「辞書名付け法」
「辞書名付け法」とは、2097年、氾濫するキラキラネームを問題視した日本政府が出した法律である。
外国人のような響きと字面から予想もできない難読さは酷くなる一方(例:華天使=アリス)であり、日本に生まれた事を誇りにできるような美しい名前を取り戻す必要性が、教育委員会や文科省などから叫ばれていた。
しかし、1990~2010年代の名前では「ダサい」という認識が世間でなされており、それすらも思い切って打開し、かつ「美しい日本語」を重視するために、政府は命名に「広辞苑」を用いることに決定した。
この法案によって、出生の届けを受け取った役所の職員が適当に広辞苑を捲り、ページに適当に人差し指を置き、そこにあった単語を新生児の名前とすることになった。
これによって、親に不本意な名前を付けられ後から改名するという事件もなくなり、名前はバラエティ豊かになり被ることは非常に少なく、かつ完全ランダムという平等性からも、国民からは大きく支持された。
中には「糖尿病」「混迷する」「エコマーク」などユニークな名前もあれば、「山紫水明」「黒南風」「藍微塵」「色なき風」といった非常に美しい名前もあり、子供の名前が決定する瞬間は、親が最も緊張するイベントとして盛り上がった。
ちなみに、ネットで投票された「何とも微妙な名前ランキング」第一位は「濾過」である。