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パンドラさん達からの協力を取り付けた翌日。トーラン様が午前の訓練を見学する事に。
「マキシマ流の型を見るのは久しぶりですが、何度見ても不思議な型ですね」
「とても戦えるようには見えないですよね」
「あ、いや、そう言う意味では・・・・・」
「いえ、僕も非難するつもりで言った訳では有りません。実際に師匠にそう言ってコテンパンに伸されましたから、そう思うのは不思議な事では有りません」
「そ、そうですか・・・・・」
「子供の頃の話ですけど、同年代の男子に負けた事が無くて調子に乗ってたんです。それで師匠のお嬢さんに負けて鼻っ柱を折られたと言う訳です」
「良い負け方を、経験をした事で今が有ると言う訳ですか」
「ええ、こうして師範として指導出来るのも、あの敗北あっての事だと感謝しております」
トーラン様と顔を見合わせ笑い合い昼食の為に食堂へと向かうと、厳しい表情をした領主様とその斜め後ろに立つ見た事の無い人が居た。
「な、何故・・・・・」
僕の隣に立つトーラン様の顔色が見る間に変わって行く。何者か知らないけど偉い人らしいので取り敢えず挨拶位はしてやるか。
「お初にお目に掛ります。バレリー領にて衛士隊武術指南役を仰せ付かっておりますマルス・ガーランドと申します。以後お見知りおきを」
「フン・・・・・貴様のような子供が使徒の弟子とはな。まぁよい、其方には召喚命令が出ている。今から我等に付いて王都まで来て貰おうか」
返事が来るまで後二、三日掛かるって聞いてたんだけど、こいつ等馬で飛ばしてきたのか。
「ふむ・・・領主様、ご命令を」
「其方の好きにして良いぞ」
「了解致しました」
領主様から了解を得たので転移で名も知らぬ男の背後に飛び、後ろ手に隠していたナイフを取り上げ床に組み伏せた。
「グアッ!離せ!貴様あぁ!自分が何をやっているのか解っているのか!!」
「勿論ですとも。名も知らぬナイフを持った男から自分の主を守っただけですが、何か問題でも?」
「ふざけるなああぁぁぁ!!貴様!私を誰だと思っている!!」
「だから知りませんって。僕にとっての主はエルドラ・バレリー様だけなんで、貴方や奥の扉の向こうで武器を構えて隠れている人達も、更に言えばこの国の国王陛下も如何でもいい存在なんですよ」
「なっ?!貴様国王陛下に逆らう気か!!」
「何を言ってるんですか?勿論主の意向に沿うに決まってるじゃないですか。まぁ取り敢えず貴方は少し眠ってて下さい。喧しいし他の連中も片付ないといけないんで」
「カハッ!」
取り押さえていた男の首を軽く締めて気絶させ、転移で隠れている連中の背後を取って気絶させた。碌な反応すら出来ないとはね・・・弱い、弱いなぁ~・・・多分伝令とか斥候部隊なんだろうけど、この程度じゃ全員で戦っても猪位しか倒せないぞ。対魔物の防衛は冒険者任せなのか?
「終わりました。ボーロさん、全員を拘束しておいて下さい」
「ハッ!」
「さて、これで我等は逆賊となった訳だが、今後の方針をもう一度確認したい。トーランよ、ルクサイア家は如何する?今ならまだ間に合うぞ」
「いえ、こちらから持ち掛けた話を反故にする事は出来ません。我々もバレリー領と共に戦い、独立を勝ち取って見せます」
「そうか、その言葉信じよう。尤も、戦において我等の出番はなさそうだがな」
「は?」
「では、後の事は私にお任せを。可能な限り犠牲者を出さずにブランデル王国から独立を認めさせて参ります」
「うむ、頼んだぞ」
「お任せ下さい。ボーロさん、拘束し終わったら全員を起こして下さい」
「は?一体何をするつもりなのですか?」
「やだなぁ、さっきそいつが言ってたじゃないですか『我等に付いて王都に来て貰おうか』って」
「て、敵陣に乗り込むのですか・・・・・」
「ええ、この程度の連中なら何人集まっても僕を止める事なんて出来ませんから。さっさと行って全て終わらせちゃいましょう」
数千人からの兵士を相手にする事になると言うのに、ちょっとそこまでと言った感じで軽く言う僕に驚愕の表情を向けるトーラン様とボーロさんだった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




