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宝玉




それから、ガンヒはこれまでの事を説明した。

辺境の街で結婚式の祝福を頼まれ、出向いたところカヤに会った事。カヤ自身もカヤの周りの者も、宝玉持ちである花嫁も、無色を宿していることに気が付いていなかった事。そして、カヤを連れて旅をしている間、自らの宝玉の力が目に見えて強くなっていった事。

話を聞き終わると、ロクショウはうぅむ、と唸った。机を見つめながら、何事かを考えている。

カヤは、なんだか考えていたのとは違う話になってきたな、と思った。

ロクショウには、カヤが無色を宿している事を疑っている様子が全くない。むしろ、カヤが無色を宿している事を前提として、これから何が起こるかを、何をするかを考えている、そんな様子に見えた。

やがて考え終えたらしいロクショウは、カヤの方を見た。


「カヤ殿。」


「はっ、はい!」


カヤは動揺しながら返事を返した。まさか偉い人に敬称付きで呼ばれるとは思っていなかったのだ。


「貴方はどうやら、無色を宿すお方で間違い無いようだ。

 だがガンヒの話を聞く限りでは、貴方は全く納得していないのだね。」


「は…い。私は、宝玉持ちの方は、ガンヒ様とお仕えしていたお嬢様しか知りません。

 しかし、お嬢様は一度たりとも、私にそのような事を言われたことはありません。」


「ふむ、無色を宿す者について知るものは限られている。だが知らなかったにしても、宝玉持ちであるのならば貴方が傍にいるだけで、その力を感じ取ることができるだろう。

 しかし、それならば、貴方には目に見える形でその力を示した方が良いのでしょうな。」


ロクショウは語った。

カヤ殿、貴方は宝玉持ち、いや『宝玉』についてどれほどご存じか。

『宝玉』とは不思議なモノでな、石のように見えるが石ではない。貝の身を覆う貝殻とも、獣の角や牙、人の歯や爪や骨とも違う。

ヒトの体から生じる上、持つ者と持たぬ者がいる。

そしてな、宝玉をその身に宿す者は、必ずと言っていいほど力を持っている。

祝詞を唱え然るべき手順を踏めば、水が湧きだし、炎は燃え上がり、雷が落ちる。神力を得て鬼神のごとき力を振るう者、手をかざしただけで死を待つばかりの病人を癒す者もいる。

貴方は、宝玉持ちの死後も宝玉が遺される事を知っているだろうか。


もちろん知っている。

カヤの仕えるお屋敷の家宝は、過去の宝玉持ちが死後に遺したとされる宝玉だった。

カヤが見た事のあるものは、フキのひいお爺さん、4代前の領主さまが遺した、藤紫色の宝玉だった。保管場所は領主さましか知らないらしい。たとえばこの前の結婚式のような、特別な祝い事のある時にだけ身に付ける大事なものだ。


次にロクショウは驚くべき事を言った。

では、これは知っているかな。

力を持たない者であっても、宝玉を身に付けることで力を振るう事が出来るのだ。





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