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帰還

すこし短いですが。

よろしくお願いします。

「ホンマ堪忍してや。なんか出たらあかんモンがイロイロ出るかと思ったわ」


月乃ちゃんに抱かれながら警戒した目でコッチを見ているトトを睨みつける。

「出たら良かったのに。少しは頭への血の巡りも良くなるんじゃ無い」

「ヒドッ!なんちゅう言いぐさや!動物虐待反対!!ッキャン!?」


ギャンギャンと月乃ちゃんの背中に隠れながら、顔だけ出して騒ぐトトに魔力の小さな塊を飛ばして額にヒットさせる。

「トト、煩い。陽哉君が起きるでしょ」

痛みで悶絶する柴犬もどきをジト目で見れば、漸く大人しくなった。

現在、王都を目指して馬車で移動中なのだ。


行きは馬で移動していた陽哉君は、現在馬車に乗り込んでいる。

魔力の枯渇ギリギリで、とても馬に乗れる状況では無いのだ。

と、いうか、強引に膝枕して横にしたら、直ぐに寝入ってしまった。

寝て回復が1番早いんである。


「トトがもう少し詳しい情報を上手く伝えてたら、こんな状態にはなってなかったと思うの」

サラサラの黒髪を撫でながらトトに不満をぶつける。

何がエイって突き立ててた、よ。


「せやけど、聞かれんかったし勇者がどないして剣使ってたかなんてホンマにしらへんもん。さっき言ったんは、ワシの感覚やし」

ションボリと俯くトトに悪気があった様には感じられ無いし、陽哉君の現状に本気で落ち込んでいる様にも見える。


確かに、勇者がどうしてた?とかしか聞いてなかったしね。

感覚的なものなら尚更、人がどう感じてたかなんてわかんないよね。

って、そういえば。

「トトも魔穴封じれるの?」


「ちっこいのならなんとかなぁ〜。不思議なことじゃあらへんやろ?魔術師の兄さん達だってやっとったんやから」

アッサリと頷かれた。

この黒柴擬き、本当に何者なんだろう。


確かに、魔術師は呪文詠唱によって魔穴を塞ぐことは出来るらしいけど、数人がかりでやっとって話だ。

サーフィス君でも出来ないらしい。まぁ、それは光属性を使えないってこともあるんだろうけど。


光魔法は治癒や浄化の魔法で、属性を持っている人が少ないのが特徴だ。

王族や一部貴族、稀に庶民にポンっと強い力を持つ子供が生まれたりするらしいけど、珍しい力なのは確かだ。

ちなみに、異界から召喚すると高い確率で強い光属性を持つらしい。

魔穴を塞ぐには光属性が必要で、だけど、光魔法を使える人はこの世界には少ない。

だからこそ、勇者を召喚する、てことみたい。


「じゃあ、トトはどうやって魔穴を塞いでるの?」

「ん〜?魔穴の大きさ確認して〜、こうやって手の中にその大きさにあったサイズの光属性の魔力を集めて〜、穴塞ぐ感じでエイって投げつけるんや」


小ちゃな手を振り回しながら身振り手振りで教えてくれる様は可愛くてウッカリ和んだけど……、やっぱり最後はエイなんだね……。

まぁ、最初の説明よりは分かりやすいけど。


「魔穴に合ったサイズの見極めの仕方は?」

「……なんとなく?」

首傾げられた。

うん、そうくると思ってた。


どうも、トトは本能で魔法を使ってるので、、やり方とか統計だった説明は上手くできないみたい。

私達が「どうやって息してるの?」って、聞かれるみたいな物かな?

それは、答えらんないよねぇ。


「経験で覚えるしかないんだろうけど、のんびり経験値あげてる余裕もあまりなさそうだし……どうしたものかね、コレは」

ツンだ感、ハンパないなぁ。

倒れるの覚悟で、毎回多めに叩き込むしかなさそう。


「もひとつゆうなら、兄さん、力を奥に注ぎすぎや。ホンマに入り口部分のみ塞ぐ感じでやらんと、魔穴に魔力、全部吸い取られるで?」


悩んでいると、更なる初耳情報が。

もう、小出しにするのやめて欲しい。

ちっとも計画が立たないし!

「どういう事?」

「どういうって……?

魔穴は負の感情が何かのきっかけで一か所に溜まった影響で空間に切れ目が入り、別の世界へと繋がったものやろ?

で、向こうの生物がコッチに出てきたんが魔物。流れ込んだ向こうの大気に触れてコッチの生物が変化したんが魔獣や。

奥の方に力注いだかて、1つの世界を埋め尽くす魔力持っとる人間なんかおらんし、そもそも向こうの世界全体に自分らの魔力満たした所で何の意味も無いやん?

せやから、入り口だけ塞いで向こうから干渉出来んようしとるんやろ?」


さも当然の事のように不思議そうな顔でもたらされた情報は全て初耳で、月乃ちゃんと顔を見合わせる。


「コレって魔穴に対する重要な新事実?それとも、私達が知らされてなかっただけで、実は普通の情報?」

困ったように眉を下げる月乃ちゃんにコッチまで頭が痛くなりそう。

多分、私の顔も微妙な事になってるんだろうな……。


私達が受けた魔穴の情報は、全てが「不明」で、対策も昔から伝わっていた呪文詠唱でどうにか塞げる。後は勇者や聖女の力に頼るしか無いとの事。

いろいろと推測は上がっているが、断言はでき無いという不確かなものばかりだった。

そんな中、トトはシッカリと断言した。と、いう事は、前勇者がいた300年前は、この情報は当たり前だったという事だろう。


「分かんない。けど、どっちにしろ確認しなきゃだし、急いでお城に帰ろう。で、確認してから考えよう」

無いと信じたいけど、もし、この情報を意図的に隠されていたのだとしたら、信頼関係にヒビが入りそうだ。


知っていても知らなくても、確かに「魔穴を塞ぐ」という、私達がする事にはあまり関係無情報かもしれ無いけど。

感情的に割り切れるかは微妙。


本当は、いろいろ知ってそうなトトからもっと話を聞いた方が良いんだろうけど……。

人生33年。

必要最小限の対人スキルしか築いて来なかった私にはこの山は大きすぎる。

ここでいろいろ悩むよりも、当事者全員と相見えた時に解決した方が、きっと変な齟齬も避けられるはず。

うん、そうに違い無い。

決して、問題を棚上げにして逃げたわけじゃ無いからね!


どんよりと黙り込んだ私と月乃ちゃんをみて、トトは不思議そうに首を傾げているものの、何も言わずにくるんと丸くなって眠り始めた。

なかなか空気を読むやつである。








読んでくださり、ありがとうごさいました。

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