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勇者が死んだ世界を救う方法  作者: くたくたのろく
4章 墓標【後編】
213/226

予告

4章後編の予告です。




 過去は消えない。

 罪は消えない。

 記憶も、感情も、都合良く消せたらどれだけ良かったか。


 ―――いや、無理だ。


 例え都合良く消せても、俺が『魔法師』であることは変わらない。

『魔法師』である以上、俺は役割(・・)を全うしなければいけない。

 そして『魔法師』である以上、人間を信用してはいけない。


 ようやく目を醒ました気がした。

 ずっと夢を見ていた気がした。


 レッセイ傭兵団にいたこと。

 ティフィアたちと旅したこと。

 都合良く忘れた記憶と罪は、8年の月日を跨いで俺の元に戻ってきた。


 おかえり、と精霊たちが祝福してくる。


 精霊たちはずっと見ている。

 俺のしたことも、これからしようとすることも。


「―――言ったはずだよ、アルニ。おれと君は同じだ」


 過去は消えない。

 罪は消えない。

 俺が『魔法師』であることも――消えない。




***



「…………―――あのね、サーシャたち魔法師(まほーし)はぜったい命をこわしちゃいけないの」

 少女の言葉にガ―ウェイはカメラへ視線を向ける。

「俺もニマルカ(仲間)から聞いたぜ? 魔法師には『役目』っつぅのがあんだろ。そんでもって元魔王とグラバーズの王族から――歴代勇者はリウルを除いて『魔法師』だったこともな」


 ガ―ウェイはすでに確信を持っている。


 100の巡り、勇者、勇者の証―――それがどういうシステムか。

 ただ『勇者計画』の全貌が見えているわけではないのだろう。だからこそ、カメラを問い詰めている。


 ふっ、とカメラは小さく笑うと空を見上げる。

 暗雲が黒い涙を落とした。




「この黒い雨が何で出来てるか知ってるかい? これは――勇者の――いや、『魔法師(・・・)たちの魂(・・・・)だったモノだよ(・・・・・・・)




***




「おれの“()”であるリウルは『勇者』として、君は『魔法師』として――裏切られ、踏みにじられ、大切なモノを奪われた」


 俺は、助けて欲しいわけじゃない。

 過去も、罪も、『魔法師』であることも消えないから。


 だから俺は――――


「――おい、亡霊。聞こえてんだろ。約束果たしてやるよ」


 8年前に交わした約束。

 果たせずに保留されていたそれを。




黒の精霊リウル(・・・・・・・)。――俺と“契約(・・)”だ」


「ずっと待ってたよ、その言葉を」




***


8年前にアルニが燃やし、滅びた街。そこから少し離れた場所にある遺跡の入り口前の、大きな柱の裏に小さなお墓があった。

 当時まだ幼かったアルニが、リウルの遺体を少しずつ運んで、ここに埋めた。

 木片に拙い字で「ゆうしゃ」と書かれたそれを指でなぞりながら、ティフィアはそっと目を閉じた。

「アルニは、やっぱり優しいよ……」


 10歳くらいの子供が、名前も知らない成人男性の遺体を運んで埋めて。弔うために墓を作って。

 今までだってそうだ。

 ここまでティフィアとの旅を付き合ってくれたことも。

 サーシャちゃんを守ってくれたときも。


 ―――その優しさが、きっとアルニをたくさん傷つけた。


 ティフィアが立ち上がると、右手に光が収束し剣の形となった。

 それを後ろで見ていたレドマーヌは、心配そうに「ティフィア……」と声をかけるが。

「僕、決めたよ」

 振り返ったティフィアは、今にも泣き崩れそうに歪んでいたが、それを無理やり堪えて小さく笑みを浮かべていた。


「僕の手で――黒の精霊も、そして…………アルニのことも、殺す(・・)







次話から4章後編、始動


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