第一章 異世界へようこそ
今度はコッコを狩る。
こちらはまんま鶏と言えば鶏だが、闘鶏というイメージである。
数は4匹。
ちょっと違うやり方をしてみよう。
少し離れた位置から矢を放つユナ。
コッコがそっちへ向かう途中、木々に隠れているハルが、麻袋でコッコを生け捕りにする。
鳥は目隠しされると寝てしまうのだ。
そこを付いた捕獲方法である。
1匹は見事にいったが、残りの3匹は警戒しているので、上手く近付けない。
最終的にコッコはユナの矢で頭を撃ち抜かれ、煙となった。
ドロップアイテムは鶏ももと白い羽根であった。
元々コッコがいた処に戻り、少し調べると、卵も6つほどあった。
「上手いこと頭飛ばしたなー」
「いえいえ!ありがとうございます!弓術は得意なんですよ!」
などと話しながら獲物を探し、最終10匹ずつの一角兎とコッコが丸々。あとはドロップした物がちらほら。拾った卵が30。
初めてにしてはなかなか上手くいったと思う。
何より生け捕りやハルがとどめを刺せるように、ユナが上手く調整してくれたのが幸いした。
コッコ5匹を除き、残りは全て血抜きをしてから帰る。
生きたままだとバングルに入らなかったのと、鮮度を保つためである。
余談ではあるが、鶏は眠ったまま首を飛ばし、脚と脚の繋ぎ目に切り込みをを入れて、逆さ吊りにしておいた。
血が抜け切るまでの時間は、茸狩りをおこなった。
流石に見分けのつかないハルであったが、その判別はユナがしてくれた。
薬の材料によく使うらしい。
「てなわけで、ここはユナさんにまっかせなさい!」
結果。血抜きが終わるまでに、大ザルに一杯の茸である。
ハルの方は、ミミズなどを捕まえ、杉っぽい木を、風魔法で適当なサイズに切る。
枯木や落ち枝を薪用にも集め、それらをバングルに収納した。
全ては明日からのための、下準備である。
町へ戻ってから、ハルは湯を寸胴で沸かす。コッコをその中へ入れ毛穴を広げ、羽毛を抜き取る。
残った毛は焚き火で炙り取る。
その後腹を開き内臓を抜き取る。
足首に切り込みを入れてねじり抜く。
モモ肉や手羽。笹身や首ズルと、手早く解体してガラを集める。
ガラは全て霜降りし、市場で買った生姜と、玉ねぎや人参、セロリなどと麻袋に入れて、寸胴で炊いていく。
最初はしっかり沸かすが、沸いたらフツフツくらいの火加減に。
灰汁は最初の一回目は強く出るのでしっかりと。
暫くするとまた灰汁が溜まるので丁寧に取る。
このあとは旨味が出て来るので、下手に触らない。
触らない方が、澄んだキレイな出汁になるからである。
一角兎の方は、角が危ないので切り落とす。
聞いたところ、角はレアドロップらしく、こちらも薬になるそうだ。
こちらは腹に切り込みを入れて、皮を剥ぎ取る。
腹から内臓を取り出し、身と骨に切り分ける。
こちらの内臓も使ってみたいが、今回は時間がないので、バングルに収納。
鶏の内臓の処理に取り掛かる。
ユナは興味津々にこちらを見ている。
そうこうしている間に、出汁も準備が出来た。
シンプルに鶏モモ肉でステーキを作り、そのフライパンで茸も炒める。
出汁の一部を塩コショウなどで味を整え、溶き卵を加えて、かき玉汁にする。
ご飯一緒に召し上がれ!
鶏御膳の完成である!
「良い匂いー!これは何?」
「今日の賄いでけたでけた!ユナも一緒に食べようで!」
「まかないっていう名前なの?」
「いやそうやなくて…」
という会話をしながら、二人は食卓を囲む。
明日は今日の食材を使って、早速頑張らねば!
ちなみにユナはハルが仕込みをしている最中に、土魔法で庭に穴を掘り、ハルの取ってきた草を底に敷き詰め、コッコをそこへ放ち、枝を組んで蓋をしていた。
「養鶏出来たら、産みたて卵食べれてぇぇんちゃうかな?」というハルの発言によりであった。
結果として、この世界でもコッコは鶏と同じ性質ようで、朝早くにコッコ達が鳴き出し、かなりの早起きをするはめになる。
元々河岸に行くのに早起きなハルは問題なかったが、ユナにかなり怒られてしまったのであった…
さて、次回はいよいよお店始動です!
最初は鶏肉ってことで、あの料理です!