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「お客様の中に、お医者様はいらっしゃらなきゃダメだろ法」
「お客様の中に、お医者様はいらっしゃらなきゃダメだろ法」とは、2040年に制定された、日本の航空法である。
これが制定される以前、航空機の中で乗客が病気により倒れた場合の対処法は、CAが「お客様の中に、お医者様はいらっしゃいますか」と声をかけ、見つかった医者に処置を頼むという方法のみであった。しかし、お客様の中にお医者様がいらっしゃらなかった場合、即時の病院搬送が困難な航空機内においては患者の命が危機的である、ということに気付いた政府は、急いでこの法案を出し、早急な可決に至った。
この法は「医師の資格を持つ乗客が乗っていない飛行機は離陸できない」というものであり、当然多くの飛行機が離陸を見送るという事態となった。結果、早急なお医者様のお客様の確保を必要とした航空会社によって多数の医者が呼び出され、意味もなく日本中、世界中をあちこち往復する羽目になった。
中には「お客様の中にいらっしゃる専門のお医者様」を生業とする医者も登場し、医者の数の底上げを迫られた日本は医学教育を強化、最終的に、日本の医学は大きく進歩した。