男が死んで、そして。
今日も遠くから、太陽が顔を出してきた。
「ああ、朝か・・・起きないとな」
会社勤めの彼は眠気を覚ますために顔を洗う。
トイレを済ませ、朝食を食べ、いつものように背広に着替えて家を出ようとする。
「おっと、今日は燃えるゴミの日だったな」
右手に一週間分のごみが詰まった袋を持って外に出る。
ゴミ捨て場に同じ地域の老人がいたので、彼は挨拶をした。
「おはようございます、良い天気ですね」
「おはよう、今日は一日中晴天らしいなあ」
軽く挨拶を済ませた彼は、会社に向かって歩いて行く。
途中、隣の家に住むおばさんとすれ違ったので挨拶をした。
「おはようございます、朝の散歩ですか?」
「そうなのよ。この年になると足腰が弱くなってねえ」
「そんなことないです、まだまだお若いですよ」
「あら、そうかしら」
軽く挨拶を済ませ、会社に向かう。
会社に着いた彼は、上司に挨拶をした。
「部長、おはようございます。今日も一日よろしくお願いします」
「おはよう。今日も仕事、頑張ってくれよ。」
会釈をして自分の席に座る。
「よお、今日も元気そうだな」
同僚が話しかけてきたので、返事をする。
「ああ、元気だけが取り柄だからね」
「ははは、違いないな」
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
いつもと変わらない日常、それが何年続いただろう。
どこかで、井戸端会議の声がきこえてきた。
「ねえ、ききました。彼、死んだそうね」
「そうらしいわ」
「優しくて素敵な方だったのに」
「そうね、働きすぎが原因かしら?」
「ぷっ、あはははは。働き過ぎって、そんなわけないでしょう。ただ古かっただけよ。」
「これだから旧式は嫌よね。やっぱり何でも新しい物が良いわ。」
彼が死んでも悲しむ者はいない。
なぜなら彼は、ロボットだから・・・。
「ロボットなのに死?」というツッコミはご勘弁を!