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四話

特にこの話の全容や落としどころも考えていないので突然更新が切れたら察してください

 (こんなことになるならいっそ、世界中を旅する放浪者にでもなればよかったわ…。)



 学校生活が始まり2週間とちょっとが経過した現在、早くもリリーシアは退学を考慮し始めるほどに鬱蒼とした気分になっていた。

リリーシアが、過度に夢を見すぎていた節が否めないのはもちろんだが、学校内の身分による差別等が黙認されたり、貴族と平民で履修できる授業に差があるといった現状は、学校側の管理責任も大いにあるはずだ。


(こんな狭い箱の中に押し込められて、これから19歳になるまでの2年間、退屈な授業を受けさせられないといけないなんて…憂鬱ね…。)



 現実は、彼女が思い描いていた学校生活ほど楽しいものではなかったのだ。青春もへったくれもない、ただの貴族社会の縮図である。


貴族連中は平民を疎み、特待生制度によって入学を許可された平民たちは、自分たちを“平民だから”という理由にもなっていないような理由で迫害する貴族たちに憎悪を抱く。

この学校は初等部、中等部と進学した貴族の子息・息女がエスカレーター方式で高校へと上がる場合がほとんどであるため、小さい頃から平民たちに粗暴に振るう習慣がついてしまっているのだ。

平民同士の仲は良くなる一方なのだが、何分生徒の中の平民自体の割合が非常に低い。

1学年に160人いる生徒の内、平民は7~10人程度。1クラスごとに2、3人といったところだろう。


 さらに厄介なことに、リリーシアは見目の美しさと保持する魔力の多さで伯爵家に引き取られた養子であり、貴族の生徒からすれば彼女はただの平民上がりであるし、平民の生徒からすれば“勝ち組”として劣等感を煽られるような異質な存在なのだ。



だからこんな目に合うのももう3度目ぐらいだ。



「ちょっと聞いてる? あんたみたいなちょっと美人だからって澄ましたような態度とってるいけ好かない奴が殿下の婚約者なんて聞いて呆れるわ…。貴女がどんな手を使ったのか知らないけど殿下の婚約者には私になるはずだったの! 貴女は殿下と私の関係を引き裂こうとでもいうの?」



 そう捲し立てるのはどこかの上流貴族のご息女であろう女子生徒。縦巻きにカールのかかった金髪に吊り上がった目がきつい印象を与えるが、それをさらに釣り上げて般若の如き形相である。

確か“マリー”と呼ばれていたはずだが、どこの家の人間まではリリーシアの記憶に残っていなかった。



「ごめんなさい! 私に婚約をどうこうできる権限はないんです…。マリー様の恋を応援したいのは山々なんですが、本当にごめんなさいね…。」



ちょっと勢いをつけて謝ることで、此方が全く敵対を望んでいないことの意思表示をするが、無駄だったようである。



「そういうところよ。貴女から婚約を望んだくせにあくまで自分は殿下に興味はありません、とでも言いたげなその態度が鼻につくのよ!」



はて…自分から、もしくはお義母さまが望んだ婚約なのだろうか、としばしリリーシアは逡巡した。そうではないだろう。

しかし、今ここで反論しても何もメリットはない。下手に出てとっとと退散するのが吉ではないだろうか。そう結論付けてからのリリーシアの行動は速やかだった。

深々と腰を折り、ただひたすら謝罪をする。



「本当にすみませんでした。申し訳なく思っています。私が殿下に対して何の感情も抱いていないは本当なんです。もうこれ以上こういった話を私にされても困るのです。だからこの謝罪で手打ちしにしてくれませんか。」


「はあ!? 誤って済む問題じゃないでしょう? とりあえず貴女は今すぐにでも殿下に掛け合って婚約を解消にするように―」


冷静な思考ができていないようにもん見えるマリーは、謝罪をするリリーシアの声を遮り、さらに文句を重ねてくる。


(もう疲れたわ…こいつの声聞いてるの…)


<遮断>

リリーシアが呟くと、ピタリと怒鳴り声が静まり返る。厳密にいえばマリーから発せられる音を遮断しただけでであって、まだ彼女は延々と説教を垂れ続けているのだろうが。


<幻影>

加えて魔法でマリーの前にデコイを作り、それを身代わりにリリーシアは速足でその場を立ち去る。



(何が悲しくて私の自由な時間をあんた達みたいなアホに捧げなくちゃいけないのよ。そうよ、最初からこうすればよかったんだわ…。

もしかしたら友達ができるかも、なんて可愛いこと考えてた少し前の自分がバカみたい…。)


悲しげに笑ったリリーシアは<飛行>と<透明化>の魔法を使用し、誰にも今の表情を見られないようにひっそりと、リリーシアにとって唯一心休まる高級宿“月光”の方へと姿を消した。





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