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ぼっち勇者

作者: 沢内翼

 伝説の勇者のお話です。

 勇者様は王様に選ばれて冒険に出るまでは、ただの町人でした。

 勇者に選ばれた日、王宮はパーティーでした。トランペットが鳴り響き、王様から庶民までが勇者を主役にした宴を楽しみました。王様は気持ちばかりの武器防具を渡しました。

 街を出た勇者様は淋しさを覚えました。魔王を倒すまで帰ってくるな、と街中の皆から言われた気がしたからです。

 勇者様は冒険の途中、街々で歓迎をされました。街から街へ移動中、モンスターに襲われて傷ついていても、勇者様歓迎の宴は延々と行われました。勇者様は休みたかったのにです。

 勇者様が洞窟を探検していたときのことです。洞窟の中はモンスターの巣窟。次から次へとモンスターが現れるのです。勇者様はモンスターの攻撃を受けながら、モンスターを倒します。

 あるモンスターを攻撃したとき、勇者様は一撃で倒すことができませんでした。すると、モンスターの周りに別のモンスターが集まります。勇者様はほかのモンスターがそのモンスターをかばっていることに気づきました。

 勇者様は思わず逃げ出しました。モンスターの群れをすり抜けて、洞窟の外まで。モンスターの爪で傷ついた右足を引きずりながら。

 近くの街に戻った勇者様は驚きます。勇者様の怪我に関して、気味悪がる人こそいれ、心配する人がいないからです。どうやらみな、怪我をしても平気だと思っているようでした。勇者様もそこまで超人ではありません。

 勇者様はひどく悲しみました。英雄、英雄と皆は自分を崇めます。しかし、それだけなのです。怪我の手当ても、武器防具の手入れも、すべて自分で行います。勇者だからとサービスされることがないどころか、少し高い値段を要求されます。勇者様はこういうとき、すごく悲しくなります。しかし、勇者様はそれでも戦うのです。

 誰かが悲しむのを防ぐために、誰かが笑える世界を作るために。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読ませていただきました。 私はゲームには詳しくないのですが、何となくレトロなTVゲームのイメージが浮かびました。でも勇者に暗示されているものを、たとえばトップアスリートなどに置き換えれば、…
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