異例の決定
西暦2025年 3月17日
「大変だ。東京、大阪、名古屋。日本全域で経済恐慌が起きている。
マズイ、まずい、マズイぞ!!買占め、暴動、海外からの輸入が完全に麻痺。
株価は大暴落。一日で倒産に追い込まれた企業もある。
どうすれば、良いんだッ!!
とにかく、自衛隊の災害出動を治安出動に格上げだ!」
上村は焦燥感を抱く表情で独り言を言っていた。
目が死んでいた。こんなに異常事態が続いた時が戦後今まであっただろうか?
と、その時、真下が駆け込んできた。
「報告します、総理!排他的経済水域内が変貌しており、生態系も完全に違うことが確認されました」
「……どういう、ことだ?」
「領海の外が未知の世界になった、ということです。それも地球上で見たこともない種類の生物が存在しているそうです」
上村は頭痛が再発しそうになった。
「どう言う事なんだ!?誰か説明してくれ!」
「落ち着いて下さい、総理。まだ報告は終わってません」
「……早く終わって欲しいよ………」
「あらゆることの調査を進めていますが、多くの人が感じていることが結論になりそうです」
「ネット上で騒がれてる『異世界に来た』という発言を真に受けてるのか!?」
「残念ながら、地球上ではない可能性は非常に高いです。人工衛星も消失しており、また、諸外国との連絡及び存在が確認できない以上、すぐにこの世界の調査を進めなければなりません」
真下が言った。
調査の結果、北方領土はもちろん、朝鮮半島の存在も消えていることが分かったのだ。
「燃料、食料、資源。とにかく我々は重大な危機に陥っています。日本は貿易立国です。貿易をしなければ生きていけないのです」
「分かっている、そんなことは……!」
焦った表情で言い捨てる上村。彼も今の状況の危険性は分かっていた。
日本は島国だ。そして貿易立国だ。海上交通路を封鎖すればやがて干上がっていく。日本は孤立した状態にあった。
正に国家存亡の危機に晒されているのだ。
「閣議を行う、召集してくれ」
「分かりました」
数時間後下された指令は、極めて異例のものだった。




