表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

婚約破棄してくださってありがとうございます

作者: 猫丸 鳥太

テンプレ悪役令嬢やってみたかったのです。


誤字報告ありがとうございました。気付いていなかったので助かります。

「クレアーレ・フォン・ツヴァイン。今この時をもって君との婚約を破棄させてもらう」


 よく通る低い声でそう言い放ったのは私の婚約者であり王太子殿下であらせられるカイル・ルフォン・エル・レオドール様。

 王族の証である赤い髪に緑の瞳を持つ彼はその綺麗な顔を歪ませながら私を睨みつけるように見ている。

 彼の周りにいる三人の男たちも同じように私を見ていた。

 そのうちの一人は私の義弟でもあるヴァイド・フォン・ツヴァイン。我がツヴァイン公爵家の跡取りとして養子にやってきた少年。艶やかな黒い髪は私とは違うけど、ルビーの様に輝く綺麗な瞳は私と同じ色をしている。

 他の二人は……正直覚えていない。覚える気がないとも言うわね。

 がっしりした体格の青い髪と神経質そうなメガネに緑の髪の男。青と緑って認識しかしてこなかったわ。

 そして彼らの後ろに守られるようにいるのは桜色の綺麗な長い髪に澄んだ空色の瞳を持つ少女。名前は確か――


「理由は言わなくてもわかっているだろうが、ここにいるナタリーに対しての陰湿な嫌がらせの数々。果ては貴族としての地位を振り翳し学園を追い出そうとしたそうではないか。そんな女性は僕の婚約者としては相応しくない。よって現時点で君との婚約を――」


 そうそうナタリー。もといナタリアだったわね、ナタリア・マドバン。

 癒しの力を持っているとして唯一平民ながら学園へと入学してきた子。卒業後は国をあげて聖女として保護するらしい。

 いいわね、就職先が決まってるなんて。


「おい、聞いてるのかクレア! 言い訳があるなら言ってみろ!」


 なんの反応も示さない私に痺れを切らしたのか殿下の声が大きくなる。

 なんでもいいけど婚約破棄をするのなら愛称で呼ぶのをやめてほしいわ。


「聞いていますよ。えっとなんでしたっけ……そうそう婚約破棄でしたね。わかりました、私からも父上に申し上げておきます」

「なに……?」

「ですから承りました、と申し上げているのです。要件はそれだけでしょうか? でしたらそろそろ帰ってもよろしいですか?」


 さっきから見せ物のようになってるのが地味に嫌なのよね。

 実はここ学園の広間で今は年末恒例ダンスパーティーの真っ最中。

 パーティーが始まって盛り上がってきたところにこの騒動。ため息しか出ない。

 なにやら様子のおかしい殿下たちを無視して私は広間の出口へ向かう。

 とりあえず屋敷に帰ったら父上に婚約破棄の件を伝えて、それから――


「お、おい待て。クレア!」


 殿下の声に足を止めた私を見てまだ話を聞く気があると思ったのか、殿下がさらに口を開く。


「やけに素直じゃないか。どうしてだ、君は僕の事が――」

「――嫌いでしたよ、ずっと」

「えっ?」


 目を見開き驚く殿下を横目に私はなおも続ける。


「ですから、殿下のことはずっと嫌いでした。子供の頃はどっちでもなかったんですけどね。いつの頃からか殿下は私を邪険に扱うようになったじゃないですか。その時からあなたの事が嫌いでした」

「でも君はずっと僕に付き纏っていたし、ナタリーと僕が仲良くなるのを面白く思ってなかったんだろう。だからナタリーに僕に近づくなと言ったり嫌がらせを――」

「――別に付き纏ってません。必要があったからそうしただけです。それとナタリア様に殿下に近づくなと言った件ですが、婚約者のいる男性に無闇に近づくなと言っただけです。当たり前の事でしょう? 正直私は殿下とナタリア様が何をしてようがどうでも良いですが、婚約者という立場上言っておかなければならないからそうしただけです。それに――」


 ゆっくりと振り向き殿下と共に私を見ていた男たちへと視線を向ける。


「私が良くてもそちらにいらっしゃる殿方達の婚約者様方はそうでもいらっしゃらないようでしたので余計口をつぐむわけにはいかなかっただけです」


 私の言葉に思うところがあったのか青と緑は僅かに目を逸らす。

 実際青と緑の婚約者である令嬢達からナタリアをどうにかしてくれと頼まれてもいた。お前達がしっかりしてないから私の仕事が増えるんだ。


「あとは嫌がらせでしたか? それこそまさか、ですね。ありえないとだけ言っておきます。だって私はナタリア様に一欠片の興味もございませんので……。恐らくはナタリア様の嘘、もしくは違う誰かにされた嫌がらせまがいの事を全部私のせいにしたか。どちらにせよ冤罪。私は関係ありませんので」


 では、失礼します。

 そう言って綺麗なカーテシーをした私は彼らに背を向けて歩き出す。


「あ、そうそう。忘れていました。ヴァイド」


 顔だけ振り向きながら弟の名を呼ぶ。


「何ですか……」


 弟の探るような目を真っ直ぐ見ながら私はにっこりと笑う。

 今日一番の笑顔かもしれない。


「貴方は()()()()()()()()のか良く考えなさいな」


 恋は盲目といえどナタリーの証言だけを鵜呑みにしていると痛い目を見る。

 そういう意味を込めて弟のルビーの瞳をじっと見つめる。

 賢い弟のことだ。きっと伝わるだろう。

 他の人間はどうなっても構わないが、義理とはいえヴァイドは可愛い弟。他の人間と一緒に落ちていくのを見ているだけというのも可愛そうだ。手は差し伸べておく。あとはあの子自身の問題だから私は知らない。


 広間に集まった学生や教師達の視線を一身に浴びながら私は会場を去った。




 あの後屋敷に帰った私から事情を聞いた父上が動いてくださり無事婚約破棄はできた。

 もちろんこちらに非は一切なく殿下側の過失という事で慰謝料も頂いた。

 毎度あり。

 殿下は私が嘘をついていると言っていたようだけど、私はこんな時のために逐一父上に報告をしていたのだ。勿論子供の時から何かあれば――何もなくても、何もない事を――父上に報告していた。

 だからナタリアが殿下に近づき始めた頃にはすでに報告していたし、公爵家の調べでナタリアの動向も探られていたので私の無実は即座に証明されていた。

 反面嘘を言っていたとバレたナタリアだったが、聖女としての力は本物なので下手に罰するわけにもいかず王国で飼い殺しにされるようだ。

 殿下は王太子を外されただの殿下に。そして卒業後は聖女との結婚も決まっているらしい。王位継承権は彼の一つ下の弟に渡った。

 青と緑は――知らない。興味がないのでどうでもいいや。

 そして弟はというと――


「おはようございます姉さん。今日もいい天気ですね」

「おはようヴァイド。ええ、いい天気ね」


 私の言葉や態度でナタリアの証言に不信感を持ったらしい弟は自ら考え行動した。その結果ナタリアへの恋心は消え去り私へ謝罪してきたので許した。

今は心を入れ替え父上の仕事を手伝っている。


 そして私、クレアーレはというと……


「やったぁ!」

「お見事ですお嬢様」


 目の前に倒れる一匹の鹿。


「今日はこの鹿でパーティーね」


 莫大な慰謝料を手に田舎に引っ越し悠々自適な生活を送っている。

 元々王妃になんてなりたくなかったけど、貴族だし婚約者として決まってしまったから仕方ないと諦めていたのだ。

 家は心を入れ替えたしっかり者の弟が継ぐし、いくら向こうの非とはいえ婚約破棄された私は貴族界では嫁の貰い手がないらしい。正直言って結婚したくなかったからちょうどいい。

 昔から田舎でまったり生活するのが夢だった私はこれ幸いと引っ越しを決意した。


 そうしてまったり過ごして二年。

 十九歳になった私の周りには小さい毛玉が二つ。

 白と茶色が混じったのと真っ黒の毛玉。うごうごとじゃれあう二匹を楽しげに眺める。最近家の周りに住み着いたので飼うことにした子猫の二匹。

 王都にいた時には信じられないくらい充実した時間が流れる。

 今私は子猫二匹と幸せに暮らしてます!

つたない文章を読んでいただいてありがとうございました。

よろしければ↓の☆で評価いただければ嬉しいです。


10/29追記

皆様ブクマや評価ありがとうございます。

見たことのない数字をたたき出しており恐れ多くもありますが、とてもありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ