第ニ章 旅は道連れ世は情け
二人の子どもと共に、馬車を走らせる。
前回のことがあったため、次の集落には寄らず、かなりハイペースで王都を目指している。
話しかけると返事はあるものの、やはり知らない人達ばかりの環境と、親を亡くしたばかりの心労は、相当なものなのだろう。
あえてあまり構うことはせずにいる。
ハルの経験上、そっとしておいて欲しいのもわかる。
ちゃんとご飯は食べてもらっている。
やはりご飯を食べることは、生きることに直結してるし、何よりも元気の源である。
そうこうして、2日が過ぎたとき、ロビィとステラが近づいてきた。
「にぃちゃん。僕らは孤児院へ行くんだけど、どんなとこかな…?」
「うーん…行ったことないからわからんけど、似た境遇の子らがいっぱいおるらしいで?」
「そかー…怖いところじゃない…?」
「どないなんやろ?ユナ達は知っとる?」
「どうなんでしょう?」
「優しいシスターがいるって、聞いたことはあるよー」
「優しいなら、怖くないぞ!ステラ!」
「…だといいなぁ…」
「まぁ行ってみなわからんし、行ってから次考えるんも、えぇんやないかな?下手に悩むだけ、しんどいだけやしさー」
「そーいやにぃちゃん達の親は?」
ユナとハルはもう親がいない。
ジル達はまだ元気らしい。
「まぁ俺も何とか生きとるし、二人もなんとかなるって!」
と、気休めの言葉しか出せない自分に、内心少し苛立ちつつ、その顔を表には出さず、歩を早める。
そうこうしているうちに王都へ着いた。
馬にはかなりの負担をかけてしまったので、しっかり休める馬小屋付きの宿屋へ入る。
手続きを済ませ、宿屋の主人に、孤児院の場所を教えてもらう。
二人を連れて行く途中、大きな露店通りへ出た。
王都だけあり、毎日開催しているようだ。
見る物珍しいといった様子の兄妹。
はぐれないように手を繋ぐ。
「はーい!みんな!荷物しっかり持ったかな?」
「うん!持ったよ!」
「リンゴ…重い…」
向かいの方から、賑やかな声が聞こえてくる。
シスターが子どもを連れて、買い物に来ている様だ。
こちらとすれ違うとき、シスターが服に足を引っ掛け、激しく転ける。
咄嗟のことだが、反射的に受け止めるハル。
「よっと。大丈夫でっか?」
「あわわわわわわ!す!すすす!すみません!ありがとうございます!」
「またシスター転けてる!」
「お姉ちゃん転けすぎ!」
「だいじょーぶぅ?」
子どもも口々に寄ってくる。
「ご迷惑おかけしました!この先の孤児院で、この子達の面倒を見ている、シスターのアリアと申します。」
「いえいえ!俺はハル!よろしゅう頼んます!」
お互いに挨拶を交わし、孤児院へ兄妹を連れて行く途中と話すと、案内してくれることになった。
孤児院はかなりの人数がいるらしく、かなり荷物。
流れでハル達も運ぶのを手伝った。
ちなみにシスターは、華奢そうに見えるが、修道服の上からわかるくらいの巨乳のため、最初に受け止めたとき、かなりドキドキしたのは、ハルの内緒である。
孤児院は思った以上に大きかった。
国営のため、生活水準は思ってたよりも高く、教育にも力を入れているようだ。
助け合いの精神も勿論ながら、早めに独り立ちをさせ、国の為に尽力してもらうことで、その分を返してもらうというのが、国王の考えらしく、実際有能な騎士や文官となり、国を支えてくれる人が多く、王都やその周辺は、比較的安定している様だ。
ここの孤児院は、基本的に修道院の管轄らしく、女性が中心に、子ども達の面倒を見ているらしい。
当然力仕事も多いので、男性スタッフもちらほら混ざっている。
兄妹の事情は先に集落の長より、連絡が通ってたので、すんなりと通った。
ただし、修道院側から、別のお願い事も頼まれてしまった。
「アリアなんですが、実はここの出なんです。年齢的には独り立ちする時期は過ぎてるのですが、おっちょこちょいで…。独り立ちのためにも、旅でもして、力を付けてもらいたいのですが、如何せん一人で送り出すのは不安なので、可能ならご同行させてもらえませんか?」
流石に断ろうと思ったが、修道院の長の横で 泣きそうな顔でこちらを見られると、断り辛かった。
結果、新たにアリアも旅の仲間に加わることとなる。
旅は道連れと言うが、旅は押し付けなのでは?と思ってしまうハルであった。
忘年会シーズンのため、本業が忙しくて、なかなか書くのが大変ですが、自分のペースで、勉強しながら書いていこうと思います!