責任の所在
西暦2025年 3月15日
「森口船長……」
「確認出来たか?」
「殆ど確認が終わりました」
そう言った森口の部下。青年といっても良いくらいの年齢の部下だった。
「生存が確認されたのは32名の乗員の内、19名だけでした。他は生死不明です」
「……そうか」
「……船長」
森口ははぁ、と深いため息をついた。
「海上保安官という仕事は命がけだってことは……私も分かっていたつもりだ。それでも、納得出来ないことってあるもんだ………私は、部下たちを死なせてしまった。それは紛れもない私の責任だ。油断してしまった私の、責任だ……!
思えば、彼らは殺人を起こすのを戸惑わない奴らだったんだ。奴らの船に近付けなければ………!?」
「やめて下さい、船長」
強い口調で青年が遮った。
「確かに船長が指示しました。だから船長にも責任はあるでしょう……ですが!我々だって海で散る覚悟は出来ておりました!我々は自衛隊ではありませんが、自衛隊よりも実戦経験はあります!
日本国海上保安庁は、日本の海を守る組織です。海の警察です!警察は犯罪者の捕縛が仕事である以上、命の危険もあります………
例え命の危険があろうとも出動しなくてはならない……そんな職務に誇りを持って臨んでおりました!ですから船長……そんなことは言わないで下さい。誇りを持って殉職した保安官たちのためにも」
「……そうか……そうだな。すまなかった」
森口はハァ、と二度目のため息を吐いた。
「とはいえ、私が責任を問われるのは確実だ。多くの人間が死んでるんだ。だから私は甘んじて受けるつもりだ」
「……森口船長」
青年は悲しそうに顔を伏せる。
「仕方ないことだ。我々は組織である以上、誰かが責任は取らなければならない……君には苦労を掛ける」
「……承知しております」
青年と森口は互いに重苦しい雰囲気を醸し出していた。




