第一章 異世界へようこそ
さてはて時間はお昼前。
突貫作業でで作った屋台風のお店。
炭の準備は大丈夫。
事前に各部位に串打ちも準備済み!
赤ワインと蜂蜜を煮詰めて、そこに数種類のスパイスを鶏皮から作った脂で炒めた物。
さらに鶏出汁を煮詰めて加えた特製漬けダレ。
ほんまは醤油が欲しかったが、今回は手に入らんやったんでしゃーない!
いよいよ開店や!
「何か良い匂いがするー」
「ちょっと煙い?」
「あれはなーに?」
と、あれよあれよと人が集まりだす。
「いらっしゃい!本日オープンの焼鳥屋台!うまいですよ!」
ユナには売り子を頼んでいた。
焼きながらハルも声を張る。
「らっしゃいらっしゃい!焼き立て熱々にビールは最高やでー!」
みんな興味津々ではあるが、こういうちゃんとした料理は食べたことがない。
なので近場の一人に、一本試食させてみる。
「…………う……うまい!ナニコレ!?」
その声を皮切りに、凄まじい勢いで売れていく。
ビールの樽がなくなる頃には、横で知らないおっちゃんが、店を出して売り出していた。
予想通りや!
あとはただただ焼きまくるで!
わざと小ぶりに切り、焼き時間を短くし、値段も割と安めに設定している。
元ではほとんどタダみたいなものだ。
屋台の焼鳥なら皿の用意はいらない。
さらに焼いてる時に出る香ばしい煙。
回転直後だけ風魔法で、煙と香りを遠くまで飛ばしたが、すぐにそれも必要なくなる。
行列は次の人を呼ぶ。
結果開始から2時間で焼鳥は完売した。
まだ何人もの人だかりがある。
仕方ないので、ボア肉の残りと、一角兎の肉を、野菜と炒め、鉄板焼きにして提供した。
一段落がついたころ、ユナは疲労困憊でへたり込んでいる。
そらなれん仕事やから、疲れたやろなぁ…
ちゃんと給金払うさかいな!などと考えていると、隣でビールを売っていたおっちゃんが近付いてくる。
「にぃちゃん!ありがとう!儲けさせてもらったよ!」
「こんにちは!それはなによりです。」
しっかりと爽やか笑顔で返すハル。
そこに住む地元の人間とは仲良くしておく。
特におっちゃんおばちゃんと仲良くなっておけば、死ぬことはほとんどない。
人生経験から得た教訓である。
「見ない顔だが、ユナの知り合いかい?」
「たまたま山で出会って、お世話になったりお世話したりって感じですかね?」
などと世間話をしていると、ビールを頂いた。
二十歳未満ではあるが、ここは異世界。
15歳で成人扱いらしい。
しかも仕事柄、お酒を飲む機会も多く、割と好きだったため、残ってた野菜にタレを絡めながら飲む。
「うち自慢のペールエールだ!うまいだろ?」
「確かに!ちょっとオレンジフレーバーを感じるし、コクもある!」
「おっ!?わかるか?」
「ハルゥー…私も飲みたいよー…」と、へたれ込むユナの声に、おっちゃんも忘れてた!と、入れてくれた。
お互いにお礼を言いつつ、片付けをして帰宅する。
結果として、お金は給金を支払っても10万以上残っている。
今後のことを考えて、もう少し貯めといた方がえぇやろなー
と考えている横で、酔い潰れたユナの寝息が聞こえてくる。
明日は朝からまた狩りに行くかー
と、ユナをベットへ運んだあと、ハルは自分の部屋へ戻り、道具の手入れをし、床へ付くのであった。
翌朝コッコの声が鳴り響く中、ハルは卵を拾う。
流石に昨日の疲れか、鳴き声くらいでユナは起きて来なかった。
8時過ぎにユナは起きてきた。
別段二日酔いという感じではなかったが、酔っ払った姿を見られて、恥ずかしかったようだ。
「ユナおはよ!」
「…あぁ…うん…」
朝食は産みたて卵のオムレツにトーストとサラダである。
食べ終わり、今日の予定について話していると、ドアを叩きながら呼ぶ声が聞こえる。
外へ出ると、町の色んな人が集まっている。
「おはようございます。どうしました?」
「今日も店は出すのかい?」
「昨日の話を聞いて、思わず来てしまった!」
等々の声が、あちこちから飛んでくる。
「いや、材料の調達と、仕込みしないとなんで、今日はちょっと…」
などの押し問答が少し続いたが、みんな諦めて帰ってくれた。
真っ当な食事がない世界にそれが登場すると、ここまでの力になるのか…と、かなり驚きながら、狩りの準備をする。
町の出口へ向かうと、昨日のビールのおっちゃんがいる。
「よぉ!今から狩りか?よかったらこいつらも連れて行ってやってくれ!」
と、おっちゃんの後ろに二人の女の子がいた。