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春の夢の如し

作者: 神無月 郁



(つるぎ)の一振り虚空の螺旋、夢を歩けば露を掴み、現に侍れば修羅を見る。生きるも死ぬもただ春の夢の如く鋼の刃が決めるのみ。


朝、朝餉の用意をする前に剣を振るい空を斬る。ただ冷気を斬るにあらず、手足に肩、腰……指先に至るまで感覚を研ぎ澄ます。我が往く先は蒼天の一、至高の一之太刀なり。


昼、昼餉の後に座禅を組み瞑想に更ける。思考の果てに終はなくしかし思考なくては終は見えず。我が諸行無常の先に何があるのかを考え、その先を考えるなど悟りへの到達。雲を掴むと同義。故に深く考えずただ我が一刀一振の行く末を思案する。


夜、夕餉を終え身を清める前に剣を振るう。型を刀速を今一度確かめる。剣の道に近道は無く、全ての道と同様に地道なものだ。昨日より一振りでも多く、一月前より数秒でも速く。それが剣の道……いや己がこの命を賭けるに値すると信じる道だ。


ならそれを示すにはどうすべきか?己の道をただ邁進する求道者になれば良いのか……否だ。要は勝てば良いのだ。この修羅の巷の輩が一人ただ最後に立ってさえいれば良いのだ。それが天下無双、この国最強と呼ばれる存在。


故に斬って突いての東奔西走、金無し宿無し寝床無しされど野望と希望を胸にひたすら切り合いを所望す。未だに負けなし、死は我に近づかず。ただ立ち会い者に押し付けた。


剣は我を裏切らず。我が半身、我が相棒、我が人生、我の全てをかけたモノ。そう、全てを賭けたモノ。全てを賭けるに値するモノだ。コレに全てをかけると誓っただからこそここまで強くなったと言う自負がある。


だからこそ……だからこそ何故我は血を流して横たわっているのだろうか?


我は強い……強い筈だ。何故至高の一之太刀それが何故届かない?何故我が相棒たる愛刀が半ばで折られているのだろうか?


何故……何故……何故……!

剣よ……刀よ……刃よ……!


我を捨てるのか!こんな荒野の道先で道半ばで我は死ぬのか!我の全ては無駄だったのか!


剣は答えずただの鉄屑と成り果てた。我も骸へ還る我は正にただ春の夢のごとし。


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