09
「頭は潰した!ここからは掃討戦だ!一匹たりとも逃がすんじゃんぇぞ!!」
「「「「「おおおぉぉぉぉ!!」」」」」
指揮取る奴が居なけりゃ後は何時も通りだろうから大丈夫だろうと、魔力と本能を体の奥へと抑え込むと隠蔽魔法が効き始め元の姿へと戻って行った。
「・・・・・・・・・・は・・・恥ずかし過ぎる・・・・・だから嫌なんだよ解放するのは・・・・・」
倒したオルトロスの上に座って両手で真っ赤に染まった顔を覆った。あんな風にかっこつけて腕を上げるなんて僕らしくない・・・・・
「でも・・・あれも僕・・・って言うか獣人としての本性なんだよなぁ・・・・・」
最後に放ったあの技『朧連撃』が不完全だったのも感情を抑えきれてないからで、アレを完全に制御出来ないと師匠には通用しないだろう。師匠の『朧』なら全弾交わしちゃうと思うし。
どれだけ鍛えても『あの完璧な『朧』を超える事なんて出来るのか?』と言う疑問と不安が常に付き纏う。それでも師匠が衰える前に再戦して勝利したいと言う気持ちの方が強かった。だから修行の旅に出る事を決めたんだ。
溜息を付いて顔を上げると掃討戦も終わっていて、北門が開いてアインさんがこちらへ向かって来る所が見えた。
「お疲れ様。大活躍だったな、怪我は無いか?」
「アインさんもお疲れ様です・・・その、済みませんでした。怒鳴っちゃったりして」
「いや、君のお陰で自分の未熟さを痛感したよ。疲れただろう?後片付けはこちらでやるから町へ戻ろう」
倒した大量の魔物は冒険者ギルドで買い取り、戦闘参加者達の貢献度に応じて報酬として支払われるのだそうだ。
アインさんと町へと向かうと衛士と冒険者達が迎えてくれた。
「お疲れさん!あんた凄げぇよ!」
「最高にカッコ良かったぜ!今日の事は一生忘れねぇ!!」
「何で戻っちゃったの?あっちの方が良かったのに・・・・・」
「皆さんもお疲れ様です。あ、ブルートさん!大丈夫なんですか?」
「これ位なんて事ねぇよ。それより子供扱いなんてして悪かったな、あんた凄げぇ奴だよ」
冒険者や衛士達に出迎えられ揉みくちゃにされていた時だった。突然空から七色の光が降り注いだんだ。
「な、なんだなんだ!」
「何が起こってんだよ・・・・・」
「なんだよこれ・・・・・」
歓喜に沸いた北門前の雰囲気が一転し不穏な空気が立ち込める中、戦場だった平原の中央に光の柱が立ち上がり、その上空に光を纏った白装束のファントムマスクを付けた男性が現れた。
『良くぞこの難局を乗り越えたな、ノルドの民よ・・・・・』
その男性が放つ神々しい光と膨大な魔力にその場に居た人達は皆平伏した。僕を除いてだけど。
「・・・・・何やってんですか・・・貴方は・・・・・」
仮面を付けているので顔は隠れているけど間違い無くパンドラさんだった。
『此度の功績を称えてこの町に平穏を授ける。これより百年間はこの町が魔物の襲撃に会う事は無い。衛士隊隊長アインよ立つが良い』
「ハッ!」
『其方にこれを授ける。これを町の中心に設置し、代々護り続けるのだ。さすればこの町の平穏は約束されよう。その為に其方がせねばならぬ事は・・・解るな?』
「ハッ!奢る事無く精進し続け、後進を育て護り抜いて行く事を誓います!」
『うむ・・・この地に住む者達に祝福を!!』
天空から光の粒が舞い降りる。アインさんの手には赤い光を放つ石の嵌った一本の杖が握られていた。あれって魔物除けの魔導具だよね?魔の森を囲んで魔物が外に出ないようにしてる奴。
僕が唖然としている間にパンドラさんは消えていた。長居して僕に話し掛けられたら不味いからだろう。
この日の出来事が広まって行き、ノルドは『神に護られし町』としてその『神器』を一目見ようと押し掛ける旅行者が後を絶たず、大陸一の観光地として有名になって行くのだった。
僕は誇らしげに杖を握るアインさんを見て『この人も巻き込まれちゃうのかなぁ』なんて、同情の目を向けるのだった。って言うか、ここまでが全てあの人のシナリオ通りだったんだろうなぁ・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。




