SAT出動
西暦2025年 3月17日
「対象は十二名。現在、銀行に立て籠もっており、民間人数名が暴行を受けた、とのことだ」
暗い車内で説明する警視庁幹部。治安の急激な悪化により、SATの出動が決定されたのだ。
特に、東京では犯罪件数が大幅に上昇している。予断は許されない状況だ。
「拳銃らしき武器を所持している。何か質問は?」
「性別は?」
「性別は全員、男性と思われる。服装は暗い感じの色のコートだ」
主に外国人の割合が多い。恐らく、お隣の国の工作員も裏で動いているのだろう。警察公安部も大忙しだ。
それから幾つかの質問に答えて、しばらくした頃。
警察庁高官と部隊長が頷き、部隊長の合図で部隊が下車した。何事かと驚く市民に一瞥もくれずに指定の場所に急ぐ。
ドアというドアに張り付き、合図があればすぐに突入出来る状態に持っていく。
しかし、普通なら交渉を始めるのだが……
『突入せよ』
警察庁幹部は強行突入を命じた。もはや交渉の余地はない、と言わんばかりに。
同時多発的に入口が蹴破られ、催涙弾が投入される。
『突入!突入!』
複数の発砲音が響く。
女性職員を拳銃で脅しているところに隊員たちが雪崩込み、発砲した。
が……
「動くな!」
幼い少女を人質に取り、拳銃で牽制している男は叫んだ。机に隠れていたらしかった。少女と男の頭と腕だけが露出しており、発砲は危険すぎる。
「糞ッ!お前ら全員殺してやる!」
男は悪態をつきながらも短機関銃の銃口を向けてくるSATを見て後退した。
「来るンじゃねェ!!」銃口を人質に向けた。
それでも隊員は怯まない。隊員は天井に向けて発砲し、叫ぶ。
「拳銃を捨て、投降しろ!さもなければ射殺する!!」