連中に一言だけ告げて容赦なく転移で飛んだ。
*
*
*
空を飛ぶとは如何言う気持ちなのだろう
物心付いた頃から自分の生れついた立場が嫌だった
貴族家の嫡男という重責から逃れたくて何度も家を飛び出した
だが一人で、家の力無くして外の世界で生きて行く事等出来ないと知り諦めた
国の為、国を支える友と共に戦うのも良いと思えるようになったのは何時だっただろうか
辛く先の見え無い、勝ち目の無い戦いに疲弊して行き、時間だけが過ぎて行く
力が欲しかった。全てを覆す理不尽な力を欲していた
そしてそれは現れ、私は、私達は救われた
長く辛い人生の終盤に相応しい平穏な時が訪れ、ふと子供の頃の記憶が蘇った
「・・・・・空を・・・空を飛ぶと言うのは如何言う気持ちなのだろうな・・・・・」
「何だ?飛びたいなら飛行船でもなんでも用意してやるぞ」
自由になりたかった。権力等かなぐり捨てて自身の力だけで生きて見たかった
奔放に振舞う彼を見て羨ましかったのだと思う。だが、それは私にとって過ぎた力でしかなかった。だから―――
「・・・・・いや、遠慮しておこう。知らぬ方が良い事も有るのでな」
と彼に答え、私の人生は然したる不満無く終わりを告げた
筈だった
いや、生まれ変わったが人生ではないか。竜に生まれ変わっていたのだから
確かに望んでいた物は手に入った。権力なんぞ下らないと思える程の圧倒的な力が
だが、それも一人では何の意味も無い。守るべき者も無ければ戦うべき相手も居ない。力を振るうのは腹が減った時位だ
人々は私の姿に恐れ逃げ惑い、会話をする事すら儘ならなかった
山奥に潜み、食事と睡眠だけを繰り返す。そんな退屈な日々を過ごしていた時だった。彼が現れたのは
生まれ変わってから初めて真面に会話を楽しんだ。旨い食事にもありつけた。だが、彼は人では無いと感じていた。前世で敵だった精神生命体だと
人の身体を乗っ取り、人に害を成す存在だ、躊躇などしなかった
『ふん・・・如何あっても正体は見せぬか・・・・・ならば消えるがよい・・・此度の目覚めは中々良い物であった。それだけは礼を言うぞ、ジンよ』
殺す気で放った炎を受け彼は正体を現した。だがこれは借り物の力だと彼は言った
精神生命体との共存。前世で聞いた話と違っていてふと気が付いた。精神生命体であっても〝人〟と同じなのだ。彼も言っていたではないか『見た目だけで判断するな』と
その後はジンと全力で殴り合った。私が飽きるまでジンは付き合ってくれて嬉しかった
彼に付いて行く事に決めたのには明確な理由が有る。前世と今世で二度も強大な〝力〟を持った男に出会った。これには何か意味が有るのではないか。そして彼の手の届かない所は私が手助けをする。それこそが私に与えられたこの世での役割なのだとそう感じた
最も直ぐに別れる羽目になってしまったが・・・・・
だがそれも些細な事だった。僅か五年で再会を果たしたのだ。この男の帰る場所を護る。この頃にはそれが私の至上命題になっていた
私の判断は間違っていなかった。彼が自由に戦える状況を整える事であらゆる問題は解決して行き、あっと言う間に世界に平穏が訪れた
そして―――
「へぇ~・・・カルヴァドスって言うのか。俺はパンドラってんだ、これから宜しくな」
懐かしい顔に声。あれからどれ程の時が経ったのかは解らないが前世での恩人と再会した
「うむ。名はジンより貰った物だが気に入っておるのだ。こちらこそ頼むぞパンドラよ」
「ははははは・・・お前面白れぇ奴だな。俺が怖くないのか?お前なら俺が如何言う存在か気が付いてるだろうに」
怖がる訳がない。私はジンよりも其方の事を知っているのだから。だが今の私はカルヴァドスであってジェラルドではないのだ。だからその時が来るまで何も知らない振りを続ける。今の私の力が必要な事態。恩を返すその時まで
何よりもその方が面白そうであろう?その時彼がどの様な顔をするのか今から楽しみであるな
ここまで読んで頂き有難う御座います。




