表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

第一回 暇日の埋木

緒言、時間あらぬ故、著くに能わずなり。


丹たる陽は、西に俯状うつむきざま。家屋がかしらは紅に仄めき、宵は東路に迫る。

して、一見して街が景観にそぐわぬ、謂わば襤褸のアパートがある。中略。

窓辺に目を刺せば、御両者の若人、談ずるに花重く、かっかっかっか笑う笑う。

たまには小説の一つ、サラリとながしてくれないかね。」

「莫迦、おれにゃ才気の欠片も微塵にいよ、言うだけ喉が渇くのみよ」

伊れら、文学の腕と来たら、全然まるでなし。だのに夢だ、希望だ喚き、両隣の人は不眠であるという。

「ほら、簡潔な戯曲なんど、お前の向きな気もするが・・・奈何が・・・」

「チェホフかい、シェイクスピアかい、洒落っぽくて気がひける。」

戯曲をおいそれと勧めたるおとこ、廿も半端過り、尚も勤めに興を起こさぬ無頼。寧ろ文学の腕を、意味あらで信用しんじ、職文学是に定めぬる、阿呆、亦国の愧じぞなりたり。(而下平田とす。)

後手の二十歳はたち、是も春盛り、花の香ぷんぷん、而るもそぐわぬ、非自信は見るも哀れ、マア春が傷哉、うふふ。(而下森本とす。)

「洒落も何も、明治の半ばにゃ流行だったんだぜ。・・・にしても、お前もう三月は著いて非いだろう。そろそろ、頃合だと思うんだが・・・なぁ。」

「頃合なんど、己にゃない。」

「ふん、性悪。」

森本は眼をチラりと右りへ下すと、窓辺はからり、紅に冴える。

「ホラ、彼の日夕を詩歌にでもせば如何かしら?」

平田は薄笑にておもてを目配す。

「フン!詩なんどもう懲々さ。」

森本は拗ねて頭を振る。

森元の説明を些少ながらすると、伊れはいとひねくれていて、今迄人付合いを巧みに為したる事非ず、平田は其中唯一無二の友であり、只一人の理解者でもある。

「マア、不気張きばんなや其中好いアイデアが水面に浮くよ。」

平田は白歯をきらり、口元を緩めている。

森元はへの口にフン、ト鼻笑わらう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ