第一章 異世界へようこそ
とりあえず本から得た知識は以下のようである。
基本この世界では、パンやご飯などは、全て植物から成るようだ。
パンの木やご飯の木。
流石は異世界である。
当然小麦や米もあるようだが、それはほとんど食用ではなく、糊にしたりといった使われ方のようだ。
肉や魚は、その辺の獣や魔獣を倒すと、ドロップアイテムとして出るのが基本らしい。
しかし、以前ハルが倒した魔物は、何故かドロップアイテムではなく、丸っと残っていた。
これは料理人の力が関係してるのか、異世界から転移した結果、法則に当てはまらないのかもしれないが、検証のやりようがないので仕方ない。
まぁ丸っと手に入る方が、ドロップアイテムよりも有効に使える部分も多いし、この方が色々お得っぽいやん!と、大阪人根性丸だしである。
昔はこの世界にも、料理人はどうやらいたような痕跡は、本の中から読み取れた。
ただし、魔法技術の発展により、上記の植物が出来たため、料理を作る必要性がなくなったこと。
料理自体も作り出す植物もあったようだが、それは先だっての世界戦争で、ほとんどなくなり、今のパンやご飯の木など、一部が残ってる模様。
結果として、料理人やそのスキルは途絶えて長いので、料理という概念がなくなったようである。
体力やマナの回復のために、形だけの料理もどきは、上記ことから、急場鎬的に作られた物のようである。
便利か不便なんか、よぉわからん異世界やのー
さて、ハルは何をするにしても今はお金がない。
しかし、この世界には料理がない。
作れるのは俺一人だけ!
天下取ったようなもんやん!
と思い、早速料理屋を始めようとするも、市場は昨日で閉まっている。
つまり、大きな仕入れは、今のところはできないのである。
というわけで、食材調達の基本である、狩りに向かうことにした。
近辺の情報は詳しくない。
つい先日襲われたばかりのユナに狩りの案内を頼むのは少し気が引けたが…
「大丈夫です!むしろ一緒に狩ります!」と、すごく乗り気だったので、ありがたくお願いした。
怖い思いしたとこやのに、案外元気やねー
この世界やと、普通のことなんかな?
と思いながら、準備が出来るのを待った。
「お待たせしました!行きましょう!」
という彼女の装備は、ショートボウがメイン。腰にはサブに短刀とナイフといったものであった。
「そーいやこないだは、武器持ってへんかったよね?」
「あのときは不意を突かれて、弓は折れちゃって…なんで、今回は弓と予備にナイフと短刀も用意しました!」
ということらしい。
とりあえず近場に、一角兎とコッコという、兎と鶏型の魔物がいるそうだ。
どちらも狩り初心者には、ちょうどいいらしい。
町から5分くらい歩くと、一角兎が5体ほど草を食んでいる。
「普通の兎より、サイズでかいな!とりまやってみよか!まずは魔法でと…アクアザッパー!」
森の木々に隠れつつ、ハルは覚えた魔法の中で、青魔法の一つを使ってみた!
圧縮された水の礫が、ハルのイメージ通りに飛んでいく。
一角兎達の外側から内側へ向かう軌道で、水の礫を使う。
3匹には当たったが、残りは外れる。
何発かは外れるのは予想済み。
狙いはあくまで敵を一つにまとめること。
事前の打ち合わせ通り、そこにユナの放った矢が、的確に撃ち抜いていく。
魔法と矢が当たった兎は倒れ煙になり、アイテムがドロップされた。
残りの2匹には、矢を脚に受けたようで、動きが鈍い。
走り寄って剣で、2匹の首元を切ると、まもなく息絶えた。
今度はそのままの姿で残っている。
「俺がトドメ指すと、丸々残るんやなー」
「そうみたいですねー ハルさんの武器には、何か特殊な効果が付与されてるんですかね?」
という会話をしながら、ハルは兎の足首にも切り込みを入れて血抜きを行う。
血が流れるのを見て、ユナはかなりおっかなびっくりといった様だ。
通常倒したらすぐ煙になるのに、血抜きのスプラッタショーを見せられたら、驚くのも無理はない。
ロープで括り、木にかけて血抜きししつつ、近くに他の魔物はいないか、探し回ることにした。
基本草食の魔物しか、この辺りにはでないことと、血抜きを見ても、見た目的に怖がって、誰も近付かないであろうと判断してのことである。
「一人より二人の方が、早く狩れますね!魔法も無事に使えた様ですし、どんどん狩りましょう」
と、ご機嫌なユナに、コッコの特徴を聞きながら、二人は狩りを続けていった。