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霊感小女 〜アヤミの物語〜  作者: じゅんとく
5/12

過去 〜低学年

~3年前

小学校 低学年


小学生になって、自分の身の周りで不可解な出来事が日常茶飯事起きていると、彩未自身も学習して霊の存在を見極める様になり少し落ち着き始める。

ある日、玄関のチャイムが鳴った時、友美が急いでドアを開けようとするが…彩未が母を止めて言う


「出なくて大丈夫、人間じゃないから」

「え…?」


そう言われて玄関を見ると人の姿がなかった。後でモニターを確認しても、玄関のチャイムが鳴った時、人の姿が映って居なかった。

夕食時、3人で食事をしている時…。家の天井からドスンとか、バンッと大きな音が聞こえた。


「な…何、今の音?」


両親が不安そうに天井を見ると、1人落ち着いた彩未は平然として言う


「気にしなくて良いよ、私達をからかっているだけだから…」

と、1人食事を続ける。


そんなある日、教室の友達が休み時間に話をしていた。


「この教室って・・・何かへんよね?他の教室では絶対に有り得ない事が起き過ぎているわよ」

「分かるわ、ロッカーの蓋が突然全部開いたり、誰も居ないのに教室の電気が点いたり消えたりするのよね」

「あと・・・窓で人影が走ったりするのを見たって言う子もいるし、風も無いのに突然プリント用紙が全部舞い上がったりするし…」


彩未は出来るだけ大人しくしようとして居たが・・・周囲からの噂の矛先が自分に向かわれ始めるのに気付く。


「僕は知っているよ、教室に霊感の強い子が居るからだよ」

「誰よそれは?」


その男子は彩未を指して


「あの子が原因なんだ、あの子と一緒に保育園にいた時は毎日変な出来事が起きていたんだよ」


周囲の視線が自分に向けられると、子供達が彩未の周りに集まる。


「ねえ彩未ちゃん、あなたって霊感あるの?」

「え…私は、全然・・・普通の女の子…だと思うわよ」

「そう言えば、彩未ちゃん…たまに誰も居ないのに、誰かと話しているよね?」

「あれは…その、独り言…それに学校には霊感の強い人が居るわよ」

「あなた以外で誰が霊感があるの?そんな人どう言う風に分かるのよ」

「そうね…たとえば…」


彩未は、黒板の近くに居る霊を見付けて、黒板の近くまで行く。

黒板消しを手にして霊の手に付けさせると、彩未は霊に黒板に手形を付ける様に指示させる。

ポンッと何も無かった黒板の上部、彩未の背丈より高い位置に真っ白な手形が現れると、周囲は騒然とした空気に包まれた。


「こんな事出来る人とか…て、あれ?」


周囲は驚きの表情に包まれて、開いた口が塞がらない状態だった。


「あ…彩未ちゃん…今、何をしたの?」

「黒板に突然人の手形が現れた…」


皆は驚きながら彩未を見ていた。


「霊感があれば、これくらい可能かと思うけど…?」

「私の知り合いに霊感が強いって言う人がいるけど…今貴女がやった事は絶対無理だと思うわ」

「この学校で、そんな事出来るのは彩未ちゃん以外存在しないと思うよ…」

「それ以前に…テレビに出ている霊能者でも、今やった事は無理じゃない?」


皆の視線が一斉に自分に向けられると彩未はオロオロしながら


「私は…その、何処から見ても…ごく普通の一般的な女子小学生よ。霊感なんて全然無いわ」


(イヤ…それは絶対に違う)


教室に居る皆が同じ様に思った。


彩未が小2に上がる頃、母友美は娘の事を思って知人を通して滝川と言う男性と知り合い再婚し、彩未の姓は田中から滝川へと変わった。


滝川家の新しい家族となった母娘は、夫となる男性が新築住宅を購入して、彼等は新しい家族として暮らす事となる。


ある日、下校途中、彩未は川辺の土手付近の道を歩いていた。その時「やあ!」と、声を掛けて来る少年がいた。


「ねえ…ちょっと、どうして無視するの?」


土手付近から、いきなり彼は、彩未の側に現れた。


「違うの貴方と関わると、私もそっちの世界に引きずり込ませられてしまうから…」

「あ…そう、分かったよ…じゃあ、最後に1つだけ君に見せたい物があるから、こっちへきてよ」

「わ…私は、もう帰るのよ」

「これが最後だから、これ以降君に迷惑は掛けないよ。本当だって」

「ん~…」彩未は少し返事に迷った。

「本当に、これで最後なの?」

「本当だよ」

「分かったわ」

「とにかく、おいで」


少年が言うと、彩未は見えない力で引っ張られて、川辺付近まで連れて来られた。


「ねえ、あれだよ、ちゃんと見て」


彩未は川の中央付近を見つめると、そこには不思議に輝く物が見えた。


「わあ…何あれ、綺麗」

「君の心の不安を取り除いてくれる物だよ。あれを手に入れれば、どんな悩みも直ぐに解決出来てしまうよ」


それを聞いた彩未は心の奥底から、それが欲しいと願った。


「ほら、今直ぐに取りに行かないと、消えて無くなってしまうよ」

「う…うん!」


そう思った瞬間だった。

彩未は剛に無理矢理引っ張られて川の中に引きずり込まれる。


「キャアー!」


ドボンッ


春先で冷たい川に落とされた彩未は、必死にもがくが川は思った以上に深く、小さな体では川底に足が届かなかった。更に流れも強い為、彩未は身動きがとれず溺れてしまった。

その時、たまたま近くを自転車に乗った青年が気になって自転車を止める。

青年は川を見て少女が溺れて居るのを見付けると、急いで上着を脱ぎ川へと飛び込んだ。

まるで絵になるような飛び込み方で、川の中へと飛び込んだ彼は、溺れ掛けている彩未を掴み、重くなっているランドセルを外して岸まで彼女を連れて行く。


その現場を目撃した、近くを歩いて居た中年男性が、河川敷周辺にいる高校生達を呼び集めて、彼等全員で手を繋ぎながら川の中へと入り、泳いでいる青年に手を差し伸べて彩未を救出した。

救出された彩未は、まだ心臓が動いているが水を呑んでいたせいで意識が無かった。男性は彼女の首を横にして腹部を何度も押して口から水を吐き出せる。


「ケホケホ…」


一命を取り留めた彩未を見て、周囲は安堵した表情に包まれた。

しばらくして救急車が現場に到着、現場を目撃していた上級生達は学校に連絡を行った。


流されたランドセルは下流の方でボロボロの状態で発見された。彩未は両親に新しいランドセルを買って貰う。


~2年前

小学校 中学年


その日は…彩未は数日前からの体調不良に悩まされていた。医者へ行っても原因が分からず薬で様子見と言う事で自宅で安静する事にしていた。

午前中、両親は急用が出来たと言って出掛ける事にした。外出前に母は布団で寝てる彩未に声を掛ける。


「午後には帰るわ」

「ねえママ…今日は家に居て…お願い」

「そうはいかないわ、大事な用事なんだから」

「他の日に出来ないの?」

「こればかりはね…」


「じゃあ…彩未も一緒に行く」

「体調不良だからダメよ…帰ったら美味しいオムライス作ってあげるから待っていてね。直ぐに帰るから」

「あ…」


彩未は母の背中を見て感じた。行ってはいけない…と、母に伝えなくては…。


しかし彩未はそのまま意識が遠くなった。

どのくらいの間眠っていたのかは不明だった。気が付くと外出した筈の両親が何時からか…彩未の前に立っていて涙を流していた。両親を見ると顔が少し青白い。


「ごめんなさい彩未…貴女を1人にさせてしまう事になってしまったわ…」

「ママ…どうしたの…何で泣いているの?」

「私達は…もう帰れないのよ。あなたが好きだったオムライス、もう作れないわ…」

「ママ…パパ…何処へ行くの…。イヤだよ1人にしないで」

「ゴメン…さようなら…」

「強く生きるのよ、自分に負けないでね」


両親は、彩未の部屋から出て行く。


「待ってママ、パパー、行かないでー!」


急いで彩未は追いかける。部屋を出て、下の階段を降りて家の中を探し周る。


「イヤだ、お願い彩未を1人にしないでー!」


両親の帰って来た気配が無く、駐車場では父親が愛用している車も無かった。外に出て見ると外は大粒の雨が降っていた。


「ママ、パパ…お願い帰って来てぇー」


悲しんでいる時に家の中で電話が鳴り響いた。電話を取ると警察の人からの連絡からで、両親が事故で亡くなった事を告げる知らせだった。

彩未は絶望の淵に立たされた状態で、悲しみに堪えきれずその場に蹲った。


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