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霊感小女 〜アヤミの物語〜  作者: じゅんとく
7/12

過去 〜吉原夫妻

〜半年前


吉原夫妻…


その日、吉原夫妻が施設に訪れた。福祉関係の人達から里親になれる資格を承諾を得て、番近くの施設を見に来たのだった。


吉原夫妻は施設の子供達を見ている中、独りぼっちでベンチに座っている彩未を見付けた。

彩未は周りから周囲から気味悪がれている事に絶えれ無かった。その上…霊感体質である為に、常に姿無き者に付き纏われる事等…精神的に疲弊していた。自分が居なくなれば、誰も困らなくて済む…。そう思い始めて、彩未は人が見て居ない場所に行き、カッターで手首を切ろうとしていた。それを見ていた吉原婦人が彩未の側へと向かう。


「こんにちは」


吉原婦人が彩未に声を掛ける。


「こ…こんにちは」


突然、声を掛けられて彩未は少し驚いた。カッターをポケットの中に入れた。


「今日も良い天気ね」

「そ…そうですね」


彩未は1人になりたかったので立ち上がる。


「すみません、ちょっと急用があるので失礼します」


そう言って吉原婦人から離れた彩未は、トイレの洗面所に行き、ポケットに入れたカッターを取り出そうとしたが…ポケットの中に入れた筈のカッターが見当たらなかった。


「お探し物はこれかしら…?」


吉原婦人がカッターを手にして彩未の前に現れる。呆気にとられた彩未は何も言い返せ無かった。


「トイレの洗面所に行く事が急用だったの?」

「お願いですから…私に付き纏わないで下さい。里親探しなら、もっと他の子達の方が良いですよ」

「そうかもしれないわね、でも…私は貴女の事が気になるのよ。どうして貴女は自分から逃げているの?」

「私は…別に逃げてはいないわ」

「いいえ、逃げてるわ。貴女は…心にも体にも大きな傷があって、それが全て自分のせいだと思っているわね」


その言葉に彩未は驚いて、吉原婦人を見た。


「何故…分かるの?」

「貴女は嘘を吐くのが下手だからよ。本当は素晴らしい物を持っているのに、それを活かせなく悪い方へと押し込んでしまっているのよ。だから周りにも本当の自分を見せる事ができず自分の殻に閉じこもっているのよ。それにね…私にも貴女と同じ物があるのよ、私は霊とかは見えないけど…人が持つオーラを見る事が出来るのよ。貴女のオーラはとても素晴らしい物よ」

「私は…自分が嫌いです。普通の女の子に生まれたかった…そうすれば、こんなに悩む事もなかったのに…」


「だったら、本当の自分を磨き上げて見せなさい。きっと貴女を必要としている人がいるから…その人達の為にも自分を変えていくのよ」

「自分を変えるの…?」

「そうよ、いきなりは無理でしょうから…少しずつ変えていくの…そして貴女自身が背負っている物、その体の傷はきっと貴女にとって生きた証になる筈よ」

「生きた証…」


その時、遠くで声が聞こえて来る。


「おーい、春子ー…」

「はーい」


吉原の主人が見えた。


「今日は、これで失礼するわね」

「あ…あの、叔母さん」

「どうしたの?」

「私と一緒だと何かと大変かもしれないけど…構わないですか?」

「平気よ。私もね…昔同じ事を言った事があるのよ、それが今は…私にとって1番大切な人になったのよ」


春子がそう言った後、吉原の主人が現れて春子は笑う。


「こちらは私の主人、哲夫っていうの」

「よろしく」


哲夫が彩未に向かって挨拶をする。


「は…はじめまして、滝川彩未と申します」


哲夫は春子から話の一部始終を聞いてから彩未に向かって言う。


「一緒に来るかね?君が背負っている物からすれば、気休めにしかならないが。それでも…と思えるならば、我々は何時でも歓迎するよ」


その時、彩未は「ありがとう」と、だけ答えた。彼女の返事は数日後、吉原夫妻の元に届いた。



彩未の返事と共に吉原夫妻が正式に里親になり、養子縁組を決めて姓も滝川から吉原へと変わり彩未は施設を離れる事になった。施設を離れる時、皆から別れの言葉を沢山頂いた。


しかし…彼等が最初に住んでいた家を見て彩未は「怖い…」と言って家に入るのをためらった。

夫妻が彩未を説得して、何とか家に入れた。しかし…同時に、それまで穏やかだった家の中が騒がしくなり出して来た。

勝手に部屋のドアが開いたり、誰も居ない筈の廊下で足音が聞こえたりする。

更に彩未も2階で寝ていた筈が、朝には居間にいたり。何物かに叩かれた様なアザが背中などに複数見つかった。


ある日の事だった。皆でテレビを見ている時に彩未は耳鳴りがした。ピーと言う音と同時に頭がクラクラして、気が付くと吉原夫妻の姿が消えていた。周りを見渡すと誰かが彩未を見ている。追いかけて行き部屋の奥へと向かうと、その人物は蹲って彩未を見て言う。


「あなたは誰?」

「僕はタカシって言うんだ。叔父さんと叔母さんに、さよならって言ってくれる?」

「うん、分かった」


それと同時に現実に戻された彩未は、ハッと周囲を見渡すと春子が側に立っていた。


「どうしたの、突然こんな場所まで走り出して」

「叔母さん、タカシ君って子が…さよならって言ってたよ」

「え…タカシって、ウチの従兄弟の?」


叔父も話を聞いて携帯電話で確認をして夫妻は驚いた。従兄弟の子供が事故に逢って、つい…先ほど息を引き取った…との事で、これから連絡する予定だったと言う。

彩未の並外れた霊感に少し驚いた春子は、彼女が家に来てから、これまでの出来事を真剣に考えて霊能者からお守りとして数珠を頂き、それを彩未に送った。彩未は数珠を左手首に巻いて、常に手放さない様にした。そして夫妻は引っ越しをする事に決めた。


引っ越しをする時に新しい学校に転校する事にもなった。彩未は新しい学校での1つの目標として、普通の女の子で通う事を決意した。

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