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デーガントラ寺院



聖地デーガントラ寺院の開祖は、『宝玉持ち』、いや『宝玉を宿して』いたと伝わっている。

伝説では、開祖は旅の末に岩肌広がる荒野に辿りついた。開祖が踵で大地を叩くと見る間に水が湧き出た。水面を叩くと辺りは草地と化し、水に浸りながら寿いだ時には木々が生い茂ったと伝えられている。

茶色い土と岩だらけの荒野に突然現れた緑の塊、この場所こそが聖地であり、その中に聳える何本もの尖塔がデーガントラ寺院なのだ。

こんなに大きくて立派な建物、カヤは初めて見た。村のお屋敷と、フキの婚家の屋敷を合わせたよりもまだ大きい。村が丸ごと入るかもしれない。

ここが礼拝堂で、ここが祈祷所、などと簡単に案内しながら、ガンヒは奥へと進んでいく。

やがて、尖塔の中の一つに辿りついた。

尖塔の螺旋階段を上へ上へと登り、やがて大きな扉の前に着いた。扉の脇には緑色の紐が掛けられている。絹だろうか。つややかな光沢があり、両端には立派な房が付いていた。

カヤが紐を見ているのに気が付いたガンヒは、ご不在の時はあの紐で扉を封じておくのだよ、と教えた。

ガンヒは真剣な顔で告げた。


「カヤ、今から貴方を私の師父であるロクショウ様に会わせます。

 ロクショウ様は無色を宿す者についてより深い知識をお持ちだし、貴方の今後の身の振り方についても相談に乗って下さるでしょう。」


「でも、ガンヒ様。今後も何も、私、聖地での用事が終わったら村に帰りたいんです。

 それに無色を宿してないってことがはっきりするだけだと思います。」


「それは、これからわかりますよ。」


ガンヒが扉に付けられた叩き金を鳴らすと、中からは男性の声がした。

カヤが部屋に入ると立派な石の机があって、その向こう側に領主さまより年上の男の人が座っていた。両側の壁は本棚に覆われていて、その全てに書物が詰め込まれている。机の後ろの壁は窓が付いていて、明るい陽光と緑の木の葉が見える。

男性はガンヒを見ると破顔した。


「おお、ガンヒではないか。ずいぶんと早く…」


言いかけて、カヤを見た瞬間に表情が凍り、言葉は途切れた。


「お久しぶりです、ロクショウ様。

こんなにも早く戻って参りましたのは、彼女についてご相談があるためです。」


「そう…か。相談…、それはそうだろうな。」


ガンヒが声を掛けると、ロクショウは動揺から立ち直ったようだった。


「まあ、とりあえず座りなさい。茶でも入れよう。」




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