過去 〜高学年
〜1年前
養護施設…
両親の突然の別れで1人きりになった彩未は、自分の引き取ってもらう身内が無く。施設で過ごす事になった。
彩未は施設に入る事になった為、今まで通っていた学校を転校する事になり…施設から近くの学校「市立見山小学校」に通う事になった。
施設に入って周囲の子供達とも仲良くなったが…それと同時に不可解な出来事にも遭遇し易くなり始めた。不思議な物音や発光現象が施設で目撃される様になり、子供達の間では、彩未が来てから、おかしな事が起き始めた…と、噂される様になった。
特に女子達の間では不思議少女と言われる様になった…。共同風呂で彩未が風呂に入る時に彩未の体にある無数の切り傷やアザを見て皆は怖がった。虐待を受けて体に傷が残っている子も居たが…そんな子供達よりも目立つ傷があったからだった。
彩未が学校のトイレに入っている時の事だった。同じクラスの子と施設の子がトイレに入って来て、お喋りしていた。
「そう言えばさァ…彩未ちゃんって一体何なの?」
「何が…?」
「あの子…水泳には絶対入らないし、身体測定も彼女だけ別に受けていてさ…何か特別扱いされているよね。夏でも長袖着てるし…髪も異常に伸ばしちゃってさ」
「ああ…あの子の体見て無いんだ」
「何かあるの…?」
「体中に傷がたくさんあるんだよね」
「え…もしかして虐待されてるの?」
「施設じゃあ、そんな事無いよ」
「じゃあ、何?」
施設の子が声を潜めて言う。
「あの子ってさ、どうも霊とかに取り憑かれ易いのよね…それが原因とか言われているのよ。あの子がウチの施設に来てからさ、本とか食器とかが宙を飛んだりして、あの子と一緒に寝る子は皆、夜中に白い影とかを見るって言うのよ。だから…あの子と寝るのは、ある意味ハズレクジに当ったって言うのよね。まあ…彩未ちゃんのおかげで、ウチの施設の子は皆、心霊体験済みになったけどね」
「ふうん、そうなんだ」
「あとね…噂だけど…」
「なになに…?」
「彩未ちゃんってさ、幽霊にエッチされてた事があるって噂らしいの…だから初体験も幽霊で済ませているらしいの…」
「え…何それ、じゃあ…もうアッチは大人なんだ」
「うん、そうらしいよ。でも…あんまり彼女の前で下手な事言わない事よ、何されるか分からないから…あとね、彼女と一緒にいると、霊に襲われたりするから気を付けた方が良いわよ」
「分かった気をつけるよ。皆にも気付かれないように伝えておくね」
そう言って女子達が出て行ってから彩未は1人悲しく泣いた。体が震えてトイレから出て教室に戻るのが怖くなった。
ある日の事だった。施設でリーダー的な人物が学校帰り、彩未を連れて学校の近くの廃墟に肝試しさせようとする。皆が彩未の霊感体質がどれ位なのかを試して見たかったからである。しかし…彩未は必死に抵抗した。
「何だ、怖いのか?」
「とても怖いわ…帰った方が良い。ここは危険過ぎるよ」
他の子供達には廃墟にしか見えなかったが…彩未には、おぞましい物が見えていて、体の震えが止まら無かった。
子供達が先に廃墟の中を探索している時に、外で待っていた彩未が危険を感じて、廃墟の中に入り皆に退散させる様に言う。
その瞬間、建物の中が大きな音ともに崩れ落ちる。子供達が皆逃げ去る中、彩未の体に衝撃が走る。激しく転倒した彩未は起き上がる直前、うっすらと見える人影が彩未を狙って来た。彩未はランドセルを前に持ち変えて上手く交わす。その瞬間、ランドセルが切り裂かれ、筆箱や教科書が散乱した。
ホッと安心して廃墟から出ようとするが…右足が負傷していて上手く立ち上がれなかった。更に右の額も怪我して、血が流れ目に入って視界が上手く見えなくなっている。
(急いで逃げなければ…)
そう思ったが、体がよろけて上手く起き上がれない。
瞬間、背後から爪の様な物で肩から背中の近くまで切り裂かれた。
「ギャアー!」
激痛が走り、白い衣服が紅く染まる。
「ううゥ…」
体中に激しい痛み走り、涙が溢れて…立ち上がる力さえ失われた彩未は、意識が失いそうな中を必死に体を引きずりながら何とか廃墟の外まで出て行く。辺りは雪に覆われていた。幼い少女の体から流れ出る血が雪原を紅く染める。
逃げ出した子供達が何処にも居なかった。
弱りきったは彩未は意識が遠くなり、自分も両親の処へ行くのかな…と思った。
誰かが、彩未を呼び付ける。施設長に似た人が必死に呼び掛けていた。
気が付くと彩未は病室のベッドの上にいた。傷の手当てが終わり。体中包帯だらけの状態だった。
逃げ出した子供達が全員彩未の前にいた。
後で知った事は、彩未が全員逃がしたあと、子供達が施設長に言いに行き彩未を助けにお願いしたのだった。
彩未の体の傷、特に左肩の傷は深くて治り難いと言われた。しかも傷の影響で左手が上手く動かなくなった。
約1カ月の入院生活の後…彩未は施設に戻る事が出来事たが…彩未は体に新しい傷を増やしてから更に周りの子供達との距離を開いた様に感じた。