1.始まりの街
枢機卿員第2位席のマレディオーヌは、ウェイバード国王宮の応接間のひとつへとノックもなしに扉を開ける。そこには彼女の無礼に意も介さず、すでにティータイムを嗜む女性がいた。
――この国の女帝マキナ・ウェイバード・ランブレイアだ。
紅茶の香りを楽しむばかりで飲むこともしない女王様へ「こいつやっぱおかしいやつだな」と思いながら、マーレは彼女の前にある空席へ乱雑に腰を下ろす。
お互い目的が一致したからこそ手を組んでいた関係だが、突如それを解消したいと我が儘を言い出したせいでわざわざここへ足を運んだのだ。
「…………おい、女王サマ。アタシはこれでも忙しいンだ。時間は有限ってなァ?」
さっさと本題を話せと言外に言えば、彼女はティーカップをテーブルへ置き、調教獣である猫の魔物を足元から膝の上に乗せると愛でるように頭を撫で始めた。
「そう――時間は有限。だからこそ余裕を持って好きなことに興じるべきだとは思いませんか?」
「あァ?」
「マレディオーヌ様。――わたくしはすでに目的を達しているのです」
どういうことだ、とマーレは内心首を傾げた。
マキナとマーレの目的は『薬草商会』会長であるラージが所持している“権利書”のはず。
確かに数刻前にラージ・ブランタークは堂々と街中で投降し、すでに身柄は教会が抑えている。しかし未だ権利書の在処は分かっていない。
「――何考えてんだァ、女王サマ?」腹黒いやつの考えてることは分からない。だからこそ警戒するように彼女を睨むが、やはり動じない。
「分かりませんか? すでにこの国の反乱分子は壊滅状態。反乱軍の指揮官であり薬草商会会長、ランファ・ブランタークの一人息子ラージは教会に投降――それだけでもう、この国で政府を敵に回そうとする商人はいないということです」
ランファが頭角を顕わしてから、商人協会は王族ですら媚びなければならないほど権威を得た。
この国の経済を回し発展させた。
それは喜ぶべきことではあるが、この国の王であるマキナにはそれを素直に受け入れることは出来ない。
王だからこそ。
王であるために。
何者かに脅かされる王であってはならないのだから。
ランファもラージももういない。
この国を支配のは――私でなければ。
――そんなマキナの考えを知らない、興味もないマレディオーヌは「ふゥん」と生返事しつつ逡巡する。
マキナが“権利書”などいらないと言うなら、それはそれで面倒事が一つ減る。
ただ気になるのはラージが投降してきたタイミングと、それから一人だったことだ。
マキナはラージが一人だったことに特に気にかけていなかった。「あのグアラダが死んだなら、おかしいことではないでしょう」と。しかしマーレはあのとき――あの瞬間、魔族が生まれたのを目にした。
そして……ラージが教会に投降しに来たとき、彼の瞳に絶望は映っていなかった。
(おかしなことばっかだなァ、おい)
魔族が生まれるはずがない条件下だった。更にマーレの持つ『証』にヒビが入っていたこともそうだ。
それに、――そうだ。そもそもラージとグアラダが和解していたのが一番不可解だ。
「第5位席が外したとは思えねェしなァ……」
「何か言いまして?」
「いんやァ? ただ女王サマ、まだ協力関係を解消すンのは早ェと思ってさァ」
「……教会とこれ以上利害が一致するような事、」
「あンだろォよ、一個だけ。――――新しい勇者の所有権が」
***
布を敷き詰めた床に、気を失った少女が横たわっていた。ティフィア・ロジストである。
元魔王からチャンスを与えられ、現在彼女は模擬体に精神を移して、ミファンダムス帝国へと戦争を止めに行っていった。
――お前は俺の忠告を聞かないな。
仕方ないやつだ、と髪をひと撫でする。
こうなることは分かっていた。ティフィアは一度決めたことはやり通す。失敗しても、挫けそうになっても……『勇者』であろうとする。
それが彼女の覚悟だから。
「ティフィア、大丈夫ッスかね?」
隣にやってきたレドマーヌは、言葉に反して心配してなさそうだった。
「きっと大丈夫だろ。あっちにはニアもレイもいる」
ニアはおっちょこちょいだが強いし、何かあってもリュウレイがカバーするだろう。
あの三人は存外、相性が良い。
だからこそ問題は―――俺たちの方にある、とアルニは理解していた。
元魔王ヴァネッサが椅子から離れる気配に、アルニも立ち上がる。
レドマーヌだけが急に空気が冷たくなり戸惑っていた。
「妾はこれでも我慢した方じゃ。おぬしがティフィアに知られたくないようじゃったから。……答えろ、魔法師。――おぬしが『勇者』か」
「…………ん?」
あれ、そっちの質問?
「さっきティーに『勇者は壊れてる』って言ってただろ。なんで俺なんだよ。疑うなら紋章確認してもいいぞ」
「おぬしは記憶をなくしておるらしいな。勇者である自覚がないという場合もあるじゃろう」
「いや、ねぇよ……。だったらまずガーウェイが気付いてんだろ」
『勇者の証』は体のどこかに浮かび上がる。それは絶対だ。傭兵団として何年間も一緒にいて、仲間たちが気付かないはずがない。
「むむむ」そんな眉間に皺を寄せられてもなぁ、とアルニは大きく溜め息を吐く。
「えーと……そもそも俺が『勇者』だと思った理由はなんだ? 勘か?」
「疑うのは当然じゃ! 魔族は“対”である人間の強い感情によって生み出される。その形にも影響は現れるのじゃ。特に魔王は勇者の“対”。妾がリウルの母親の姿を模しているのもそれが原因であり、魔王は勇者の肉親の姿をしておる」
勇者は幼少期に選ばれることが多いため、幼い子供にとって一番影響力があるのは“家族”がほとんどだ。
それはつまり―――
「俺が……アイリスの“兄”だからか」
「そうじゃ」ヴァネッサは頷き、「え!?」レドマーヌは驚愕する。
「ちょ、ちょっと待つッス! アルニさんとアイリスは兄妹なんッスか!?」
さっきヴァネッサがティフィアに話してるとき、今代魔王の名前を聞いた。そのときは偶然かと思った。珍しい名前でもない、別人かもしれない、と。
違うと思いたかった。
でも、そうじゃないのだとすれば。
「――俺は『勇者』じゃない。それは間違いないんだ。だけど…………、」
躊躇ってしまう。彼女たちに話してもいいのか、誰かに話が漏れてしまわないか。
そんな葛藤が見えたのか、ヴァネッサはこの部屋にだけ能力の『干渉操作』を使った。これで誰かに聞かれることも、カメラが『転移』を使って来ることも出来ない。
「妾を信用しろとは言わぬが、おぬしも情報が欲しいのじゃろ? ここにいるのは嘘吐くことも謀ることも苦手な魔族と元魔王しかおらぬ」
魔法師が魔法師に関することを言わないのは、自己防衛のためでもある。
魔法は魔術のように万能ではない。しかし、利便性で言うなら魔法の方が優秀なのだ。
「『魔王』は分からない。だけど俺がアイリスを魔族にした可能性は――ある」
「え……アルニさんが魔族をつくったってことッスか!?」
「魔族が生まれる条件――強い思念が必要なんだよな? 俺はたぶん、それが出来る」
「思念集合体を作れるということか? それとも一つの思念を強くすることが出来るということか?」
その問いに「両方」と返すと、ヴァネッサは唸りながら天を仰ぐ。
「ううむ。……魔法師は全員出来るわけじゃなかろう?」
「おそらく。ニマルカ――俺が前に所属してた傭兵団の魔法師なんだけど、その人は出来ないと思う」
「あ! あの子は!? サーシャって子はどうなんスか!?」
「あ~、そう言えばあの子も魔法師か……。どうだろうな、ニマルカの場合も長い付き合いの中でそんな感じがなかったから出来ないと感じただけだし」
「魔法師同士で分からないッスか?」
「魔法師自体そんなに会ったことないし、隠してる人もいるだろうから。俺が“それ”を出来ることが珍しいのか、当たり前のことなのかも分からねぇ。魔法のこともあまり話題にしたくないのもあるけどな」
「同じ仲間でも排他的ッスねぇ……」
「妾には分からぬのじゃが、何故そこまで隠す? 魔法師は利用されやすいと聞いたことがあるが、魔法をわざわざ利用する利点が理解出来ぬ」
質問されるとは思ったが、なんとも答えにくい。
濁すことも考えたが、ここまで話したならと正直に答えることにした。
「―――魔術は魔力の痕跡が残りやすい。魔術紋陣を使えば、その形跡が残る。……魔法は何も残らないんだ」
「?」
二人は意味が分からないと首を傾げる。
「つまり“暗殺”に向いてるんだよ」
そう、魔法は“暗殺”向きだ。何しろ痕跡が残らないのだから、犯人も見つからない。
魔法を上手く使えば、壁一枚隔てていようが、建物の外にいようが、特定の人物がどこにいるか分かれば風魔法で首を斬り落とすことも、火魔法で火だるまにすることもできる。
対象人物が寝てたり拘束されて動かない状態なら、風魔法で窒息させることもできる。
「精霊は魔術の干渉を受けない。結界があったところで、結界内に精霊を配置させれば魔法は使える」
これは以前サハディ帝国の『封印の間』で使った手法だ。あのときは俺も記憶がなかったから出来ることを覚えていなかったが、何故かリュウレイは知ってた。
リュウレイは魔術ヲタクだけど魔法にも興味はあったようだし、何か蔵書か記録にあったのだろう。
俺も魔術には興味あるから、調べられる環境があれば同じことしてただろうしな。
「暗殺……。人はよくやるッス。レドマーヌも見たことあるッス。魔法じゃなかったけど……人が人を殺してたッス」
何か思い出したのか、レドマーヌは悲しそうに顔を俯けた。
「しかし生まれたときから、それは共通認識として持っておるのか? 魔法師が魔法に関することに口を閉ざすのはそれだけか?」
「魔法師が利用されやすい理由は、……俺は父親から聞いた。あまり人前で魔法は使うなって。……――共通認識か。そうだな、魔法師には一つ、そういうのは確かにある」
だが、と続けて答える。「それは言えない」
「魔族にすら?」
「言えることがあるとすれば“共通認識はあるけど口外することは許されない”だ」
「何者であろうと関係なく、ということか。……ふむ、良いじゃろう。むしろここまで話してくれたことに感謝する」
「いや……。俺からも聞きたいことがある」
「なんじゃ?」
「――どうして『人間』相手にそこまで協力的なんだ?」
過去に勇者リウルと何があり、リウルの改心によって人間への憎悪が薄れたとしても――元魔王ヴァネッサは穏健派筆頭の魔族であることに変わらない。
「“穏健派”はなにを目的としてるんだ」
「なんじゃ、レドマーヌは話しておらんのか」
「そう言えば話そうとしてミルフィートに邪魔されたッス! その後も色々あって忘れてたッス」
レドマーヌもヴァネッサも人間への敵意は感じない。
しかし二人とも魔族だ。嘘は言わない、裏もないだろうが――『魔族』という存在は人間の思念によって生まれる。
思念は感情だ。人間の感情は不思議なことにポジティブなことは忘れやすい。それはつまり思念もまた集まったり強くなる前に消えやすい、ということだ。
反対にネガティブなことは残りやすい。強くなりやすく、集まりやすい。
「“穏健派”は戦争に反対ッス! だって『勇者』は人間を憎んでるのに、魔王軍と一人で戦わされて死んじゃうッス! そんな理不尽、レドマーヌは断固反対ッス!」
魔族は人間のネガティブな感情から生まれることが多い。
憎しみ。怒り。悲しみ。絶望。
そんな“願い”から生まれた魔族たちが――ティフィアが思い描いているような、手と手を取り合って共存しよう! なんて健気な考えをしているはずがない。
「――だったら戦争を無くして、好きなようにやれば良いと思うッス!」
純粋な歪みだと感じた。
“穏健派”が望むのは無秩序な戦争だ。形式などに拘ることなく、100の巡りも関係ないとばかりに、戦いたいときに戦い合い、殺したいときに殺し合えばいいと。
今までも魔族や魔物による被害はあったが、『勇者』と結界の存在によって最小に食い止められていた。
ただそれは戦争という形式があるおかげでもあるのだ。
戦争で『勇者』と魔王軍が戦うおかげで魔族の数が大きく削られるから。
勇者が選ばれる100年の間に人間と魔の者が小競り合いし、それによって魔族が増え、そしてちょうど『勇者』と『魔王』が現れた頃に大規模な侵攻をする。その繰り返し。
遙か昔から続く100の巡りをいきなり変えることは難しい。だが、今回は違う。
元魔王ヴァネッサの存在によって、魔族が派閥で分かれた。
戦争に参加する魔族、しない魔族。それが意味するのは―――次からの“100の巡り”の破綻だ。
魔王軍だけに魔族が集中しない。勇者が選ばれ魔王軍を壊滅させても、魔族の数はあまり減らない。
「……レドマーヌ、一応言っておくがそれはティフィアが望む“形”じゃないぞ」
「分かってるッス。でも魔族にとって“存在意義”を変えることは絶対に出来ないッス」
それはそうだろう、と内心肯定する。
戦争がなくなれば100の巡りは破綻し、そうなれば人間と魔の者の、血で血を洗う不毛な争いが続く。
そこに安寧も未来もない。
争いが続けば魔族も増えやすくなり、いずれ数に圧されて人間は絶滅だ。
「でも考えて欲しいッス! 魔族の中にも人間に友好的なやつもいるッス。さっき『鏡映し』の能力を使ったシュオルフも、もちろんレドマーヌだってそうッス!」
ぶんぶんと尾を振り、褒めて欲しそうにこちらを見つめてくる。
感謝しろと?……友好的な魔族もいるかもしれないが、それこそ少ないだろうよ。
溜め息を飲み込み、適当に頭を撫でてやりながら「アリガトナー」と棒読みで口にした。
どちらにせよ魔族や戦争の問題は、ティフィアも交えて話すべきだろう。
――そう言えば、ティーは大丈夫だろうか。
ふと床に寝てる少女を横目で盗み見た。深く目を閉じた彼女に変化はないが、戦争に参加すれば嫌なモノをたくさん見たりするだろう。
泣いたりしてないだろうか。いや、きっと泣きながらも彼女は立ち上がる。
…………アイリスとも、戦ってるかもしれない。
戦争を止めるために魔王と話しをするだろうが、戦闘は避けられないように思う。
(でも本当にアイリスは―――『魔王』なのか?)
そのときだ。
「……?」
「どうしたッスか、アルニさん?」
「精霊が怯えてる」
「む。何か不思議な気配が近づいてきておる。人間でも魔の者でもない。なんじゃ、これは?」
ヴァネッサも警戒するように周囲へと視線を巡らせ、レドマーヌはティフィアの側へ行き、念のため羽を使って結界を張る。
「…………気配がデカすぎる。建物の中で暴れるのは、ちと分が悪いのう」
「レドマーヌ。ティーのこと頼む」
「え、ちょ―――!?」
気配が近づくにつれて大きさが増しているのが分かる。
ヴァネッサとアルニはほぼ同時に部屋から飛び出す。ただしヴァネッサは窓を潜ると、宙を浮遊しつつ建物から離れていった。
「ず、ずるい!」
なけなしの魔力を使うわけにいかないので、アルニは駆け足で階段を降りて外に出る。
そして荒い息が整う前に、目の前に一つの人影が現れた。
それはまるで、アルニが出てくるのを待ち伏せしていたように。
「……ここで教会の人間と出会すと思わなかったな、さすがに」
「アルニ・セレット。なんのためにここへ戻ってきた」
長い前髪からのぞく、凍てつくような敵意剥き出しの瞳がアルニを睨めつける。
神官服をまとった青年は、すでに杖先を向けていつでも攻撃が出来る状態だ。
アルニは相手に気付かれないよう腰の短剣の柄に手をかけ、さきほど感じた不気味な気配の正体が彼ではないことを察する。
「俺のこと知ってんの? 俺はお前のこと知らねーけど?」
「私と君とは初対面だ。――だが、君の存在は8年前から気にくわなかった。君がいなければ……君がこの国に流れ着いてこなければ……っ!」
――ノイズと共に脳裏に過ぎる。
妹を抱きかかえ、必死に励ましながら海の荒波に何度も飲み込まれかけたことを。
アルニが魔法師でなければ、とっくに幼い2人は溺れて死んでいただろう。
「アルニはお兄ちゃんだから――アイリスを守ってあげてね」母の言葉と、アルニの腕を必死にしがみつく妹の存在は支えだった。
俺が守らなければ。
俺には守る力があるのだから。
アイリスだけでも――絶対に死なせてたまるか。
「―――、お前は8年前の“俺”を知ってるんだな」
「この国の神官なら誰でも知ってることだ!―――死神め!!」
簡略展開――火弾。
すでに魔術紋陣が刻まれた杖に魔力をこめることで、魔術発動に必要な式法則の構築を短縮し、杖先に火の弾が事象されるとアルニへと向かって放つ!
だが、それはアルニに直撃する寸前に止まった。
「!?」
「――俺を知ってるって言ったな? だけど『魔法師』への理解が足りなかったみたいだぜ?」
短剣を抜き、その剣先を神官へと向けると火弾は彼へと戻っていく。
神官はなんとか躱すが、服の裾がわずかに焼き焦げた。
――魔術は事象に変換する力だ。しかし精霊の持つ属性と同じ事象――つまり先ほどのような“火”なら、精霊を干渉させてある程度操れる。
ただし魔術で使われた魔力より、こちらが多くの魔力を餌にしないと精霊は動いてくれないが。
「――えーと、『死神』だっけ? 皮肉か? 俺がこんなに魔力と精霊を扱うのが上手くなったのは誰のせいだと思ってんだ?」
灰黄色の瞳が金色に灯る。
――アルニが魔法師でなければ、アイリス共々すぐに死んでいただろう。
それはグラバーズ国に流れ着いてからも、親切な面を被った街人に拾われてからも――。
(ああ、まるで……8年前に戻ったみたいだ)
この神官のせいだ。彼の言葉が少しずつ思い出してる記憶を鮮明に蘇らせてくる。
視界にうつるたくさんの光は精霊だ。精霊たちはアルニの感情に呼応するように集まってきて、その内のひとつへ魔力をあげれば、精霊は喜んで神官の青年の元へ。
「っ、ぅ? ぐ、ぅぅ”?」
突然首を押さえて口をパクパクさせ始めた青年は、堪えきれず地面へと伏した。充血した目でアルニを見上げる青年は、彼が嘲笑していることに戦慄く。
「これが魔法だよ。息出来ないだろ? 他にも肺を燃やすことも、心臓そのものを止めることだって出来るぞ」
「! ひっ、ぃ、ぃ」
「…………、」
精霊への魔力供給を止めれば、青年は噎せながら呼吸し、あれほど敵意をむけていた目には畏怖しか宿っていなかった。
ひどく、虚しい。
なんで俺がこんな感情を抱かないといけないんだ。
思わず舌打ちすると、青年はビビったのか這いずるように逃げ出した。
毎度更新ペース遅くてすみません……




