閑話:ちょっとした疑問
少し短めです。
本編全然進んでませんが、後悔はしてません!
野営予定地に付いて、早速野営の準備が始まる中、怪我人さん達は、馬車の所まで来てもらうように呼びかけた。けど、遠慮があるのかなかなか来てくれない。
しょうがないから、忙しそうな皆さんの間をチョロチョロとして、治癒魔法の押し売りを初めてみた。
見た目で明らかに怪我してる人は勿論、骨折や内臓系の損傷も、体内の魔力の流れを覗けばバッチリ丸見え。逃がしませんとも。
ていうか、なぜ逃げる?
痛いの嫌でしょ?一瞬で治るんだよ?素直に魔法受けようよ。
「なんと言ったら良いんですかね…。希様の治癒魔法を受けるとくすぐったいような嬉しいよう、微妙な気持ちになるんですよ。母親に抱かれてた幼い頃を思い出すような……。
俺の部隊は前線対応が多いので、みんな一度は経験してるから、なんか気恥ずかしいんでしょうね」
治癒魔法を受けながら、アリアスが苦笑と共に教えてくれる。
まぁ、だいの大人が『いたいのいたいの飛んでいけ〜』は、流石に恥ずかしいのかな?
でも、何回も繰り返したせいで呪文として馴染んじゃったんだよね……。
今さら別のに変えるのは無理かも。
うん。諦めて慣れてもらおう。
痛いよりは絶対良いはずだし!
広範囲での治癒も出来るけど、魔力循環が面倒なんだよね。無駄も多いし。
そんな感じで自己完結すると、その後も怪我人を追い回し、最後の怪我人を完治させる頃には、夕食が出来ていた。
具沢山のスープは、厚切りベーコンがいいダシを出していて野菜の甘みが引き立っている。
パンは長期保存のきくフランスパンみたいな感じで、チーズをのっけて焚き火で炙るとパリパリになって美味しかった。
なにより雰囲気って偉大だ。
焚き火を囲んでお外でご飯はキャンプっぽくて楽しいよね。
そういえば悠生とも良くキャンプ行ったな〜。最初は上手くテントが張れなくて四苦八苦したっけ。
何を呑気なことをって言われそうだから口には出さないけどね。
空気読みます。大人ですから。
けど、陽哉君に「美味しそうに食べるよな」って呆れ顔された。なぜだ。
魔法使うとお腹が減るよね。そういえば、疑問が一つあったんだった。
「魔獣って食べれないの?」
食後のお茶を飲みながら何気なく尋ねれば、そばで食べてた騎士の何人かが咽せた。
「アレを見た後で、良くそんな発想が出るな」
陽哉君の顔も引きっつてるし。っていうか、見たからなんだけどな……。
「いや、なんか猪みたいなの居たし、味も同じような感じなのかな〜って、素朴な疑問が。」
そんなに変なこと言ったかな?
みんな固まってるけど。
「確かに、魔獣は野生の獣が魔穴に飲み込まれて変質したものだって説はあったが……」
アリアスが眉間に皺を寄せながらも答えてくれる。へ〜、そんな話あるんだ。
「良くラノベとかだと美味しく食べられたりしてるよね。食べないにしても、皮とか牙とか利用しないの?」
更にのほほんと月乃ちゃんが追撃すれば、「ラノベ?」と首を傾げながらもざわめきが広がる。
魔獣は人を害する物で、倒すのにも一苦労。その死骸を有効活用なんて考えたことも無かったんだろう。
魔物の死骸は消えるけど、魔獣の死骸は残るため、炎の魔法で燃やし尽くすのが今までの通例だったそう。
「そうだな。食べるのはともかく、毛皮は中々刃を通さないほど硬いし、牙もそうだ。加工できればいい素材になりそうだよな」
思案顔で陽哉君も同意を示す。
………食べるのは除外なんだね。
「とりあえず、帰ってみたら上に上げてみるか。勇者様の提案とでも付け加えれば、無下にはされないだろうし」
アリアスがまとめてその場はお開きになる。
その後、各種魔獣の皮や牙が素材として加工されるようになったり、意外なことに美味しかった猪型魔獣の肉料理が国の名物になるのは、また別のお話。
****************
「今日のご飯は希スペシャル〜〜!!」
「凄いね〜いつの間に作ったの?」
大鍋にトマトベースのスープがたっぷり作られ焚き火の火にクツクツと良い匂いを立てていた。
「アリアスに手伝ってもらってね」
どんどんお皿についで配っていく希の手伝いを黙々とするアリアス。
隊長自ら給仕され恐縮する騎士たちにも一通り皿が配られるのを確認して希は笑顔を浮かべた。
「どうぞ、召し上がれ」
聖女様とはいえ、幼い少女の作った食事ということで、恐る恐る口に運んだ騎士達の目が驚きに見開かれた。
美味い!!
野菜の甘みとドライトマトの酸味が見事にハーモニーを描き、そこに肉の旨味がえもいわれぬアクセントを加えていた。
トロトロになるまで煮込まれた脂身の多い肉は口の中に含めばホロリと崩れた。
夢中で掻き込み、次々にお代わりする騎士達に満足そうに頷きつつ、希も食事を開始する。
「でも、本当に美味いな。特にこの肉。柔らかく煮込む大変だったたろ?」
隣に座る陽哉の言葉に希はニッコリと笑った。
「ちょっと、魔法使ってズルしちゃったの。美味しいなら、良かった」
「うん。スッゴイ美味しいね!豚肉?」
大き目にカットされた肉を頬張り首をかしげる月乃に希は笑顔で爆弾投下する。
「ん?さっき倒した猪っぽい魔獣さん。アリアスに取ってきて貰ったんだ〜」
「「「「ッッッッ!!??」」」」
食事をしていたすべての人間の手が止まった。
「今………なんて」
みんなの気持ちを代表して陽哉が恐る恐る尋ねる。
それに希はニッコリと笑顔を返す。
「だから、さっきの魔獣のお肉。ちゃんと毒がないかサーチしたし、寄生虫いても嫌だから浄化魔法もかけたから大丈夫だよ?
料理する前に、アリアスと2人で毒味がてら焼いて食べてみたけど美味しかったし、未だになんともないからコレはイケると思って」
尋ねられるであろう懸念を先に怒涛の勢いで潰して、既に空に近い大鍋を見てから、呆然とするみんなをぐるりと見渡す。
「ね?美味しかったでしょ?」
答える言葉は無かったが、以後、隊列の食事に新鮮な肉料理が加わった。
後半部分が書きたくて………。
猪型魔獣は猪と豚の中間な感じのイメージで。
餃子とかも美味しそうと思ったけど、野営だと無理だろうとポトフ系に。
美味しかったし安全性も確認した後なので陽哉君も怒れなかっただろうかと( ̄▽ ̄)
希のドヤ顔にはかなりイラついたでしょうが(笑)