プロローグ 第ニ章 旅は道連れ世は情け
旅を初めてから新たにわかったことがある。
世界樹に行くためには、先にポイントとなる各王都へ向かい、許可証となる核石を集める必要があるそうだ。
世界樹の周りは周囲を深い湖で覆われている。
舟で渡れば?と思うが、世界樹を守るために、強力な魔獣と複雑な水流で、強制的に沈没するか、岸に流される。ということらしい。
核石を集めることで、道が拓けるらしい。
王都は全部で六ケ所。
それぞれかなりの距離がある。
唯一の救いは、各王都が戦争をしていないこと。
魔獣が多いこの世界のだと、下手に土地を拡げるより、お互いに協力し合う。
また、どの国も隣に国があるため、下手に戦争を起こすと、後ろから寝首を欠かれかねない。
そういった状況も相俟ってのことだそうだ。
ハル達は一番近い大樹海の王都、フォレスティアを目指す。
ガタゴトガタゴト…
馬車に揺られ、遠くを見つめながら、後方確認をしているハル。
「けっこう遠いねんなー…」
欠伸を噛み殺しつつといった体である。
この馬車は元々ジルとシエルが旅立つときに、用意した物である。
町の付近は比較的安全なんだが、少し外れるとゴブリンやオークなど、そこそこ凶暴な魔物も出てくるようになる。
通常だと野営するには厳しい世界だが、ハルのバングルには家が入っている。
行商人から買った本で、魔法を強化(かなり高かった…)したおかげで、家の周辺に結界を張ることができる。
おかげで夜も安心して移動ができる。
ただし、固定式の魔法のため、移動しながら結界を張ることができない。
そのため移動中は警戒しながら進むしかない。
王都へ向かうまでに、3つの集落がある。
そちらで物資の補給をすることになっている。
各集落まで3日〜5日。
すでに三度、ゴブリン率いる魔獣の群れに遭遇している。
狩りの成果により、ハルは多少戦闘て魔法を使っても、倒れることはなくなった。
他のみんなとの連帯もあり、かなり安全に進むことが出来ている。
そんな折、上空にいきなり影が指す。
「あれは何や?」
ジルは即座に馬車を林道の陰に寄せる。
現れたのはドラゴンの亜種、ワイバーンである。
上空から火炎弾を放ってくる。
「アクアカーテン!」
水の膜が火炎弾を消す。
ユナが弓で翼と目を狙い撃つが、翼から放たれる突風に、矢がすべて落とされる。
「テンペストエッジ!」
ハルは真空の刃を複数作り、ワイバーンの翼を斬り刻む。
落ちてくるワイバーン。
ジルがプラントバインドで拘束し、ハルが後頭部から頚椎に向かい、神経を雷魔法で焼く。
異世界的な神経〆である。
首元と足首を切り放血。
血の流れる先は大きなボウルで受ける。
中にはワインを入れてある。
これで血が固まらない。
すっぽんの生き血ならぬ、ドラゴンの生き血である。
みんな引いた顔をしている。
「それ飲むんですか…?」
女性陣に聞かれる。
「一応こんままでも飲めるはずやけど、ブラッディソーセージとか作ろうかと…あかんかった?」
「そ…そうなんですね…実はドラゴンの血を飲むことは、男性にはよくある話なんですが…」
「あ!なら飲んでも問題ないってことやね!」
「男の人が飲むのは、精力剤としてなんですよ…」
顔を真っ赤にしたジルに言われる。
「ちょっ!そんなつもりやあらへんからねっ!?」
「ハルさんも若いですし、男ですからね…」
暫く気不味い空気感になってしまった。
後から聞いた話だが、かなりガチ物の精力剤で、飲むとおじいちゃんが子供を作ったとか、若い子は一週間止まらなかったなどなど、とんでもない曰く付きの品らしい。
たしかに味見に一滴舐めただけで、体がかなり熱くなった感じがする。
合間を見て、隠れて作ったブラッディソーセージが、後日この世界中の男性すべての、夢のアイテムとして出回ることになるが、そこはまた別の話。
ちなみにドラゴンの肉はかなり美味で、その日のうちにステーキにして食べた。
かなりの量があるので、残りはバングルにしまう。
ちなみにこのバングル、元々は入れるだけで、保存機能は特になかったが、行商人に高い金額を払い、保存機能や拡張など、色々とカスタマイズしてもらい、さらに便利になった。
そうこうしてるうちに、旅に出てから、最初の集落に着いた。
4日ほどかかっている。
「よぉやっと着いたー!」
「まぁまだ近いほうですよー」
「ジル姉!温泉あるかな?」
「確かあったはずよー」
と、ほんわかムードでホッと一息といった感である。




