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異世界戦争~日本の歩み~  作者: Venus
対馬海賊船出没事件
9/18

戦闘行為

西暦2025年 3月15日



「しょ、衝突します!」

「速度を上げろ!」

 次の瞬間、不審船アンノウンは巡視船と衝突。コンパクトな印象を人に与える巡視船とはあまりにも不釣り合いな時代錯誤的な帆船。それらが衝突したとき、不審船の方からサーベルなどで武装した、いかにも海賊と言った容貌の男たちが飛び乗ってきた。


「全員、殺せぇぇぇええっ!!!」

「ッ!?」


 辺りに響き渡ったあまりにも物騒な言葉にゾクッと背筋に冷たいものが走った。


「………船長!!」

「分かっている!発砲を許可する!すぐにだ!」


 

 森口はまずい、と思った。


 こんな大人数で掛かって来られると厄介だ。見たところ、30人以上はいる。応援を呼ぶか。


 そう素早く決断を下し、何気なく辺りを見回した時、絶句した。

ちょうど三人の保安官が同時に崩れ落ちたのだ。海賊は剣の届く範囲にはいない。


「銃を隠し持ってるのか!?」


 くそ、まずい。


 森口は通信機に向かって叫んだ。

『メーデー、メーデー!こちらはあたご!あたごである!メーデー、不審船から攻撃を受けた!メーデー、こちらの位置は対馬南西部近海!緯度及び経度は不明!メーデー、こちらは不審船と交戦中!負傷者多数、負傷者多数!応援と救助を要請する!応援と救助を要請!乗員は32名、救助を求む!』

『…………!?』

『突入部隊の人員多数が負傷!すぐに応援と救助を!繰り返す!』

『ッ了解!』

『メーデー、メーデー、メーデー!こちらは海上保安庁巡視船あたご!メーデー、こちらの位置は対馬南西部近海!緯度及び経度は不明!こちらは不審船と交戦中!乗員は32名!救助を求む!オーバー』


 メーデーとは、人命が危険にさらされているような緊急事態を知らせるのに使われる言葉だ。緊急事態でない場合に使うことは法律で厳しく罰せられる。一旦メーデーが発信されたらその周波数では救助の支援となる通信以外、一切の通信は許されない。このように重大な意味を持つため、生命や乗り物に差し迫った危険がある場合にのみメーデー呼び出しが許される。その言葉を森口は連呼した。

 それがいかに緊急事態であるかがよく分かるだろう………


 



 保安官たちは各々防衛本能に従い、89式5.56mm小銃やS&W M39自動拳銃を発砲した。



「各員、自衛するんだ!こいつら、危険すぎる!!」 

 悲鳴のような声も上がった。




 保安官たちは油断していた。海保は準軍事組織だ。装備も陸の警察よりも充実している。しかし、海賊たちにはその理屈は通用しなかった。

 銃なんてものを知っているはずもないのだから―――――!





 すぐそこまで敵が迫っていたことに保安官は無我夢中だったのだろう。ぱぁん、という銃声とともに敵が崩れ落ちた。


 小銃を持った海上保安官は口々に叫ぶ。

「発砲せよ!」


 頭目は内心、驚いていた。圧倒的だと思われた戦闘がすぐに持ちこたえて反撃してきたことに。


「何なんだ、あの武器は!?」


 反撃を受け、海上保安官も海賊たちも等しく混乱した。

 当然だ。銃を見たこともないのだから。


 保安官、そして海賊の入り混じった船上での戦闘は血みどろの闘いとなった。多数の海賊と保安官。船上に銃声が響き渡る。白兵戦では海賊の方が強いがやはり文明の利器には勝てないようで海賊たちは次々と射殺されていった。






 あたご巡視船船長の森口は焦りの表情を浮かべていた。


 こんな戦闘が日本で起こるなんて……



 無理もない。海上保安官という仕事は命の危険はあるものの、こんな白兵戦などは今まで起こったことが無かった。 





 頭目はまた一人敵を切り殺した。

 マズイな………こちらが劣勢になりつつある。だがもはや後戻りは出来ない。全員殺すことでしか自分は助からない。だからッ!!


「皆殺しだぁぁぁぁぁぁあああ!!!」


 乱戦となった船上(戦場)では平等に、命が脅かされていた。

 血みどろの頭目を見て、怯えた顔をする保安官。彼は頭目の進行方向に位置した。



「く、来るな!」

 拳銃を両手で持って威嚇する保安官。頭目にその言葉の意味は理解できなかったが予測は出来た。拳銃を見て、それが危険なものであることは現在の戦闘で良く分かった。それにも関わらず、頭目は余裕の表情を浮かべていた。


「死んでくれやっ!」

 唾を吐きながらカットラスを振る頭目に向かって発砲する保安官だが、なぜか当たらないようだ。

「うわっ!?」

保安官は剣を何とか避ける。しかし姿勢を低くしたことで頭目の優位を決定付けた。

「おらよ!」

顔面に向かって蹴りを放ち、ゴリッという鈍い音がする。


「は!情けねぇ野郎だな~!」

ニヤニヤと笑う頭目。




「お前、良くも!!」

その時、拳銃とは違う、連続した発砲が続いた。数少ない小銃の音だ。

「はっ!無駄無駄~!この魔道具がある限りな!

どうやって奪ったか知りたいか?」

答えがあるのを待たず、頭目は言う。

「こいつはな~!商船の船長っていうデブっちい豚のおっさんをな~、指を切り落としてだな…………え?」


 遂に頭目は銃の餌食となった。頭目は上半身に衝撃を受けた。

「ぐっ!?」


 バカな!?


 頭目は頭にも衝撃を受ける。

 高価な魔道具を商船から奪ったことがあった。その結界の魔道具を持っていた頭目はそれまで銃弾を防げたのだ。しかし、結界は破られた。

「何故………?」

 それが頭目の最期の言葉だった。

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