海賊の頭目
西暦2025年 3月15日
「奴ら、何やってんだ?」
海賊船の長は陸地の方から来た奇妙な船が発している声を聴いて疑問に思って言った。
その船は不思議だった。自分たちの船よりいくらか小型だが、凄い存在感を醸し出していた。帆がどこにも見受けられないし、速度もかなり出るようだった。
全体的に白いが、側面には青色で『海上保安庁』と書かれていた。その下には『Japan Coast Guard』の文字。
もちろん、文字の意味は分からない。ただ、頭目はその時点で警戒レベルを引き上げていた。その船を造るにはかなりの技術が必要だと思われたからだ。
どうやらかなり強い魔術師がいるようだな……それにあの船を売っぱらっちまうだけで巨万の富が手に入るかもしれない。
「お頭っ、早く襲いましょうや!そして沈めて溺れ死にさせてやりましょうや!」
……部下はあの船に価値があるとは到底思いつかないようだ。
そう思っていると海賊船の前方に水柱が立った。
「何だ、あれは?」
よく見てみるとあの白船から黒い筒のようなものが突き出ているのが分かった。そしてその方向に水柱が立っているとも。
魔道具か!?
「ヤバい!魔道具があるなんて……!?」
頭目は舌打ちをすると、立て続けに叫ぶ。
「とにかく、白兵戦に持ち込む!船を押し付けろ!」
「ヘイっ!!」
魔道具を装備しているくらいだ、金になるような物も山ほどあるかもしれねぇ!
頭目は戦闘によって死人がどれだけ出るか、考えないようにした。
高いリターンには高いリスクが付きまとう。それは海賊である彼自身がよく分かっていたことだった。